自己破産のよくある失敗例と、失敗を防ぐ方法

投稿日:2019年4月4日 更新日:

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この記事では、自己破産でよくある失敗と、それを防ぐ方法について解説していきます。

自己破産は、教科書通りに手続きすれば誰でも上手くいく…といったものではありません。

自己破産は、「だれかと同じようにすれば、あなたも上手くいく」という保証もありません。
逆に、「他の人は失敗したけれど、あなたの場合は上手くいった」ということもあります。

なぜかと言えば、自己破産は、四角四面に決められた手続きではなく、“人それぞれの事情に合わせて”判断される部分も多々あるためです。

しかし、そんな中でも最低限、気を付けておくべきポイントもあります。
ですので、そうした基本的な部分を中心に、解説を進めていきます。

自己破産で失敗を防ぐコツ①:自分一人で悩みを抱え込まないこと

自己破産で失敗を防ぐ一番のポイントは、「一人で悩みを抱え込まないこと」です。

返済や取り立てに追われていると、気持ちの余裕もなくなり、冷静な判断ができなくなってしまいます。

その結果、たとえば自己破産を自分で申し立てようと試みて、書類の書き方に戸惑っているうちに、相手から訴訟を起こされてしまう…といったトラブルもあるでしょう。

自分一人でもがいて、泥沼にはまってしまう前に、信頼できる人に助けを求めることが大切です。

自己破産で失敗を防ぐコツ②:ギリギリまで頑張り過ぎない

大阪の弁護士・田中文(あや)先生が、ご自身のブログでこのように書かれています。

多くの方は,今月弁済したら所持金がなくなって食料品も買えなくなるとか,すでに電気を止められているなどという状態まで頑張ってから,相談に来られます。
相談先が分からなかったり,相談する時間がなかったり,相談自体を恐れていたりなどの事情が多いです。
しかし,ご自身の生活が成り立たなくなるまで頑張るべきではありません。
破産申立てをして免責を受けても,生活は続いていくのですから,ご自身の健康状態,精神状態,社会生活を健全に維持するための環境を優先的に考えていただきたいと考えています。
(中略)
資金が尽きてしまうと,破産手続さえ困難となる可能性があります。
また,少しでも手元に資産が残っていれば,万一の事故や病気に見舞われたときにも安心ですし,税金等の滞納を解消することも可能です(自己破産では,税金は免除されません。)。

出典:破産申立前にやってはいけないこと-弁護士のブログ
※太字は当サイトによる

今月の返済をしたら、所持金がなくなってしまう
食料品も買えなくなってしまう
もう(電気代が払えなくて)電気を止められている

…このような状態になってから、弁護士や司法書士に相談する人も多いようです。

しかし、
「生活が成り立たなくなるまで、頑張るべきではない」
と、田中弁護士は言っています。

「破産をした後でも、生活は続いていく」からです。

これは当サイトとしても、本当に同意します。

たとえば、破産管財事件を利用すれば、自由財産として原則99万円までの資産を残せます。

つまり、早め早めに、まだ生活費が残っている状態で、弁護士や司法書士に相談することが重要です。
生活基盤がボロボロになる前に、早めに債務整理を行うほうが、その後の生活再建もスムーズになります。

自己破産で失敗しないコツ③:かならず弁護士や司法書士のアドバイスを受ける

自己破産や債務整理は、自分一人で判断して行うべきものではありません。
かならず、債務問題に詳しい弁護士・司法書士のアドバイスを受けたほうが良いでしょう。

これは裁判所からも公式にアナウンスされています。

決して安易な手続ではありませんから,申立を行う場合には,なるべく法律の専門家である弁護士に依頼することをお勧めします。少なくとも,個人再生手続,破産,調停,任意整理など各種の負債整理の手続のうち,自分がどれを利用するのが適切なのかについては,是非弁護士に相談するのが妥当でしょう。

出典:個人再生手続利用にあたって-仙台地方裁判所
※太字は当サイトによる

なるべく法律専門家(弁護士や司法書士)に依頼すること
少なくとも、どの手続きを利用するのが適切なのかについては、弁護士・司法書士に相談すること

…といった内容が、裁判所のホームページにも書かれています。

借金などの返済に困った場合、減額・免除できる手続きは、自己破産だけではありません。
個人再生、任意整理、特定調停といった他の種類もあります。

そして最低限、「どの手続きを選ぶべきか」だけでも、弁護士や司法書士に相談するべきだ…というのが、仙台地方裁判所のアナウンスです。

「どの手続きを選ぶか」も自分で判断してしまうと…

“自己破産する必要もないのに(もっと簡単な手続きで解決できるのに)、破産申し立てしてしまう”

