時効援用のよくある失敗例や体験談と、失敗を防ぐ方法

投稿日:2018年10月1日 更新日:

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この記事では、「消滅時効の援用」のよくある失敗例と、失敗を防ぐ方法について解説します。

時効援用とは、借金やローン、クレジットカード等の返済を、“時効”でゼロ円にする手続きです。一定の条件がそろっていれば、あとは手続きを行うだけで、返済義務を消滅させる事ができます。

時効援用は、非常に複雑な仕組みです。そのため、「だれがやっても、必ず成功する」といった保証は一切ありません。

そこで今回は、時効援用の失敗例を、よくある実例に基づいて、わかりやすく学んでいきたいと思います。

はじめに:時効援用失敗の原因は、ほとんどが“自分でやろうとした”から

時効援用は、“弁護士または司法書士・行政書士”に依頼して行うのが通常です。

ところが近年、どういうわけか、

「時効援用は自分でできる!内容証明で消滅時効援用通知書を送るだけ!」

といった謎の主張が、インターネット上に出回り始めています。
しかし、これは正しいとは言えません。

実際の時効援用は、債務状況の調査や、正確な書類の作成、訴訟リスクへの対処など、きわめて専門性の高い業務になります。

消滅時効の援用は、民法で定められた厳格な法的手続きです。
過去の裁判の判例も影響し、その歴史はざっと100年近くもあります。法律と、過去100年の裁判の積み重ねが影響するのですから、法律の専門家でなければ、正しい判断はできません。

こうした高度で専門的な手続きを、一般の私たちが気軽に行って、失敗しないわけがありません。これからご紹介する「消滅時効の援用の失敗例」ですが、原因はほとんどが”自分でやろうとしたから”です。

「弁護士や司法書士・行政書士にきちんと頼めば、こうした失敗は心配しなくて良い」

ということをまず、頭の片隅に置いて、お読み頂ければと思います。

★時効援用には、100年以上の司法判断の積み重ねがある

時効援用に関する古い判例には、大法廷明治43年1月25日などがあります。これは“時効援用ができる人(時効援用権者)”についての判断で、現在にも影響を残しています。明治43年といえば、西暦1910年。今(2018年)から、108年も前の話ですね。

その後も、

  • 大法廷昭和8年10月13日
  • 最高裁昭和43年9月26日
  • 最高裁昭和51年5月26日
  • 最高裁平成11年10月21日

…など、時効援用に関する裁判がいくつも行われ、そのたびに司法判断が積み重ねられてきました。時代の流れの中で変化した部分もあり、100年経っても変わらない基本的な原理もあります。

歴史とともに積み重ねられた司法判断を、きちんと追ってきた専門家でなければ、正しく消滅時効の援用を行うことは難しいでしょう。

時効援用の失敗例1:時効になっていないのに、消滅時効援用通知書を送ってしまった

それでは、時効援用の失敗談について、具体的に見ていきましょう。まず一つ目の事例は、「時効になっていないのに、消滅時効援用通知書を送ってしまった」パターンです。

見覚えのない「債権回収会社」から、いきなり督促状を受け取った斎藤さん。最初は架空請求を疑いましたが、内容をよく読んでみて、心当たりがありました。

「これはもしかしたら、もう何年も前に返済をやめてしまった、サラ金Aの借金ではないか?」

何年前に借りたのかも、きちんと思い出せないぐらい昔の話です。「なぜ今になって…」という疑問もありましたが、“昔の借金”について、斎藤さんは調べてみました。
すると、

“時効援用をすれば返さなくて良くなる”
“時効援用は、書式に従って通知書を作り、内容証明郵便で送るだけ”

…と解説しているサイトを発見。
「こんなに簡単なら、司法書士や行政書士に頼むまでもない」

そう考えた斎藤さんは、見よう見まねで、消滅時効援用通知書を作成し、内容証明郵便で発送しました。

「これで解決」と安心していた斎藤さん。
ところが2週間ほどたって、債権回収会社から、予想外の返答が届きます。

「時効はまだ完成していないので、消滅時効の援用は認められない」
「ただちに支払のない場合、訴訟を起こし、斎藤さんの勤務先や預金口座に対して、強制執行(差し押さえ)をかける」

