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- 簡易裁判所から支払督促が届いた…どうすればいい?
- 支払督促とは?無視すると差し押さえに
- 督促異議申立書を自分で書いてはダメ?裁判に移行する恐れあり!
この記事では、簡易裁判所から特別送達で届く「支払督促」について、取り立てを受ける立場(債務者の立場)から、役立つ情報をお届けしていきます。
- 金融業者、信販会社
- カード会社、クレジット会社
- 銀行、信金、ろうきん等の金融機関
- 保証会社、債権回収会社
- 日本学生支援機構(奨学金)
- 督促業務を行う弁護士事務所
…など、裁判所の支払督促を使って、取り立てが行われることがあります。
こうした所から督促を受けていたり、滞納や未払い・延滞がある方は、ぜひお読みください。
支払督促が届いた方へ!すぐに行うべき対策と対応
まずは、すでに支払督促が届いてしまっている方のために、すぐに行うべき対策方法を解説します。
支払督促は、通常の督促状や催告書とは大きく異なります。
次のような郵便を受け取った方は、ふつうの督促状ではなく、“裁判所からの支払督促”を受け取ったと理解して良いでしょう。
支払督促の見分けかた
- 通常の郵便ではなく、特別送達で届いた
- 郵便局の配達員から手渡しで受け取った
- 業者ではなく、簡易裁判所からの郵便
- 分厚い封筒に書類が入っている
- 「支払督促」と「督促異議申立書」が入っている
支払督促が届いた=法的手続きに訴えられてしまった
支払督促は、裁判所を通して発せられる法的手続きです。
民事執行法第382条以下に定められた、法的な督促です。
裁判所から支払督促が届いた…ということは、言い換えれば、“あなたは金銭等の未払い・滞納で、裁判所に訴えられてしまった”ということです。
この事態の重大さを、まずはしっかり受け止めることが大切です。
無視すれば差し押さえ、異議申し立てをすれば裁判に
法的手続きに訴えられてしまったわけですから、もはや自分一人では、対応するのは難しくなります。
支払督促は、無視しても、安易な督促異議申し立てをしても、どちらも大変な事態になってしまいます。
無視すると最短2週間で差し押さえ
給与差押え、口座差し押さえなどで、自分だけでなく、勤務先にも迷惑をかけてしまいます。
異議申し立てをすると通常訴訟(民事訴訟、本格的な裁判)になる
裁判所から「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」が届き、あなたは被告として法廷に呼ばれることになります。
つまり、無視や放置も、異議申し立ても、安易に自分一人の判断で行うべきではないのです。
だからこそ、こうした法的トラブルの解決の専門家である、弁護士や司法書士に相談する必要があります。
「自分で督促異議申立書を書いて出す」は不適切!無責任サイトの解説に要注意
ネット上には、「自分で異議申立書を書いて出せば良い」といった、現実的ではない解説もたくさん見受けられます。
確かに、仕組みの上では異議申立書を出さないと、差し押さえになってしまうので、異議申立書を出す必要はあります。
しかし「異議申立書を出す必要がある」というのは、あくまで仕組みの解説に過ぎません。「自分で異議申立書を出せば、希望どおりに解決する」という意味では、まったくありません。
「裁判や差し押さえにならずに、減額や和解で何とかして欲しい」
「家族や職場を巻き込みたくない」
「周りの人にバレずに、内緒のまま解決したい」
…などの希望がある場合、決して、自分一人で督促異議申立書を書いて提出してはいけません。
必ず、弁護士や司法書士のアドバイスをもらうべきです。
弁護士や司法書士への相談はなぜ必要?
支払督促を受けた場合、人それぞれの状況によって、ベストな対応方法も変わってきます。
実際の解決事例を見ても、
「異議申立書を書かずに、取り下げ交渉を始める」
「異議申立書を出して時間を稼ぎ、その間に取り下げ交渉を進める」
「異議申立書を出して訴訟に持ち込み、法廷で消滅時効を主張する」
…など、事例によって、弁護士や司法書士もさまざまな戦略を使い分けています。
それでは、あなたの場合はどんな解決方法が良いのでしょうか?
どんな対処方法を選べば良いのでしょうか?
それを判断するには、次のような情報をまず、正確に把握する必要があります。
- 訴訟移行または差押決定までの残り時間は?
- 債務不履行のほかに、こちらに落ち度はない?
