[PR]
今回ご紹介するのは、「悪徳商法に引っ掛かり、5社800万円の借金を抱えてしまった」という事例です。[1]
近年、こうした詐欺の被害で、経済的な損失を背負ってしまう人も大勢いるそうです。
こうした場合、詐欺事件が解決しても、被害にあったお金は取り戻せるのでしょうか?また、詐欺被害で背負ってしまった借金はどうなるのでしょうか?
こうした疑問にお答えしつつ、相談事例を見ていきましょう。
知人に勧誘されて投資詐欺の被害に…借金5社800万円を背負ってしまった
まずは、相談者の背景を確認していきます。
性別 | 年齢 | 職業 | 月収 | |
相談者(本人) | 男性 | 30代 | 会社員 | 20万円 |
妻 | 女性 | 不明 | パート | 6万円 |
子ども | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
相談者は、30代男性。妻と子供の三人暮らしです。
世帯収入は、本人20万円、妻6万円で、合わせて26万円。
住まいは賃貸住宅で、家賃は月6万円とのことです。
続いて、今回の詐欺事件の概要を見てみましょう。
詐欺事件の概要(借金の理由)
- 相談者は、知人から「絶対に儲かる投資話がある」と勧誘された。
- 勧誘に乗り、投資資金としてカードローン等5社から合計約800万円を借入。
- 借りた800万円を知人に渡したところ、音信不通になってしまった。
こうして内容を整理すると、「よくある投資詐欺」という印象ですね。ただ、持ち掛けたのが知人ということもあり、相談者も信頼してしまったのでしょう。
借入先 | 借入件数 | 債務残高 | 月々の返済額 |
カードローン | 5件 | 約800万円 | 不明 |
借金返済の状況
- 返済が困難で、5社すべてに滞納しており、督促状が届いている
資料には、月々の返済額までは記録されていません。
ですが、合計5社800万円の多重債務となると、月々の返済額も相当に苦しいものになると思われます。
もともと、「投資の収入で返済できる」という見積もりだったのかもしれませんね。ですが、その投資話自体が詐欺だったため、返済も苦しくなってしまったのでしょう。
相談者の希望
- 自分をだました知人が許せない。渡したお金を返して欲しい。
- 借金返済ができず督促状がローン会社から届いているが、どうすればいいか知りたい。
どうすればいい?専門家のアドバイス
続いて、相談を受けた専門家の回答を見てみます。
専門家によるアドバイス
- 詐欺事件については、証拠を揃えて、最寄りの警察署に被害届を出すること。
- 借金返済については、弁護士・司法書士に相談し、債務整理を検討すること。
解説:騙されて借りたお金でも、返済義務はある
この事件が最終的にどうなったのか不明ですが、おそらく、借金については債務整理を行うことになったでしょう。
ただ、その後にもしかすると、詐欺の犯人が逮捕され、「被害回復給付金支給制度」でお金を取り戻せたかもしれません。
こうした予想も踏まえて、今回のポイントは次の3点です。
- 騙されて借りたお金でも、返済義務は免れない
- 詐欺で騙されたお金は、被害回復給付金支給制度で取り戻せる可能性がある
- まずは、債務整理で借金問題を解決することが優先
順を追って解説していきます。
騙されて背負った借金でも、返済義務はある
「そんな理不尽な!」と思われるかもしれませんし、個人的に言えば、筆者も「理不尽」だとは思いますが…。
しかし、現在の法制度では、「詐欺の被害にあった」「騙された」といった事情があっても、自分で借りた借金の返済義務は、それだけでは免れません。
ヤミ金から借りたなど、“借りた相手自体が違法”であれば返済義務はありませんが…。
今回のケースでは、借りた相手は正規の金融機関(カードローン)ですから、返済義務は免れません。
そのため、返済を減額・免除するには、「債務整理」を行う必要があります。