…といった内容です。
大慌てになった斎藤さんは、ようやく司法書士に無料相談。
しかし、債権回収会社の言うことに間違いはなく、“時効完成前に援用通知書を送ってしまったので、時効援用はすぐにはできない”という状態に陥ってしまった事が、改めて判明します。

債務整理での返済減額に切り替え、なんとか解決の目途はたったものの…。

「最初から専門家に相談さえしておけば、時効援用を成功させて、返済ゼロにできた」

という事を考えると、決して喜ばしい結末とは言えない形になりました。

解説:不適切な時効援用通知書が、時効援用をできなくしてしまった

まずは、斎藤さんが消滅時効の援用に失敗した際、債権回収会社から届いた書類のイメージをご覧ください。

(※弁護士ドットコムをもとに当サイト作成)


さて、今回の事例のポイントは、3つあります。

:時効になっているかどうかの判断は、難しい
:時効を過ぎる前に消滅時効援用通知書を送ると、それが逆に債務承認となり、時効援用がすぐにはできなくなる(さらに5年、待たなければいけない)
:時効援用に失敗したことで、相手(債権回収会社)が本気になり、“預金や勤務先などに対する差し押さえ(強制執行)”を通告されてしまった

このように、時効援用通知書は、“送るタイミング”が重要になります。一日でも間違えると、消滅時効の援用ができないどころか、事態を大きく悪化させてしまいます。

そのため時効援用の実務では、「徹底的な調査を行い、正確に時効成立の日を把握する」など、高度な専門知識が求められます。

こうした点からも、時効援用は、「内容証明郵便を送れば良い」などとは、決して言えないのです。
弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

時効援用に強い弁護士・司法書士

時効援用の失敗例2:時効完成後の債務承認で、時効援用権を喪失した

続いての失敗例は、最高裁昭和41年4月20日判決にもとづく、“時効援用権の喪失”の事例です。

これは、民法第146条の反対解釈、民法第1条第2項、そしてエストッペルの法則など、複雑な法理論によるものです。

しかし、それがもたらす結果はシンプルです。時効援用権を喪失した債務(返済や支払)については、今後、何年たっても時効援用ができないという事です。

一体なぜそうなってしまったのか、失敗例を見ていきましょう。

引っ越しで住民票を移したのをキッカケに、昔の借金の取り立てが“再開”されてしまった花田さん。しかし花田さんは、“借金には時効がある”、“5年で時効になる”という知識を持っていました。

ネットで調べて、“弁護士や司法書士・行政書士に頼んだほうが良い”という事も知っていました。
ですが花田さんは、費用のことが気がかりだったのです。

「弁護士や司法書士・行政書士に頼んだら、いくら費用が掛かるか、わかったものではない。」
「俺だって社会経験もあるんだ。時効援用ぐらい、自分でできるだろう。」

さっそく花田さんは、“自分で時効援用”に取り掛かります。

まずは、最終返済がいつだったか、確認しなければいけません。ところが、それはもう何年も昔の話。記憶もほとんど残っていません。

仕事の合間に、数日がかりで苦労して、ようやく「個人信用情報機関への本人照会」を済ませ、記録を取り寄せました。
ところが…。

「これはどういう事だ?俺が借りたのは、サラ金なのに…。債権者は、○○債権回収会社だって?」
「それに、時効の起算点、なんて書いていないし…一体いつになるんだ?」

時効の起算点について、ネットで調べたところ、花田さんはより混乱してしまします。

“最終返済から5年”
“最終返済日の翌日から5年”
“権利を行使できると知った時から5年”
“権利を行使できる時から10年”

…など、書いてあることが、サイトによって全然違うのです。信頼できそうな弁護士や司法書士のサイトを見ても、解説はバラバラです。

「このままでは、らちがあかない」

そう思った花田さんは、思い切って、督促状に書いてある債権回収会社に電話をしました。

「そちらから来ている、この督促状ですけれどね。これはいつの借金ですか?かなり昔ですよね。もう時効だと思うのですがね!」
「こんな昔の借金、もう返しませんからね!」

甘く見られないようにと、強気な態度で電話を掛けた花田さん。
“最終返済は○年○月○日”という情報も聞き出し、この時は、「うまくいったぞ」と思ったそうです。

ネットで調べた情報をもとに、消滅時効援用通知書を作成し、内容証明郵便を送付。これでもう安心だ…と思っていたら、思いがけない返事が届きます。

「時効は確かに完成していたが、先日の電話で債務承認が得られたので、時効援用権が喪失されたと認識している」
「ただちに債務を履行するように」
「債務の履行がない場合、裁判に訴える」
「時効について異論があれば、法廷で争う」