- 現在の返済能力と負債額のバランスは?
- 相手企業の訴訟対応の傾向は?
- 相手の請求内容の妥当性は?
- 契約に瑕疵がないか?
- 相手企業のこれまでの裁判例等から考えられる妥結ラインは?
- 時効債権になっている可能性は?
- 時効の起算点は?債務承認などで更新されていないか?
- 相手がどの程度の対抗要件を備えていると想定されるか?
- 相手企業の法務部や顧問弁護士の能力と傾向は?
こうした様々な情報を多面的に捉えて、統合的に判断し、“あなたにとってベストな対応方法”を考え出す必要があります。
ですがこれは、私たち一般人には、とても不可能です。
だからこそ、債務整理や借金トラブルに強い弁護士・司法書士に、まずは無料相談だけでも行う必要があります。
弁護士や司法書士に相談…と言われても、心配なことばかりですよね。
「費用は掛かるの?」
「何を聞けばいいの?」
…など
そこで、こうした心配を一切しなくて良い、頼もしい弁護士・司法書士の無料相談窓口をまとめました。
費用の心配がいらない、無料相談対応
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…そんな事例もたくさんあるので、まずは無料相談だけでも、すぐに行ってみて下さい。
支払督促とは?法的手続きの一種類
それでは、ここからは「支払督促」について、もう少し知識を深めていきましょう。
まずは、“支払督促は、ただの督促状ではなく、法的措置の一つ”という事を解説していきます。
支払督促は、法的手続きの一種類
まずは、支払督促について、法務省の解説を見てみましょう。
督促手続とは,債権者からの申立てに基づいて,原則として,債務者の住所のある地域の簡易裁判所の裁判所書記官が,債務者に対して金銭等の支払を命じる制度です(民事訴訟法第382条以下)。
債務者に対して、金銭などの支払いを命じる
簡易裁判所の裁判所書記官が行う
「民事訴訟法」という法律のなかで定められている
といった事がわかりますね。
ここでポイントになる、「民事訴訟法」の条文も見てみましょう。
【民事訴訟法 第382条】
(支払督促の要件)
金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。
基本的な内容としては、法務省の解説と一緒です。
「公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る」という一文がありますが、ここは一旦、おいておきましょう。
ともかく今は、「裁判所から届く支払督促は、法的手段一つ」だと確認できたことが重要です。
つまり、支払督促が裁判所から届いた…ということは、
「この人(=あなた)が支払を滞納しているので、払うように命令を出して下さい」と、裁判所に訴えられてしまった
という意味になります。
“たいへんな事態になってしまった”と考えて下さい。
支払督促は、簡単に起こされてしまう法的手段
「法的手続きなんて、本気で起こされるわけがない」
「裁判所に訴えられるなんて、何かの間違いに違いない」
こんな風に思える人もいるかと思います。
また、ネットの書き込みなどで、
「○○万円ぐらいの滞納なら、裁判を起こしても赤字になるから、業者は訴えてこない」
「法的措置の準備~とかいうのは脅しにすぎない」
「滞納者なんてたくさんいるんだから、業者はいちいち法的手段なんて執らない」
…といった書き込みを見て、信じてしまった人もいるかもしれません。
ですが実際には、支払督促の申し立ては“簡単に起こせて、費用も安い法的手続き”です。
費用は通常訴訟の半額
100万円の返済を求める場合でも、支払督促の申立て手数料はたったの5000円です。
督促手続きオンラインシステムから、複数の債務者に対して、一斉に申立てできる
何十人、何百人と債務者がいても、(督促手続きオンラインシステム )を使って一気に申立て可能。信販会社や保証会社、債権回収会社などが活用していると考えられます。
つまり支払督促は、費用も安く、手間もかからない手続きなのです。
さらに、「債務者の言い分を聞かずに、支払い命令を発せられる」という特徴もあります(民事執行法第386条第1項)。
裁判所書記官は,債務者の言い分を聞かないで金銭等の支払を命じる「支払督促」を発することとされています(同法第386条第1項)。
普通の裁判では、双方(原告・被告)の主張を平等によく聞いて、それから判決が下されます。ですが支払督促は、申し立てた債権者の言い分だけで発せられるので、申し立てる側にとっては、非常に負担が少ないのです。
支払督促が届いた…これからどうなる?今後の流れ
さて支払督促は、
ふつうの督促状とは違う、れっきとした法的手続き
費用も安く、簡単に申し立てられてしまう
といった特徴がわかりました。
それでは次に、支払督促を受けた後の流れについて解説します。
これは、「督促異議申立書」を出すかどうかで変わります。
簡単にまとめると…
異議申立書を出さなければ、債権者側の言い分が全面的に認められて、差し押さえを受けてしまう
異議申立書を出すと、通常の民事訴訟(裁判)に移行する
という流れになります。
差し押さえ、または裁判までのタイムリミットは、最短で2週間ほどです(仮執行宣言付の場合)。のんびりと構えている時間はありません。
支払督促が届いてからの流れは、次の記事でも解説していきます。
支払督促の大まかな流れ…“二回届く”ことに要注目!
