自己破産の同時廃止の概要と手続きの流れ

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この記事では、自己破産の「同時廃止」について解説していきます。
自己破産は、各種ローンなどの返済が困難になった時に、返済を原則として全額免除できる手続きで、いくつかある債務整理の一種類となります。

自己破産には、細かくわけると「管財事件」と「同時廃止」の2種類があります。そのうち今回は、「同時廃止」について、手続きの流れや概要をまとめていきます。

「管財事件」については、次の記事で解説を行います。

《内部リンク予定:自己破産の管財事件の概要と手続きの流れ》

★自己破産の管財事件と同時廃止の違いとは?

自己破産の管財事件と同時廃止の違いについては、次の記事で詳しくまとめています。

簡潔に要点をまとめれば、

財産を持っている場合、管財事件となり、一定以上の財産が清算される
財産を持っていない場合、同時廃止となり、財産の清算は行われない

という違いになります。
自分で管財事件と同時廃止を選べるわけではなく、自己破産を申し立てた段階で、どの程度の財産を持っているかにより変わります。

自己破産の同時廃止とは

自己破産の同時廃止とは、“破産手続きを行わない債務整理”です。
自己破産は、

財産を清算する“破産手続き”
返済を免除する“免責手続き”

この2つが一体になった手続きです。
しかし、破産=財産の清算をしようにも、清算する財産もない…という場合に、「破産開始決定と同時に、廃止(手続きを終わらせる)」する、同時廃止という形になります。
破産廃止=財産の清算が行われない形ですが、免責=返済の免除は行われます。

簡単にまとめてしまえば、「明らかに、清算するほどの財産を持っていないのだから、清算する手続き自体をやっても意味がないので、止めてしまって、返済の免除だけ行おう」という事です。

自己破産の同時廃止の、主なメリットとデメリット

自己破産の同時廃止には、さまざまなメリットがあります。

《自己破産の同時廃止のメリット》

  • 財産の清算(処分・売却)が行われない
  • 破産手続きが行われないため、手続きがすこし手短になる
  • 予納金(費用)が大幅に安くなる

こうしたメリットがある一方で、「同時廃止」ならではの大きなデメリットは、ほとんどありません。あえて言えば、「もともと、一定以下の財産を持っていない人にしか適用されない」という点になるでしょう。

財産処分がされないから…と、自分から「同時廃止にしてください」と言っても、一定以上の財産を持っていれば、同時廃止にはならず「管財事件」となります。
なお、詳しい費用の相場については、次の記事で解説を行います。

自己破産が同時廃止になる条件

自己破産が「同時廃止」になる条件は、破産法第216条1項および2項に法定されています。

【破産法第216条 破産手続開始の決定と同時にする破産手続廃止の決定】

第二百十六条 裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。
2 前項の規定は、破産手続の費用を支弁するのに足りる金額の予納があった場合には、適用しない。

この法律では、具体的に「財産いくら以下」と金額や資産価格が決められているわけではありません。ただし一つの目安として、第2項の条文があります。

自己破産の破産手続きの費用(予納金)は、通常管財事件で最小50万円程度、少額管財制度を運用している裁判所であれば20万円程度となります。

また、破産手続きでも清算されない「自由財産」と「自由財産の拡張」もありますから、これらを差し引いた財産の残りが、上記の予納金に満たない場合は、同時廃止になる可能性がありそうです。

とはいえ、裁判所ごとに基準がまちまちな部分もあり、同時に、人それぞれの事情に合わせて柔軟な制度運用がされている実態もあります。
つまり、白黒ハッキリした無慈悲な線引きではないのです。

そのため、「自分の場合どうなるのか」は、債務整理に詳しい弁護士・司法書士に相談し、聞いてみるとよいでしょう。

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自己破産が同時廃止になった場合の手続きの流れ

それでは、自己破産の同時廃止について、手続きの流れを見ていきましょう。まずは概要をお示しします。

《「自己破産の同時廃止」の手続きの流れ》

:弁護士・司法書士などに相談し、債務整理を依頼

:取り立て・返済のストップ

:自己破産の申し立て

:破産手続開始決定⇒同時廃止

:免責審尋

:免責許可決定


自己破産の同時廃止は、最初から「そうして欲しい」と申し立てるものではありません。まず自己破産の申し立てを行い、それを受けた裁判所によって、「同時廃止にするか、それとも管財事件にするか」と判断されます。

ですので、手続きの流れとしては、弁護士や司法書士への相談~自己破産の申し立てまでは、「管財事件」になった場合と変わりません。

破産手続きは実質行われず、免責手続きだけが進む

同時廃止となった場合、破産手続きは実質行われず、免責手続きだけが進んでいきます。内容としては、「免責審尋」⇒「免責許可決定」となります。

免責審尋

裁判所が、債権者および債務者の双方から、借金の事情や、返せなくなった理由などの聞き取り調査を行います。これを免責審尋と呼びます。
この免責審尋は、弁護士や司法書士に依頼した場合でも、本人が裁判所に行って行う場合が多くなります。

といっても、提出書類がしっかりしていれば、数分で終わることがほとんどです。内容も、「申し立て書類の内容に間違いはありませんか?」といった事を聞かれる程度になるでしょう。

免責許可決定

免責審尋の内容などを踏まえて、裁判所が、返済の免除を決定します。これが決定されると、支払責任が免除されます。

★「身柄を拘束される」というデマと、「ウソをつくと罪になる」という本当のこと

自己破産にはいろいろなデマがあるのですが、その中に、「自己破産すると裁判所に身柄を拘束される」というデマもあります。これは恐らく、免責審尋という言葉が悪いように想像されて、事実と違うイメージが“ひとり歩き”してしまったのではないでしょうか。

