自己破産の管財事件と同時廃止の違いとは?

投稿日:2019年1月14日 更新日:

この記事では、自己破産の「管財事件」と「同時廃止」の違いについて、解説していきます。

自己破産は、借金・ローン・クレジットカードなど、各種の返済義務を免除し、一定以上の財産を清算する手続きです。返済が難しくなり、「もう1円も返せない」となった時に用いられる解決手段となります。

自己破産には、細かくわけると「管財事件」と「同時廃止」という2種類があります。
この2つについて、それぞれの違いを見ていきましょう。

自己破産とは、「破産手続き」+「免責手続き」

自己破産の管財事件と同時廃止の違いを理解するためには、まず「自己破産とは何なのか」を、おおまかに知っておく必要があります。
自己破産は、「破産手続き」と「免責手続き」という、2つの手続きが一体になった制度です。

破産手続き(破産法第2条)

…破産者(債務者)が持っている財産を清算し、債権者に配当する手続き

【破産法 第2条】
この法律において「破産手続」とは、次章以下(第十二章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産を清算する手続をいう。

免責手続き(破産法第248条)

…返済義務を免除(帳消し)にする手続き

【破産法 第248条】
個人である債務者(破産手続開始の決定後にあっては、破産者。第四項を除き、以下この節において同じ。)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後一月を経過する日までの間に、破産裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる。

自己破産の主な効果は、「借金などの返済がすべて免除される=免責手続き」と、「一定以上の財産が清算される=破産手続き」です。この2つは、もともと別の手続きと考えると、わかりやすくなります。

そして、

管財事件 免責も破産も行う自己破産
同時廃止 免責は行うが、破産は行わない自己破産

となります。

清算する財産が無い場合は、「同時廃止」になる(同時廃止決定)

自己破産の同時廃止は、「破産しない自己破産」と言っても良いでしょう。おかしな話に聞こえるかもしれませんが、「破産=財産の清算・処分」という事を思い出して下さい。
財産を持っていない場合は、破産(=清算・処分)したくても、“破産すべき財産が無い”わけです。

破産すべき財産が無いのですから、破産手続きを行うことはできません。そのため、破産手続きの申し立てと同時に、「破産手続きの廃止(「手続きを終わらせること」と理解してください)」が決定されます。これを、「同時廃止決定」と呼びます。

【破産法 第216条】
裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。

同時廃止になると、免責手続きだけが進んでいきます。
つまり、「一定以上の財産が無い状態で自己破産をすると、財産の処分はされず、返済の免除だけが行われる」という事です。
この形の自己破産が、「自己破産の同時廃止」となります。

自己破産の同時廃止について、詳しい概要や手続きの流れは、次の記事でまとめていきます。

財産の清算も行うのが、「管財事件」

自己破産には「管財事件」という種類もあります。
これは、“一定以上の財産がある状態で、自己破産を行った場合の手続き”となります。一定以上の財産を清算し、債権者に配当する「破産手続き」と、返済を免除する「免責手続き」が、両方行われる自己破産です。

“財産があるのに破産”とは、どういう状態?

「財産があるのに自己破産をする」というのは、すこし想像しにくい状態かと思います。

これは簡単に言えば、「持っている財産の額よりも、借金のほうが圧倒的に大きい」状態です。持ち家もある、車もある、定期預金もある…でも、すべて売却してお金に変えても、返しきれないほど借金がある、という状況です。

こうした場合に自己破産を行うと、「管財事件」となります。

持っている財産は、「破産財団」になる

自己破産の管財事件になると、持っている財産(のうち清算の対象になるもの)は、「破産財団」となります。

【破産法第2条第14項】
この法律において「破産財団」とは、破産者の財産又は相続財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するものをいう。

「破産財団」といっても、そういう名前の団体ではありません。ここでは単に、“清算される財産のまとまり”と考えて下さい。

破産財団は、「破産管財人」によって管理・処分される

破産財団(清算・処分される財産)は、「破産管財人」によって管理・処分されます。「破産管財人」は、裁判所によって選任されます。通常、弁護士などが選任される事が多いようです。

【破産法第2条第12項】
この法律において「破産管財人」とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう。
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【破産法第31条】
裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、一人又は数人の破産管財人を選任し、かつ、次に掲げる事項を定めなければならない。

破産財団が処分され、その売却代金は債権者に配当される

破産財団(清算・処分される財産)は、破産管財人によって処分され、お金に換えられます。つまり簡単に言えば、売却されるという事です。
そうして得られたお金(売却代金)は、債権者に配られます(配当)。