さて、これまであまり触れてきませんでしたが、実は支払督促は「二回」届きます。
実際の流れを、法律事務所の解説を元に、かんたんに見てみましょう。
以下は、牧方法律事務所の図説を元にした、支払督促の流れです。
支払督促申立
↓↓↓
支払督促発付
↓↓↓
債務者に送達(異議申立てした場合→訴訟)
↓↓↓
仮執行宣言申立
↓↓↓
仮執行宣言発付
↓↓↓
債務者に送達(異議申立てした場合→訴訟)
↓↓↓
強制執行
※(牧方法律事務所の図説 )を元に、当サイト編集
支払督促に関連して、債務者(=あなた)の所に裁判所から郵便が届くのは、2回あります。
一回目は、支払督促が発付された時。そして二回目は、仮執行宣言が発付された時(仮執行宣言付支払督促)です。
この2回のどちらにも督促異議申し立てのチャンスはありますが、
異議申し立てをしなければ差し押さえ
異議申し立てをすれば裁判
という大きな流れは、基本的に変わりません。
“二回届く”からといって、最初の一回は無視して放置して良い…という事では決してありません。
支払督促は無視すると確定=債務名義を取られて差し押さえに!
支払督促は、
“債務者の言い分を聞かずに”発せられる
しかし、督促異議申し立てをしないと差し押さえを受けてしまう
…という、債権者(取り立てる側)にとって非常に強力な手続きです。この「無視すると差し押さえ」という事について、解説していきます。
このことは、裁判所の公式サイトでも解説されています。
(…略…)、債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ,裁判所は,債権者の申立てにより,支払督促に仮執行宣言を付さなければならず,債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。
出典:支払督促-裁判所
この根拠になっていると思われるのが、次の法律(民事執行法 第391条第1項)等です。
【民事訴訟法 第391条第1項】
(仮執行の宣言)
債務者が支払督促の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促に手続の費用額を付記して仮執行の宣言をしなければならない。ただし、その宣言前に督促異議の申立てがあったときは、この限りでない。
少し複雑な内容ですが、やはりポイントは、“無視すると相手(債権者)の言い分が認められて、差し押さえになってしまう”という所ですね。
ですが、
「そんなに簡単に起こせる手続きなのに、本当にすぐ差し押さえになるの?」
…という疑問もあるかと思います。
そこで、もう少し仕組みを掘り下げながら、お答えしていきましょう。
なお、簡単にまとめた説明は、次の記事で行っています。
差し押さえ(強制執行)とは
差し押さえ(強制執行)とは、裁判所の命令のもとに、相手の財産を強制的に没収できる措置です。
銀行口座の預金などのほか、次のようなものも、差し押さえの対象にできます。
勤務先から払われる給与(給与差押え)
勤務先に対して、「債務者に給与を払わず、債権者に直接払いなさい」と執行命令が発せられます。
つまり、会社やバイト先などの勤務先を巻き込んでしまいます。
事業主の場合、取引先に対する売掛金(売掛債権の差押え)
給与差押えと同じく、事業主の売掛金も差押えの対象になります。取引先に対し差押命令が届くので迷惑をかけてしまう結果になるでしょう。
敷金返還請求権の差し押さえ
賃貸物件に住んでいる人の場合、敷金の返還請求権も差押えの対象になります。大家さん(貸主)に対して、裁判所から差し押さえ命令が届いてしまいます。
このように、差し押さえを受けてしまうと、
- 家族
- 職場(勤務先、バイト先も含む)
- 賃貸物件の大家さん
…など、周りのいろいろな人を巻き込んで、迷惑や心配をかけてしまいます。
差し押さえについて、より詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
差押えには、「債務名義」が必要
厳しい措置を取られてしまう“差し押さえ”。
ですが、勝手にできるものではなく、裁判所の許可が必要です。
そして、裁判所から差し押さえの許可を得るために必要なのが、「債務名義」です。
債務名義とは,強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在,範囲,債権者,債務者を表示した公の文書のことです。強制執行を行うには,この債務名義が必要です。