…こうした内容が、びっしりと書かれた封書が届いたのです。

“もう自分一人では手に負えない”

そう実感した花田さんは、時効援用に強い弁護士に、ようやく無料相談を行います。結果、ギリギリで訴訟を回避し、なんとか債務整理で解決してもらえました。

解説:いくつもの原因が重なって、“時効援用権の喪失”を招いてしまった

この事例は、とても教訓が多い失敗談です。
花田さんの失敗の原因を、一つ一つ追っていきましょう。

(1)費用を心配して、弁護士や司法書士・行政書士への相談を行わなかった

「弁護士や司法書士・行政書士への相談が必要」と知っていながらも、費用を払いたくなかったので、相談せずに自分で時効援用を行ったこと…。これが一番の、失敗の原因です。
せめて、費用のかからない“無料相談”だけでも、最初に行っておけば、結果は大きく変わったでしょう。

(2)法律の切り替わりの時期で、解説サイトの内容も新旧が混在している状況

これは花田さんのせいではなく、いわば「時代」が原因です。120年ぶりの民法改正が行われ、まさに今、その切り替わりの時期に入っているからです。

そのため、「古い法律に基づいて解説している資料」と、「新しい法律に基づいて解説している資料」が、今のネット上には混在しています。ネットどころか、専門書でもバラつきがあるような状況です。私たち一般人にとっては、混乱するのも無理はありません。

(3)債権者(債権回収会社)に自分で電話してしまった

「時効援用権の喪失」…つまり時効援用の権利を失ってしまった、直接の原因はここにあります。
時効がすでに完成していたのに、債権回収会社に直接電話してしまったので、その時の発言が“債務承認”になってしまったのです。

せめて弁護士・司法書士・行政書士の無料相談さえ利用しておけば、こうした点のアドバイスだけでも、もらえたかもしれません。
無料相談で手に入る=“お金を掛けずに手に入る”情報すら、得ようとしなかったことが、最大の失敗を招いてしまいました。

★費用が心配な場合も、無料相談だけでも利用したほうが良い

無料相談は、文字通り、お金の掛からない相談です。
法律や法務の専門家から、無料でアドバイスをもらえるのは、はっきり言って非常にお得です。

債務整理や時効援用に“お金をかけたくない”と思う人ほど、無料相談を活用しない手はありません。

時効援用に強い弁護士・司法書士

時効援用の失敗例3:家賃滞納で時効援用。通知書を送ったら、相手に裁判を起こされてしまった

最後の失敗談は、これまでご紹介した事例とは少し違います。
これからご紹介する田辺さんは、自分で消滅時効の援用を行おうとはしませんでした。家の近くにある弁護士事務所に行って、きちんと相談をして、時効の援用を行ったのです。

それにも関わらず、相手から訴えられてしまった…。

一体なぜ、こんな事が起きたのでしょうか?
まずは、事例を見ていきましょう。

田辺さんはある日、まったく知らない「A法律事務所」から、督促状を受け取りました。

内容は、昔の家賃滞納です。
その頃の田辺さんは生活に困っており、たびたび家賃滞納を繰り返していました。そして、その滞納を残したまま、引っ越しをしてしまったのです。

最初はしつこく、家賃保証会社から「代位弁済通知書」や「返済のお願い」「督促状」「催告状」…と、取り立てが続いていました。
ですが、それも全て無視していたら、督促がやがてピタリと止まったのです。

