自己破産で没収される財産と、没収されない自由財産とは

投稿日:2019年4月4日 更新日:

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この記事では、自己破産で没収される財産、没収されない財産について解説していきます。

「自己破産をすると、財産が没収されてしまう」

こんな話を、聞いたことのある人もいるかと思います。
この仕組みについて、今回は解説していきます。

私の財産はどうなるの?実際に確認する方法

「自己破産で財産を没収される」と聞くと、手放したくない財産も、いろいろ思い浮かぶでしょう。

  • 大切な思い出の詰まったスマートフォン
  • 子どもの将来や、老後のためにとってある貯金
  • おばあちゃんの形見のネックレス
  • ずっと大切に乗っている愛車
  • 大切な人からもらった腕時計
  • 先祖代々の土地
  • 一緒に暮らしているペットの猫

「私のこの財産も、没収されてしまうの?」
「私も自己破産したら、この大切なものを手放さないといけないの?」

そんな不安や疑問から、この記事をお読み頂いている方も多いでしょう。
では、その答えはどうやって確認すれば良いでしょうか?

「何か基準があるんじゃないの?」
「没収される/されないの基準がわかれば、自分で判断できるでしょ?」

…こう考えてしまうのは、残念ながら不正解。

たしかに基準はありますが、なにもかも基準通りに、四角四面にバッサリ切って判断されるワケではありません。

自己破産や債務整理は、一人一人ちがった事情、一人一人ちがった人生に合わられるように、柔軟にできているからです。

そのため、「私の○○は自己破産するとどうなるの?」という答えは、【あなたの事情に合わせて、弁護士や司法書士に診断してもらうべき】と言えます。

あなたの大切なものを守るのが、弁護士や司法書士の仕事

たとえば、あなたが評価額30万円の宝石をもっていたとします。普通の自己破産の基準では、手放して売却しないといけません。
ですがその宝石は、おばあちゃんの大切な形見。とても手放すことはできません。

そんな時、弁護士なら、あなたに代わって、このように主張できるでしょう。

「この宝石は、この人の尊厳に関わる極めて重要なものです。これを換価するのは、人権の観点からもって相当ではありません。」

その主張を破産管財人や裁判官が聞き入れ、自由財産の拡張が適用され、大切な形見の宝石を守れるかもしれません。

自己破産の“財産の没収”とは?

それでは、仕組みの解説に入っていきます。
まずは、自己破産をすると“財産が没収される”のは、一体なぜなのかを解説してきます。

自己破産=“破産”と“免責”

「自己破産」という手続きは、実は、「破産手続き」と「免責手続き」の2つが一体化したものです。

破産手続き 今ある財産をお金に換えて、借金の返済に充てる
免責手続き 返済を免除する

つまり、

「今ある財産をお金に換えて、可能な限り返済に充てて、残った借金の返済は免除しましょう」

という手続きが、自己破産だと言って良いでしょう。

「自己破産すると財産を没収される」というのも、実際には、“破産手続き=今ある財産をお金に換えて、借金の返済に充てる”ためです。
決して、“お金を返せない罰”ではないということです。

何もかも没収(清算)されるわけではない…自己破産の“自由財産”

さて、ここで気になるのが、「財産が清算されてしまったら、その後の生活はどうなるの?」という点ですね。

衣類も食事も、当座の生活費も、何もかも没収されてしまったら、生きていけません。
そのため、“自己破産しても、守られる財産”が決まっています。これを、“自由財産”と呼びます。

自己破産の自由財産

自己破産の自由財産について、べリーベスト法律事務所の書籍「自己破産と債務整理を考えたら読む本」では、次のように解説されています。

具体的には、99万円以下の現金、破産開始決定後に取得した財産、差し押さえが禁止されている家具・家電等です。

出典:自己破産と債務整理を考えたら読む本 P104 べリーベスト法律事務所 2016 日本実業出版社 ISBN978-4-534-05424-1

99万円以下の現金
新得財産(破産後に手にした財産)
差し押さえ禁止財産(家具や年金)

この3つが、まずは「自由財産」として、破産しても持っていられる財産に定められているわけです。

といっても、“差し押さえ禁止財産”は、実はかなり幅の広いものです。
日常生活や仕事に必要な財産は、ほとんど、この差し押さえ禁止財産によって守られると考えて良いでしょう。