「債務名義」の具体例としては、次のようなものが挙げられます。
- a. 確定判決
- b. 仮執行宣言付判決
- c. 仮執行宣言付支払督促
- d. 和解調書,調停調書
つまり、仮執行宣言付の“支払督促”も、差し押さえ申立てが可能な“債務名義”になるのです。
これは、法律にもしっかりと定められています。
【民事執行法 第396条】
(支払督促の効力)
仮執行の宣言を付した支払督促に対し督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有する。
“債務名義になる”というより、「確定判決と同一の効力を有する」というほうが厳密かもしれません。
支払督促を放置して、異議申し立てをしなかった
または、異議申し立てが裁判所に却下されてしまった
…といった場合、あなた(債務者)は、“裁判に負けたのと同じ”になると言っても良いでしょう。
支払督促は、起こすのは簡単ですが、その効力は確定判決と同じ。きわめて強力な法的手続きだと、改めて実感できます。
支払督促は、“差し押さえ”を目的に利用されることも多い
実際に支払督促は、“差し押さえ”を目的に申し立てられることが多いようです。
債権・債務の問題に詳しい、弁護士法人みずほ中央法律事務所/司法書士法人みずほ中央事務所でも、次のように言及されています。
(…略…)債務者の財産の差押えなどの強制執行が可能となります(債務名義;民事執行法22条4号)。
まさに,これが支払督促利用の主な目的です。出典:支払督促手続は簡易に債務名義を取得できる 弁護士法人みずほ中央法律事務所/司法書士法人みずほ中央事務所
ネットの掲示板などでは、「支払督促はただの脅し」といった話もあります。ですが弁護士の解説によれば、「差し押さえ(強制執行)が支払督促の主な利用目的」と言えそうですね。
支払督促の異議申立書の書き方は?異議申立てする方法は?
支払督促を無視すると、差し押さえを受けてしまうことが、これまでの内容で確認できました。
それでは今度は、「督促異議申立て」をするとどうなるのか見ていきましょう。
まずは裁判所の解説です。
債務者は,支払督促又は仮執行宣言を付した支払督促の送達を受けた日から2週間以内に,その支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に「督促異議の申立て」をすることができます(同法第386条第2項,第391条第1項)。
この解説のもとになっている、民事訴訟法第386条第2項を見てみましょう。
【民事訴訟法 第386条第2項】
(支払督促の発付等)2.債務者は、支払督促に対し、これを発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に督促異議の申立てをすることができる。
法律でも確かに「支払督促に異議申立てできる」と定められていますね。
支払督促の異議申し立てについて、具体的な解説は、次の記事をご覧ください。
異議申し立てをすると裁判(民事訴訟)に移行
支払督促は、無視して放置しておくと、差し押さえを受けてしまいます。
一方、異議申し立てをすると、今度は、本格的な裁判になってしまいます。
こちらも裁判所による解説と、法律の条文をチェックしてみましょう。
債務者が支払督促に対し異議を申し立てると,請求額に応じ,地方裁判所又は簡易裁判所の民事訴訟の手続に移行します。
出典:支払督促-裁判所
【民事訴訟法 第395条】
(督促異議の申立てによる訴訟への移行)
適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、督促手続の費用は、訴訟費用の一部とする。
法律の条文が、なかなか興味深いですね。
“支払督促に異議申し立てをした=裁判を起こした”
と見なされると、法律に書かれています。
もちろん、法律は条文を読んだだけでは解釈できませんから、実際の運用や解釈は異なるのかもしれません。
しかし、裁判所の解説をあわせて読むと、やはり、
支払督促に異議申し立てを出す=裁判になる
という原則だと、解釈して良さそうですね。
ちなみに民事訴訟は、私たちがイメージする“裁判”そのもの。
裁判所の傍聴バーチャルツアーの中から、写真をご紹介します。
※(裁判所 傍聴バーチャルツアー )より
この証言台に、あなたが被告として立つことになってしまうわけです。
「督促異議申立書を書いて出せばいい」ネットの危険な情報に要注意!