実際には、免責審尋は数分程度で終わるので、「身柄を拘束される」とか、「勾留所のような場所に入れられて、厳しい取り調べを受ける」といった事はありません。

一方、「ウソをつくと罪になる」という話は本当です。
破産法第271条には、「審尋における説明拒絶等の罪」という罪刑が法定されています。

【破産法第271条 審尋における説明拒絶等の罪】

債務者が、破産手続開始の申立て(債務者以外の者がしたものを除く。)又は免責許可の申立てについての審尋において、裁判所が説明を求めた事項について説明を拒み、又は虚偽の説明をしたときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

裁判官の問いに対して、説明を拒否する
裁判官の問いに対して、ウソをつく(虚偽の説明)

こうした事を行うと、三年以下の懲役、または300万円以下の罰金に処せられてしまいます。なお、これに限らず、罰金や滞納税などは自己破産しても免除されない事も付け加えておきます。

裁判所の審尋は、刑事ドラマの取り調べシーンのように厳しいものではありません。ですが、誠実に答えないと罪になってしまうので、決して軽いものでも無いと言えるでしょう。

債権者集会は開かれないが、「即時抗告」を受ける可能性はある

なお、債権者集会(債権者が集まって、配当について話し合うもの)は、同時廃止では基本的に行われません。債権者に配当する財産が無いからです。

ただし、債権者に異議がある場合は、免責許可決定後に、債権者から不服申し立てを行うこともできる「即時抗告」もあります。そのため、免責許可が決定されても、すぐに確定するわけではありません。

【破産法第9条 不服申立て】

破産手続等に関する裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間とする。

また、この第9条に基づく即時抗告のほか、さまざまな段階で即時抗告(不服申し立て)を行えるようになっています。たとえば、同時廃止決定に対しても、第216条第4項に基づき、即時抗告ができるとされています。

★債権者も、争おうと思えば徹底的に争える

このように、自己破産は法律で決まっているとはいえ、債権者にも争う余地が残されている制度でもあります。

もしも債権者が、

「即時抗告を駆使して徹底的に戦う!絶対に破産も免責もさせない!」

…と強い覚悟をもって対抗してきたら、そう簡単に話はまとまらないでしょう。そして、これは自己破産に限らず、他の債務整理の手続きでも同様でしょう。

債務整理(=借金解消)は、“債権者を説得し、理解してもらう”段階が、どこかで必ず必要になります。そのためにも、借金解決の交渉を任せられる、債務整理に強い弁護士・司法書士の力が必要になります。

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自己破産には「異時廃止」もある

今回の記事では、自己破産の「同時廃止」について解説しました。これとよく似ている形として、「異時廃止」という形もあります。
異時廃止は、「破産手続きが行われない」という点では、同時廃止と同様です。異なるのは、その判断がされるタイミングです。同時廃止では、破産手続開始決定と“同時に”廃止が決められますが、異時廃止は、破産手続きが進んでから行われます。

直感的にまとめれば、「財産を清算するために詳しい調査を行ってみたら、清算・配当できる財産がほとんど無かった」といったような場合に、この異時廃止の形となります。

【破産法第217条 破産手続開始の決定後の破産手続廃止の決定】

裁判所は、破産手続開始の決定があった後、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、破産手続廃止の決定をしなければならない。この場合においては、裁判所は、債権者集会の期日において破産債権者の意見を聴かなければならない。

同時廃止と異なり、異時廃止となった場合は、債権者集会は開催されます。そして、債権者の意見も聴かなければならない、と定められています。

ほかにも、破産廃止(財産の清算なし)になる場合がある

216条に基づく「同時廃止」、217条に基づく「異時廃止」のほか、218条に基づく“破産債権者の同意による破産手続廃止の決定”という形もあります。

【破産法第218条 破産債権者の同意による破産手続廃止の決定】

裁判所は、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当する破産者の申立てがあったときは、破産手続廃止の決定をしなければならない。
一 破産手続を廃止することについて、債権届出期間内に届出をした破産債権者の全員の同意を得ているとき。
二 前号の同意をしない破産債権者がある場合において、当該破産債権者に対して裁判所が相当と認める担保を供しているとき。ただし、破産財団から当該担保を供した場合には、破産財団から当該担保を供したことについて、他の届出をした破産債権者の同意を得ているときに限る。

簡単にまとめてしまえば、「すべての債権者が、破産(財産の清算と、それによる配当)をしなくて良い」と同意している場合です。担保が関係する場合もあります。

218条(+法人の場合は219条)に基づく破産手続廃止は、同時廃止(216条)・異時廃止(217条)と異なり、「前二項の規定は、破産手続の費用を支弁するのに足りる金額の予納があった場合には、適用しない」という条文がありません。

つまり、一定以上の財産を持っていても、債権者の同意が得られれば、財産の処分・清算をせずに、返済の全額免除だけが行えると解せます。
現実には非常に難しい面もあるかと思われますが、少なくとも法律上の規定としては、こうした可能性もあると考えて良さそうです。
「自己破産をしても、絶対に財産が処分されるわけではない」と言えるでしょう。

こうした点についても、詳しく知りたい場合は、債務整理に詳しい弁護士・司法書士に相談してみましょう。

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--この記事の根拠資料・参考資料--
破産法の条文については、衆議院WEBサイトの「破産法」ページより引用しています。
・衆議院WEBサイトの「破産法」 link archive

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