差押え禁止財産=“本来的自由財産”の規定について、債務整理に詳しい「高田総合法律事務所」は、具体的に次の条文を挙げています。

差し押さえ禁止動産:(民事執行法第131条)
差し押さえ禁止債権:(民事執行法第152条)

(参考:http://www.takata-law.jp/for_person/personal-bankruptcy/free-assets/)

細かい基準や規定はともかく、自己破産をしても生活や仕事は守られることを、まずは押さえておきましょう。

自由財産の拡張

上記の“本来的自由財産”のほかに、“自由財産の拡張”という制度もあります。
自己破産しても持っていられる財産(没収されない財産)は、自由財産のほかにもあるということです。

こちらも、先ほどの高田総合法律事務所の解説を一部ご紹介しましょう。

上記の本来的自由財産に加えて、裁判所は、破産管財人の意見を聴いたうえで、自由財産を拡張することができます(破産法34条4項)。
破産法上、自由財産を拡張するにあたって考慮すべき事情としては、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた自由財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情、と定められています。
もっとも、破産事件の公平かつ安定的な運営のため、多くの裁判所では、財産の種類と金額による基準を作っています。

出典:自己破産 本来的自由財産 / 自由財産拡張基準 - 高田総合法律事務所

【裁判所は、破産管財人の意見を聴いたうえで、自由財産を拡張することができます】

…と説明されていますね。

横浜地方裁判所における自由財産拡張に関する基準

参考までに、横浜地方裁判所の「自由財産の拡張」についての運用基準を紹介しておきます。

(1)自由財産の範囲の拡張として換価しないもの

  • 残高が20万円未満の預貯金(複数ある場合は合計で判断します)
  • 見込額が20万円未満の保険契約解約払戻金(同上)
  • 処分見込み価格が20万円未満の自動車
  • 居住中家屋の敷金債権
  • 電話加入権
  • 支払い見込額の8分の1相当額が20万円未満である退職金債権
  • 支払い見込額の8分の1相当額が20万円以上の退職金債権の8分の7相当額

(2)場合によっては換価しないもの

破産者から換価をしないでもらいたい旨の要望があり、破産者の生活状況などの調査の結果、管財人がこれを相当とする事情があると認めるときは、換価をしないものとすることができる。

参考:pdf黙示的に自由財産の範囲の拡張の裁判があったものとして扱う財産(横浜地方裁判所)
※当サイトで平易な表現に加工しています

実際には裁判所ごとに基準が異なる場合があるかもしれませんが、「あなたは、この財産を持っていて良いですよ」と、認められる可能性があると言えるでしょう。

破産者の生活の状況
破産手続開始の時において破産者が有していた自由財産の種類及び額
破産者が収入を得る見込みその他の事情

こうした、ひとりひとりの事情に合わせて、“没収されない財産”が広がる可能性もあるようですね。

自己破産しても、財産が没収されるとは限らない

さて、ここまでの解説で、

“自己破産しても、生活や仕事に必要な財産は守られる”

という仕組みを、弁護士の解説を引用しながらお届けしてきました。

さらに、“自己破産しても、まったく財産が没収(清算)されない”というケースもあります。

簡単に言ってしまえば、「そもそも清算・換価する財産が無い」場合です。“ない”のですから、“精算のしようがない”わけですね。

こうしたケースで行われる自己破産を、「同時廃止」と呼びます。
これについて詳しくは、以下の記事で解説しています。

「ギリギリの生活をしながら、返済を頑張ってきたけれど、もう頑張れない、破産するしかない…」
「これ以上返済しようにも、お金も、売れるものも何もない…」

このように困っている方は、実際のところ、“同時廃止”となり、財産の清算ナシで返済を全額免除できる可能性もあるでしょう。

自己破産ではなく、任意整理や個人再生などで解決できる場合も

また、自己破産ではなく「任意整理」や「個人再生」「特定調停」といった、別の手続きで返済トラブルを解決できるケースもあります。

「借金が返せなくなったら破産」
「お金が払えなくなったら自己破産」

というイメージもありますが、実際には、自己破産とは全く別の手続きで、返済を減額したり、分割計画を立て直したり…という事ができます。

こうした手続きをまとめて、「債務整理」と呼ばれます。
債務整理の各種手続きについては、次の記事でまとめちえます。


そして、自己破産ではない、任意整理や個人再生などでは、財産の没収(清算)はありません。(個人再生では「清算価値保証の原則」があり、返済する総額の範囲内であれば財産を手元に残すことができます。)