「ほかのサイトでは、異議申立書を出すと書いてあったけれど…」
そんな声も聞こえてきそうですね。
確かに、督促異議申立書を出さなければ、差し押さえを受ける恐れがあります。しかし、“異議申立書を出せば、訴訟リスクがある”わけです。
「異議申立書を出せばいい」と解説しているサイトは、この“訴訟リスク”を見落としているのかもしれません。
「どうせ督促異議申立書を出せば、相手は訴えを取り下げるはずだ」
…という意見もあります。
ですが、あなたの相手が、本当に、異議申立書を出せば支払督促を取り下げるのか…というと、その保証はありません。
このように、表面上の知識だけでは対処できないのが、支払督促の難しいところです。
支払督促に居留守・受け取り拒否をすると職場に通達が!
さて、次のテーマは、「支払督促に居留守を使ったり、受け取り拒否ができるか」という問題です。
これも気になる方が多い話題ではないでしょうか。
支払督促は、ふつうの郵便とは違う、「特別送達」という形で届きます。郵便局の配達員が家にやってきて、手渡しで受け取る形です。
しかし、居留守を使ったり、受け取り拒否をすると、どうなるのでしょうか。支払督促が「届かなかった」となり、無効化できるのでしょうか?
結論から言えば、支払督促に対して、居留守や受け取り拒否は、まったく意味がありません。
それどころか、職場に返済トラブルがバレてしまう恐れがあります。
例によって、裁判所の解説を見てみましょう。
休日送達による再送達,就業場所への送達などを検討し,送達に必要な郵便切手を添付して,送達方法を書面で申し出てください。
出典:裁判所-支払督促の流れ
さらりと書かれていますが、「就業場所への送達」という一言がありますね。
つまり、あなたの働いている場所に、裁判所からの支払督促が届けられてしまうということです。
こうなれば、“職場バレ”は避けられませんね。
さらに言えば、職場への送達を回避できたとしても、結局は“付郵便送達”などで、支払督促が届いたものとされてしまうでしょう。
支払督促は、公示送達(裁判所の掲示板に張り出すことで、送達されたと見なす制度)は使えませんが、その代わりに様々な方法で、“送達させる/送達したと見なして手続きを進める”制度が整っています。
ですから、居留守や受け取り拒否をしても、まったく意味がないと考えて良いでしょう。
この問題について、詳しくは次の記事でも解説しています。
支払督促を取り下げて交渉や減額和解で解決する方法
支払督促への対応は、
無視すると差し押さえ
異議申し立てをすると裁判
という、非常に難しいものです。
「差し押さえも、裁判になるのも避けたい」
こういった場合は、相手に手続きを取り下げてもらうほか無さそうですね。
「支払督促を取り下げてもらい、任意整理や債務整理で“減額・和解”したい…」
こんな風に希望する場合、どうすれば良いのか、解説していきます。
支払督促の取り下げ交渉や和解の条件はある?
支払督促の取り下げは、これといった条件はありません。
しいて言えば、“相手次第・交渉次第”となるでしょう。
「こうすれば支払督促を取り下げてもらえる」という、絶対的な正解はありません。
この問題について、詳しい解説は次の記事で行っています。
しかし結論から言えば、“相手次第・交渉次第”ということに変わりはありません。
こちらは“申し立てられた側”ですから、こちら(=あなた/債務者)だけの判断や希望で、支払督促を取り下げることはできません。
支払督促を任意整理や債務整理に切り替えてもらう方法は?