【破産法第193条】
破産債権者は、この章の定めるところに従い、破産財団から、配当を受けることができる。
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【破産法第194条】
配当の順位は、破産債権間においては次に掲げる順位に、第一号の優先的破産債権間においては第九十八条第二項に規定する優先順位による。

債権者が複数いる場合は、破産法第194条などの法律に基づき、優先順位・または債権の金額(いくら貸していたか)の割合に応じて配当されます。

つまり、自己破産の管財事件とは、債務者(=破産者)の視点から見ると、

「一定以上の財産を処分して、その分は渡すので、返済を免除してください」

…という手続きになると言えるでしょう。

自己破産の管財事件について、詳しい概要や手続きの流れは、次の記事でまとめていきます。

また、管財事件で処分される財産と、処分されない財産(自由財産)については、次の記事で解説を行います。

自己破産の同時廃止と管財事件の、予納金(費用)の違い

自己破産の同時廃止と管財事件は、「破産手続き(財産の清算・処分)」が行われるかどうかのほかに、費用(予納金)にも違いがあります。

予納金とは、自己破産の手続きに掛かる費用のことで、裁判所に対して支払いを行います。

管財事件(財産の処分がされる自己破産)の予納金 50万円程度~負債額による
※少額管財事件の場合、20万円程度
同時廃止(財産の処分がされない自己破産)の予納金 5000円~2万円程度

管財事件になるか、同時廃止になるかの判断基準や条件

管財事件になるか、同時廃止になるかは、一言で言えば「破産手続きの費用を払えるかどうか」という事になります。

破産手続には,破産管財人の報酬をはじめ様々な費用がかかりますから,費用が捻出できなければ手続を進めていくことは不可能です。
したがって,開始時点ですでに,破産債権者への配当どころか破産手続を進めていくだけの財産すら無いことが明らかである場合には,破産管財人を選任して手続を進めることは無意味かつ不可能であるということになります。
そのため,同時廃止となるのです。

出典:自己破産において同時廃止となるのはどのような場合か? LSC総合法律事務所 link archive

原則としては、管財事件の予納金が払えそうかどうか?という点で判断されるようです。ただ、厳密に「いくら以下であれば」という明確な条件ではありません。裁判官や代理人弁護士の判断、前例など、さまざまな事情で変わってくると考えられます。

「少額管財事件」制度を運用している裁判所もある

「同時廃止」と「管財事件」のほかに、裁判所によっては、「少額管財事件」という制度を運用している所もあります。東京地方裁判所など、多くの裁判所がこれに当たりますが、全てではないようです。

少額管財事件は、「管財事件の費用を払えるほどの財産は無いが、もうすこし少額であれば払える」という場合の制度です。たとえば東京地方裁判所の場合、予納金20万円程度で行えるようです。

ただし、同時廃止や通常管財事件と違って、「少額管財事件」という制度は、法律上定められたものではありません。そのため、裁判所によって細かい内容も異なるほか、そもそも運用していない裁判所もあります。

それでも、管財事件になる場合でも、費用を安く抑えられる方法もあるという事は、知っておいて損はなさそうですね。

自己破産には「異時廃止」もある

自己破産には、「異時廃止」と呼ばれる形もあります。
簡単に言えば、「いったんは管財事件として進めたものの、詳しく財産調査をしてみたら、配当できるほどの財産がなかった」という場合です。

同時廃止と似た用語で,異時廃止があります。これは,破産管財人は選任されたが,配当手続費用を支弁するほどの破産財団が形成できないことが,開始決定後に判明した場合に,手続廃止の決定がなされるものです(破産法217条1項)。

出典:同時廃止事件とは(+異時廃止とは) 重次法律事務所 link archive

【破産法第217条】
裁判所は、破産手続開始の決定があった後、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、破産手続廃止の決定をしなければならない。この場合においては、裁判所は、債権者集会の期日において破産債権者の意見を聴かなければならない。

「異時廃止」の場合も、ようするに「財産の処分や清算を行わない」という事になります。そのため、結果として免責(返済免除)のみが進むことになります。

自己破産は、簡単な手続きではないからこそ、まずは相談を!