ただし、任意整理や個人再生などでは、“返済の全額免除”もできません。返済の全額免除ができるのは、債務整理の中では自己破産だけです。

(※ほかに時効援用もありますが、これを債務整理と扱うかどうかは各論あるようです。時効援用については、【時効援用とは?わかりやすく概要を解説】の記事をお読みください。)

「返済が苦しいけれど、まったく一円も返せないわけじゃない」
「せめて遅延損害金や利息だけでも免除してもらえれば、あとは分割で完済できそう」

…といった場合は、任意整理や個人再生で、“財産の没収ナシ”で解決できるケースもあります。

持ち家や車を持ったまま、借金の返済だけを減額できることも、珍しくありません。

自己破産で、わたしの財産はどのくらい守られるの?

自己破産しても守られる財産(自由財産、自由財産の拡張)は、本来は、このテーマだけで専門書が100冊も積み重なるような、非常に難しい話です。

しかし、これから自己破産を考える私たちにとって、ひとまず抑えておきたいのは、以下の3つのポイントになるでしょう。

自己破産をしても、何もかも持っていかれるわけではない

無一文のホームレスになるわけでも、極貧生活に転落するわけでもない

そもそも、自己破産せずに他の手続きで解決できる可能性もある

そして一番に重要なのは、「自分の場合どうなるかは、弁護士や司法書士に診断してもらう必要がある」ということです。

自己破産による“財産の没収”は、“罰”ではない

なぜ、「99万円以下の現金」などの基準がありながらも、実際は“診断”が必要なのでしょうか?

その理由は、そもそも自己破産が、“人それぞれの事情に合わせられる”ように作られているためだと思います。

「自己破産で財産が没収される」というと、どうしても“罰”や“ペナルティ”といったイメージがあるでしょう。

「借金は死んでも返すもの。返せないのなら、相応の罰を受けるべきだ」

…という印象を持っている方は、少なくは無いと思います。
しかしこれは、実際に法に定められた“破産法”の精神とは、全く違います。

破産法の精神は、同法の第一条に記されています。
破産法第一条は、他の記事でも触れていますが、本当に大切な法律ですので、何回でもお伝えしたいと思います。

【破産法第一条】
この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

【債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする】

つまり、“生活を立て直すこと”、“人生をやり直すこと”。
そのための手助けをするのが、自己破産という仕組みの、本当の目的なのです。

やり直すためには、生活を守らなければなりません。

ですから、破産者の生活を守るために、仕事を守るために、そして将来を守るために、「自由財産」や「自由財産の拡張」というルールもまた、定められているのだと思います。

人それぞれ、“何を守るべきか”は違う

そして大切なことは、「人それぞれ、人生は違う」ということです。

一人一人にちがった人生があり、ちがった財産があります。
守るべきものも、今後の生活再建に必要なものも違います。

だからこそ、“あなたの場合は”、“わたしの場合は”…と、法律専門家に診断してもらう必要があります。

★教科書通りに…ではないからこそ、あなたの人生を守れる弁護士・司法書士がいます

お読み頂いて、いかがだったでしょうか?

「自己破産で守られる財産はコレ、処分されるのはコレ」

…と、教科書のような答えを期待された方には、ちょっと不満の残る記事だったかと思います。

ですが、“教科書通り”ではないからこそ、一人一人ちがった人生を、守れるようになっている…それが、自己破産という仕組みです。

この柔軟性が、裏を返せば難しさ・わかりにくさになっている面もあるでしょう。
しかし、だからこそ、あなたの人生を守るための“弁護士・司法書士”がいるわけです。

まずは無料相談で、「私の場合はどうなりますか?」と、弁護士や司法書士に聞いてみて下さい。
話をするだけでも、

「自分の人生はまだやり直せる」
「大切なものをしっかり守ってもらえる」

…と、肌で感じられるはずです。

-自己破産

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