支払督促ではなく、任意整理や債務整理での解決を希望する人も多いかと思います。
正確に言えば、任意整理は“債務整理”の一種類。ほかに「個人再生」「自己破産」「特定調停」などがあります。
債務整理の主なメリット
取り立て・督促の最短即日ストップ
返済の減額や免除
減額した残債の再分割・長期返済
このように、大きなメリットが得られます。
そのため、任意整理や債務整理に切り替えられれば、減額和解で解決できる可能性も高いでしょう。
支払督促を、任意整理や債務整理に切り替えるためにも、まずは一旦、相手に支払督促を取り下げてもらう必要があります。任意整理や債務整理への切り替えも、相手から申し出てくれることは、基本的にありません。
:まずは支払督促の取り下げ交渉を行う
↓↓↓
:支払督促の取り下げがうまくいったら、今度は任意整理や債務整理での減額和解の交渉を行う
…といった、二段階の交渉が必要になります。
こちらについても、詳しくは次の記事で解説していきます。
交渉は自分では難しい…弁護士や司法書士に無料相談を
支払督促の取り下げ
債務整理での減額和解
どちらの場合も、ただ手続きをすれば良い…というものではありません。手続き外の交渉が必要になります。
しかも、こちらは“滞納した債務者”という弱い立場です。
「減額してもらえれば分割で返済できるので、支払督促を取り下げて、債務整理に応じて下さい」
…とお願いしても、
「今までお支払い頂けていませんでしたよね?」
「いまさら支払うと言われても信用いたしかねます」
「本当にお支払いできますか?返済能力はありますか?」
…と、疑われてしまうでしょう。
そもそも、信頼関係が破綻してしまったから、相手は支払督促という法的手段に踏み切ったのです。信頼を失ってしまったあなたが、何を言っても、交渉にならない…と考えたほうが良いでしょう。
消滅時効の援用で支払督促に異議申立て&返済をチャラにできる?
続いて、「支払督促に対して、時効援用で異議申し立てをする」という事について、解説していきます。
こちらも興味をお持ちの方が多いテーマではないでしょうか。
詳しい解説は、次の記事でも行っています。
ここでは簡単に、要点をまとめていきましょう。
消滅時効の援用、きちんと理解できている?
まず、時効援用についてです。
「最終返済から5年経ったら、あとは消滅時効を主張すれば返済がチャラ(帳消し)になる」
という風に理解している方もいるかと思います。
ただ、これは間違ってはいないのですが、決定的に理解が不足しています。
最終返済から5年ではなく、「時効の起算点」から5年(商事債権の場合)
失敗すると、時効の中断(延長)や時効援用権の喪失などで、時効援用ができなくなる恐れがある
相手(債権者)が対抗要件を備えていたり、反論をしてくるなど、相手次第でうまくいかないケースもある
…ほかにも、さまざまに複雑な事情が絡み合っており、一筋縄ではいかない難しさがあります。
時効援用は、相手から反論を受けることもある
時効援用は、相手から反論を受けてしまうケースもあります。
「当社としては、まだ時効に至っていないと認識しています。つきましては期日までに全額一括返済をお願いします。」
…と、跳ね返せられてしまう場合もあります。
支払督促の異議申立てで時効援用すると裁判になる恐れも!
支払督促の異議申し立てを使って消滅時効の援用をすると、相手に反論され、本格的な訴訟になってしまう恐れもあります。
支払督促に異議申し立てをすると、原則的には、通常訴訟に移行するためです。この裁判の場を、相手が「時効援用に反論する機会」として、積極的に訴訟に進んでしまう可能性が考えられます。
仮執行宣言付支払督促は申し立て時点で時効が中断(延長)
さらに、「仮執行宣言付支払督促」のが届いてしまった場合、時効援用はかなり難しくなると考えられます。申し立てを受けた時点で時効が中断(延長)しているためです。
い:消滅時効中断
支払督促申立時に,消滅時効中断(延長)という効力が発生します(民事執行法384条,147条,民法147条)う:消滅時効期間の延長
仮に当初は10年未満の時効期間(5年の商事時効など;商法522条)であった場合でも,仮執行宣言付支払督促の確定により,新たに進行する時効期間は10年とされます(民法174条の2第1項)。出典:支払督促手続は簡易に債務名義を取得できる 弁護士法人みずほ中央法律事務所/司法書士法人みずほ中央事務所
このように、仮執行宣言付支払督促には、時効を中断(延長)させる効力があります。
そのため、この段階になってから「異議申立書で消滅時効を主張しよう」と考えても、そう簡単ではないでしょう。
どうすればいい?時効援用で支払督促に異議申立てする方法
ここまで見てきたように、「支払督促の異議申し立てで時効援用」は、ただ異議申立書を出せば良い…というほど簡単な話ではありません。
とはいえ、まったく不可能という話でもありません。
調べてみると、弁護士や司法書士も、状況に応じたさまざまな作戦で、消滅時効の援用に成功しているケースもあります。
(事例1)異議申立て+内容証明で時効援用をしたケース
認定司法書士が代理人となり、簡易裁判所へ督促異議申立てをするのとあわせて、債権者(パルティール債権回収)に対して内容証明郵便により消滅時効の援用をしました。
(事例2)異議申立てで通常訴訟に移行し、訴訟の場で時効援用を主張するケース
異議の理由は書くのであれば、消滅時効を主張します。
異議を申立てたら、通常の裁判に移行します。答弁書で消滅時効を主張する
答弁書に時効を援用(主張)する旨を記載し、裁判所を相手方に提出します。
ほかにも様々なパターンが考えらえますが、“あなたの状況”に合った適切な方法を用いることが一番重要です。
支払督促は、債務者の言い分を聞かずに発せられる
支払督促は、“債務者の言い分を聞かずに発せられる”という特徴があります(民事執行法第386条第1項)
債務者は、支払督促が発せられた後に異議申し立てをできます。
ですが、発せられる時点では、細かい審理はありません。
こうした仕組みを悪用して、架空請求業者や悪徳業者、ヤミ金、ソフト闇金などが、取り立てに支払督促を使ってくることが考えられます。
支払督促の対応はどんな弁護士に相談するべき?司法書士でもいい?