といった失敗も起こりがちです。
こうした失敗を防ぐためにも、裁判所も、弁護士や司法書士への相談を推奨しているのでしょう。

自己破産のよくある失敗例

つづいて、自己破産のよくある失敗例をご紹介していきます。

これからご紹介する失敗例は、基本的に、自分一人で自己破産を判断せず、しっかりと弁護士や司法書士に相談しておけば、どれも防げるものです。

また、「これを読んで気を付ければ、自分で自己破産ができる」というものでもありません。

こうした点にご注意の上で、お読み頂ければと思います。

偏頗弁済を行ってしまい、免責が認められなかった

自己破産には、いくつもの“やってはいけないこと”があります。そのうちの一つが、「偏頗弁済(へんぱべんさい)」です。

偏頗弁済を行ってしまうと、免責が認められなくなる恐れがあります。

“偏頗弁済とは何か”という話だけでも、複雑な法律解説が何ページも書かれるような難しい話です。

かいつまんでザックリ解説すると、

「自己破産申し立て直前に、特定の債権者に対してだけに偏った弁済を行う行為」

ということです。

こうした偏頗弁済(偏った返済行為)は、自己破産の免責不許可事由とされており、自己破産失敗の原因になります。


ですが、この説明だけで“偏頗弁済”を理解したつもりになって、自分で自己破産ができる…と勘違いしてしまうのが、一番危険です。

偏頗弁済について詳しく知りたい方は、法律の専門書にて勉強して頂くか、信頼できる弁護士に教授を求めて下さい。

債権者一覧に記載すべき債権者を見落としてしまう(債権者記載漏れ)

自己破産の必要書類の中には、債権者一覧もあります。
ここには全ての債権者を記載する必要があるのですが、知らないうちに見落としてしまうことがあります。(債権者名簿不記載)

裁判所の解説をご紹介しましょう。

4.債権者一覧表について(特に重要です)
★お金を返さなければならない相手はすべて記載する必要があります★

(1)サラ金や信販会社,銀行・信金・信組・農協などの金融機関,生命保険会社・郵便局・公共団体などからお金を借りた場合
(2)預貯金口座がマイナスになっている場合
(3)分割払いのローン(住宅・車・家電製品・サービスなど)がまだ残っている場合
(4)友人・知人・親兄弟・親戚などの個人や勤務先から借りていたり立て替えてもらっている場合
(5)滞納(家賃・学費・保育料・携帯電話・公共料金・養育費・税金・国保等),事業取引での未払いなどがある場合
(6)他人の借金を保証している場合
(7)クレジットでの買物 ほか・・・
思い当たるのはすべて記載してください。
催促が怖い,親戚である,担保がついている,財産を持って行かれたくない,アパート等から追い出されたくないなどの理由でわざと記載しなかったり,申立直前に特定の債権者に全額支払など,偏った弁済を行うと免責不許可になることがあります。

出典:自己破産申立について(説明と書き方)(平成29年3月改訂)-新潟地方裁判所
※太字は当サイトによる

このように、「返せない借金」だけでなく、すべての債権者について記載する必要があります。

裁判所の解説に書かれているのも、あくまで一例です。このほかにも債権者がいる場合もあるでしょう。
こうした債権者を全て、漏らさず記載する必要があります。

故意で債権者名簿に記載しなかった場合は、非免責債権とされ自己破産後も取り立てを受ける恐れがあります。
非免責債権にするために、わざと債権者名簿に記載しなかった場合は、非免責債権になるどころか免責不許可事由になってしまう事もあります。

自分では“うっかりミス”のつもりでも、それをどう判断するかは裁判所次第。
ですから、こうした書類については弁護士・司法書士に確認してもらうほうが賢明でしょう。

資産目録の記載漏れ指摘され「財産の隠匿」として免責不許可となってしまった

自己破産の必要書類は、膨大な量になります。
作成する書類も、全部で40ページ以上にもなります。
(※役所などで発行してもらう書類のほかに、債権者一覧表、財産目録、陳述書、家計状況など、記入して作成する書類が複数あります。)

資産目録(財産目録)の記載漏れが意図的な財産隠し行為だとみなされてしまえば、それが「財産の隠匿」として免責不許可事由となります。

ほかにも、陳述書の記入漏れ、適切でない書き方をしてしまった…等、失敗の可能性はいくつもあります。

実際に、次の記事で「自己破産の必要書類」をご紹介しているので、ご覧になってみてください。

「これを自分一人で、法律の専門家の手を借りずに作るのは現実的ではない」

…と、直感的にご理解いただけると思います。

ほかにも様々な失敗が考えられます

「自己破産の失敗例」というと、本当にキリがありません。

書類を自分で作ろうとして、手間をかけているうちに、相手から裁判に訴えられてしまった

担保や抵当権を整理しきれておらず、債権者とトラブルになってしまった

連帯保証人や連帯債務者との調整ができておらず、トラブルになってしまった

本来ならもっと負担の少ない手続き(任意整理など)で解決できたのに、“必要のない自己破産”をしてしまった

財産をすべて没収されると勘違いして、財産隠しをしてしまい、免責が認められなかった

「一般人が弁護士もつけずに自己破産をしている」と債権者に甘く見られて、即時抗告を連発され、手続きが全く進まない

…など、いくつものパターンが考えられます。

結局、自己破産で失敗を避けるためにはどうすればいい?

さて、いかがでしょうか。

「自己破産を自分でやって、失敗しない方法を知りたい」

…という方にとっては、少し不満の残る内容だったかもしれませんね。

ですが自己破産は、とても複雑で高度な法的手続きです。失敗しないためには、法律だけでなく、実際の制度運用についても知らなければいけません。

つまり、「自分で自己破産をやって失敗しない方法」を知るためには、司法試験に合格して弁護士の資格を取るのと同じぐらい、勉強が必要になります。(それでも実務経験は詰めませんから、勉強だけでは上手くできないでしょう)

そんな勉強は、とてもできないのが普通です。
“ふつうは出来ない”からこそ、“弁護士や司法書士という法律専門家がいる”とも言えそうですね。

-自己破産

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