「あのしつこい家賃保証会社も、ようやく諦めたのか」

そう思って油断していたところ、今になって急に、A法律事務所を通して、督促が来たのです。
相手が弁護士事務所とあって、さすがに驚いてしまった田辺さん。

「このままでは、本当に裁判になってしまう」

そう思って、慌てて近くの弁護士を探し、相談に駆け込みました。
相談を受けたB弁護士は、田辺さんに時効援用をすすめます。


-B弁護士:
「もう5年以上も経っていますから、定期給付債権の時効援用ができますよ。家賃は“定期給付債権”といって、借金と同じように、時効があるんです。」

-田辺さん:
「本当ですか!」

-B弁護士:
「ええ、本当ですよ。時効援用で、返済義務を無くすことができます。しかもこの手続きでは、ブラックリストにもなりません。」

-田辺さん:
「いやあ、先生に相談して本当によかったです。ぜひお願いします。」


B弁護士の詳しい説明で、すっかり信頼した田辺さん。
念のために、自分でネットでも調べてみましたが、確かにB弁護士の説明は正しいようです。

「これで今度こそ、昔の家賃滞納とはおさらばだ」

と思っていました。
ところが、それから数日後…依頼したB弁護士から連絡が入りました。

-B弁護士:
「すいません、田辺さん。ご依頼頂いていた件ですが…」

-田辺さん:
「はい、どうしましたか?」

-B弁護士:
「先日のお打合せの通り、時効援用通知書は、当職が法定代理人として送付しました。しかし、相手方がとうも頑固でしてね…。時効援用の撤回を求めて、訴訟を起こすと言っているんです。

-田辺さん:
「なんですって!?先生、裁判は困りますよ…訴訟取り下げとか、なんとかできないんですか?」

-B弁護士:
「当職も最善に務めてはいますよ…。ですが、相手が頑固でして…どうしてこうなったのか…ともかく、引き続き訴訟対応となりますと、別途費用が80万円ほどかかりますが、どうしますか?」

-田辺さん:
「そ、そんな費用とても払えませんよ!」

このあたりで田辺さんは、“おかしい”と気が付きました。

「もしかしたら、弁護士選びを間違えたのかもしれない…」
「今の弁護士を解任して、新しい弁護士を探そうか?でも、そうしている間に、本当に裁判を起こされたら…」
「訴訟費用で80万円なんて、そんな大金、とても払えない…」

時効援用で解決できるはずが、逆にとてつもなく事態が悪化してしまいました。

解説:時効援用や債務整理に強くない弁護士に依頼してしまった

この失敗談の理由は、とても簡単です。
田辺さん自身も気が付いたように、「弁護士選びを間違えた」ことにあります。

田辺さんは、“家の近くのB弁護士事務所”に駆け込んで、B弁護士に解決を依頼しました。ところが実は、このB弁護士、時効援用や債務整理は、ほとんど専門外だったのです。

ただ、弁護士として幅広い知識はありますし、消滅時効に関する法律も知ってはいました。そのため、「できるだろう」と判断して、依頼を受けたのです。

一方の相手は、債権回収にとことん強いA法律事務所。
全国対応で、数々の債権回収を成功させてきたA法律事務所は、こう考えたのです。

「相手が専門外のB弁護士事務所なら、間違っても負けることはない。」

あまり知られていませんが、時効援用は、一歩間違えると“相手に反撃されてしまう”リスクもあります。“時効援用の撤回を求めて、訴訟を起こす”というのは、そうした反撃方法の一つです。

もしも田辺さんが最初から、

時効援用に強い弁護士事務所
全国対応で時効援用や債務整理を扱っている、大手ベテラン弁護士

…といった所に依頼していれば、こうした事態にはならなかったでしょう。
田辺さん側の弁護士が、時効援用に強いベテランだとしたら、債権回収に強いA法律事務所も、「裁判でも勝ち目がない」と判断して、反撃をしなかった可能性が高いからです。

時効援用で反撃を受けないためには、“抑止力”が必要

裁判というのは、「勝ち目があるから起こす」ものです。

時効援用は、相手(=債権者)との法的な争いになる恐れがあります。ですから、「裁判を起こしても、ここが相手なら勝てない」と相手に思わせる“抑止力”が重要になります。

債権回収会社、金融会社、銀行、家賃保証会社…どんな業者が相手でも、これは同じです。ベテランの顧問弁護士がついているからです。

そうした相手方のベテラン弁護士に、「勝ち目はないから、反撃せずに、時効援用を受け入れよう」と判断させる…そんな力強い抑止力が求められます。その抑止力を期待できるのが、時効援用に強い、全国に知られた(全国対応の)弁護士・司法書士です。

時効援用や債務整理では、家の近くだから、地域密着だから…というのは、決して選ぶ理由にはなりません。

争いを避けて、平穏無事に時効援用を成功させるためにも、全国対応の時効援用に強い弁護士・司法書士・行政書士を選びましょう。

時効援用に強い弁護士・司法書士

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