自己破産は、「原則として、すべての返済を免除(免責)する」こと、そして原則的には管財事件として、「一定以上の財産を処分(破産)する」という、2つの強力な効果を持った、法的な債務整理です。

債権者、債務者の双方にとって、強力な法的効力を発揮しますから、それだけ運用も慎重です。財産が無い人にむりやり払わせるような事がないよう、「同時廃止」や「異時廃止」があり、また逆に、債権者の権利も侵害しすぎないよう、「少額管財」制度を運用している裁判所もあります。

このように、実際の運用を見ると、決して表面上の知識だけでは理解できない、複雑な仕組みがさまざまにあります(※たとえば少額管財制度は、法律上は定められていません)。

そのため、自己破産をしようか考える場合、自分ひとりで考えるのではなく、必ず、債務整理に強い弁護士・司法書士に相談するべきでしょう。

債務整理に強い弁護士・司法書士事務所 一覧と解説

 

自己破産を定めた法律=破産法そのものが、2005年に変わっている

現在の自己破産は、「破産手続き」と「免責手続き」が一体になったものです。

つまり、借金やローンが返せなくなった時、

「手持ちの財産で、一定以上のものは清算して、債権者への弁済にあててましょう(破産手続き)」
「残りの返済は、原則すべて免除しましょう(免責手続き)」

という2つが、基本的にはセットになっています。
とはいえ実際には、「一定以上の財産がなく、清算できない」という場合のために、「同時廃止」や「異時廃止」があるわけですね。

実は、この「破産」と「免責」が一体化した自己破産は、つい近年まではありませんでした。

平成17年1月1日まで続いた旧破産法(大正15年4月25日法律71号)では、もともと「不免責主義」が取られており、財産の処分(=破産手続き)は行われても、返済の免除(=免責手続き)は行われていなかった為です。

免責主義
制定当初は不免責主義が採用され、配当後の残債務について破産者の責任は免除されなかったが、後の改正により免責主義が採用されるに至った。

出典:旧破産法-wikipedia
参考:山木戸克己(1974)『破産法』(現代法律学全集24)青林書院 ISBN-13: 978-4417004745

古い法律では、自己破産しても返済は免除されなかったわけです。

しかし、現代の破産法(現行破産法・平成16年6月2日法律第75号)では、返済義務が免除される「免責手続き」と、一定以上の財産の清算を行う「破産手続き」が一体化しており、“自己破産すれば返済が原則すべて免除される”という仕組みに生まれ変わっています。

ほかにも、「破産後に、新しく手にした財産を持っていて良いかどうか」という点にも違いがあり、古い法律では、破産後の財産も破産財団に組み込まれる(=処分対象になる)仕組みになっていました。

ですが現在の破産法では、「破産後に、新しく手にした財産は、自分のものにできる」となっています。

今の自己破産は、「人生やり直し、再スタート」の制度

昔の自己破産は…

  • 財産の処分はされてしまうが、返済の免除はされない(非免責主義)
  • 破産後に、新しく手にした財産も、破産財団に組み込まれる(膨張主義)

今の自己破産は…

  • 一定以上の財産がある人だけ、その財産が処分される
  • 財産の処分がある場合(管財事件)も、無い場合(同時廃止・異時廃止)でも、返済が免除される(免責主義)
  • 破産後に、新しく手にした財産は、自分のものにできる(固定主義)

こうした変化をもって、2005年以降の「新しい自己破産」は、“債務者=破産者の生活再建に重点を置いた、人生やり直し・再スタートの制度”と、専門家からも評価されています。

破産には大きなマイナスイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、そんなことはありません。
人生をリセットし生活を立て直すための一つの通過点です。

出典:弁護士法人サンク総合法律事務所

自己破産
裁判所を通して借金総額を0にし、再スタートを切れます。

出典:弁護士法人そうや法律事務所

★「自己破産=人生おしまい」…昭和ドラマのイメージは“もう古い”

新しい破産法の施行は、2005年(平成17年)1月1日から。21世紀に入ってからなので、比較的最近の法改正です。昭和のテレビドラマで、「自己破産して人生がお終いになってしまう」といった描かれ方をしていたのも、旧破産法に基づく自己破産だったからなのかもしれません。

しかし、2005年以降は、破産法そのものが新しい法律に置き換わっています。
そのため、昭和のドラマで描かれたような、「自己破産=人生おしまい」というイメージは、現代ではまったく異なるものになっています。

「自己破産は怖い」
「自己破産したら人生が終わってしまう」

そんな恐怖や不安をお持ちの方は、「もしかして、自分は“昔の自己破産”のイメージを持ち続けているのではないか?」と、思い込みを疑ってみる必要があります。
まずは、新しい「現代の自己破産」について、詳しい人に相談して、ほんとうの話を聞いてみましょう。

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--この記事の根拠資料・参考資料--
破産法の条文については、衆議院WEBサイトの「破産法」ページより引用しています。
・衆議院WEBサイトの「破産法」 link archive

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