今回の相談者は、すでに借金返済が苦しい状態ですから、債務整理が必要です。債務額と経済状況から考え、債務整理の一種である「個人再生」手続きでの解決になったかと思われます。
個人再生により、合計800万円の返済であれば、5分の1(160万円)まで借金を減額できます。そして減額した借金を3年の分割返済(利息なし)として、月々およそ4万4000円の返済になります。
相談者の世帯収入は26万円ありますから、この金額なら、何とか返済できそうですね。
詐欺の被害で奪われたお金は、「被害回復給付金支給制度」で取り戻せる可能性あり
いくら債務整理で減額できる…と言われても、もともと詐欺に遭わなければ背負うこともなかった借金です。
「奪われたお金を取り戻したい」と思うのは、当然の気持ちでしょう。
そこで知っておきたいのが、「被害回復給付金支給制度」です。
検察庁の解説を見てみましょう。
組織犯罪処罰法の改正により,平成18年12月1日から,詐欺罪や高金利受領罪(出資法違反)といった財産犯等の犯罪行為により犯人が得た財産(犯罪被害財産)は,その犯罪が組織的に行われた場合やいわゆるマネー・ロンダリングが行われた場合には,刑事裁判により犯人からはく奪(没収・追徴)することができるようになりました。
投資詐欺のほか、オレオレ詐欺(振り込め詐欺)、ヤミ金・ソフト闇金など、犯人が犯罪行為によって得た財産(犯罪被害財産)は、取り戻せる仕組みです。
ただ、被害回復給付金支給制度でお金を取り戻して、借金返済に充てるのは、残念ながら現実的ではありません。
被害回復給付金支給制度には、
- 相手が組織犯罪であること
- 犯人が摘発され、犯罪被害金の入った口座が差し押さえられること
…などの条件があり、必ずしも適用できる(被害金を取り戻せる)とは限らないからです。
また、犯人逮捕を待つ必要がありますから、何年も時間が掛かることも考えられます。
その間、借金返済を放置していては、利息で返済額が膨らんでしまいますし、こちらが債務不履行で裁判を起こされ、差し押さえ(強制執行)を受けてしまう恐れもあります。
まずは債務整理で今ある借金を減額し生活を守ることを優先
ですので順番としては、次のようになるでしょう。
:まず債務整理の相談を弁護士・司法書士に行う
相談の際、詐欺の被害にあったことも伝える。
:弁護士・司法書士のサポートを得ながら、借金の債務整理と、警察への被害届提出を行う
警察への被害届提出も、証拠を揃えて行う必要がありますから、やはり法律専門家(弁護士や司法書士)のサポートがあるほうが確実です。
:借金の解決(債務整理)を優先的に行う
被害届を出した後は、詐欺事件のほうは警察に任せることになります。
借金解決(債務整理)も、弁護士・司法書士にほとんどお任せでできますが、きちんと行わないと、自分が債務不履行で差し押さえを受けてしまう恐れもあるためです。
自分の生活をしっかり守るためにも、債務整理を優先しましょう。
:警察による詐欺犯の逮捕・摘発⇒被害金の回復
警察により詐欺犯が捕まり、犯罪被害財産も確保されれば、被害回復給付金支給制度でお金を取り戻せる可能性もあります。
今回ご紹介したような事例は、「詐欺事件」と「借金返済」の“2つの解決”が必要となる、かなり複雑な事例です。
自分一人ではとても対応しきれないので、必ず、弁護士・司法書士に助言を仰ぎましょう。
まず優先するのは債務整理ですから、債務整理に強い弁護士・司法書士に相談してみて下さい。
また、「弁護士や司法書士に相談するのは、少しためらってしまう」という方は、気軽に利用できる借金減額シミュレーターもオススメです。
こちらでは詐欺事件のほうの相談はできませんが、「債務整理で返済を減額できるか」の無料診断は気軽に行えます。
--脚注、参考資料--
[1]本記事は、下記資料掲載の事例をもとにしています。
返済困難者相談支援の相談事例集
平成30年10月 大阪府商工労働部中小企業支援室金融課 相談事例D-(2)