それでは最後に、「支払督促への対応は、どんな弁護士や司法書士に相談するべきか」というテーマをお届けしていきます。
まず前提として、ここまで繰り返してきたとおり、弁護士や司法書士への相談は必須です。
支払督促への対応が、いかに難しい仕組みかは、ここまでの内容をお読み頂いて実感されていることと思います。とても難解な“法律”と“司法制度”の仕組みですから、私たち一般人には、とても対処しきれません。そのため、少なくとも弁護士や司法書士への相談は、絶対に必要です。
支払督促が来たらすぐにやるべき行動は?
「支払督促が届いたらどうすればいい?」
「弁護士や司法書士に相談する前に、なにか自分でできることはある?」
といった疑問については、次の記事で具体的にお答えしています。
しかし、やはり結論としては、「弁護士や司法書士への相談」は必要となります。それでは、どんな弁護士や司法書士に相談すれば良いのでしょうか?
間に合わない、手遅れ…弁護士に依頼を断られることも
“支払督促への対応”は、弁護士や司法書士でも、かなり難しい場合もあります。
多くの人は、
「支払督促の取り下げ交渉」
「減額和解、債務整理への切り替え」
「裁判も差押えも回避したい」
「家族や職場にも知られたくない」
…といった希望をお持ちでしょう。
そのためには弁護士・司法書士による交渉が必要なのですが、これは“絶対に上手くいく”という話ではありません。
相談が遅すぎると、「もう手遅れ」「準備時間が無い」と依頼を断られてしまう恐れもあります。
ですから、何はともあれ急いで相談することをお勧めします。
債務整理や時効援用に強い弁護士・司法書士
それでは次に、相談する弁護士・司法書士選びの必須条件です。
“債務整理や借金問題に強い(詳しい)”こと
司法書士の場合、簡裁代理認定を持っていること
この2点は、絶対に必要なポイントと言えるでしょう。
支払督促への対応は、本当に難しい分野です。
そのため、同じ弁護士や司法書士であっても、債権・債務の問題に詳しい先生でなければ、うまく対応できない場合もあります。
返済トラブルや滞納解決、債務整理、支払督促への対応など、経験豊富な弁護士や司法書士を選びたいですね。
支払督促が届いた場合の弁護士費用や司法書士費用はいくら?
弁護士や司法書士に相談・依頼…となると、費用のことも心配ですよね。今回の場合、「支払督促への対応」が含まれるため、費用は“要相談”となるでしょう。個別のケースによって、必要になる業務も変わってくるためです。
とはいえ、滞納してしまっている身ですから、
「弁護士や司法書士に払えるお金なんて、一円も無い…」
「お金にまったく余裕がない」
という人も多いでしょう。
そうした事情は、債務整理に強い弁護士・司法書士はよく理解しています。
そのため、“初期費用無料・後払い分割OK”としており、手元に一円もなくても返済トラブルを解決できる弁護士・司法書士もいます。費用のことが心配な場合、こうした“初期費用無料”の先生にお願いしたいですね。
脚注、参考資料
本記事および当サイト内の「支払督促」関連記事は、以下の公的機関ならびに法律専門家による解説を参考に作成致しました。専門家の皆様による的確な情報発信に感謝いたします。
※掲載順不同、()内は主な参考情報