自己破産するから夫(妻)と離婚したい!財産分与や慰謝料に要注意!詐害行為に問われる恐れも

投稿日:2019年5月8日 更新日:

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★この記事を読んでわかること
(約5分で読めます)
  • 原則としては、自己破産をしても、離婚の妨げにはならない
  • ただし、離婚による財産分与や慰謝料の支払いが、詐害行為と疑われ、自己破産の妨げになってしまう恐れはある
  • 離婚と自己破産を考えている場合、弁護士・司法書士への無料相談は必須

自己破産するから夫(妻)と離婚したい!財産分与や慰謝料に要注意!詐害行為に問われる恐れも

この記事では、「自己破産をするから、旦那(妻)と離婚したい」という悩みについて解説していきます。
といっても、離婚や自己破産にいたる事情は、夫婦によってさまざま。
背景にある気持ちも、いろいろな違いがあるでしょう。

そこで今回の記事では、

「夫婦仲もあまり良くないし、この機会に離婚したい」
「こんな借金癖のある夫(妻)とは、自己破産をキッカケに離婚したい」

…など、積極的に離婚を考えている人に向けての解説をお届けしていきます。

★本当は離婚したくないけれど、自己破産するなら離婚しかない…と思っている方へ

「自己破産をするけど、夫(妻)に迷惑をかけたくないから離婚するしかない?」
「夫(妻)が自己破産するなら、子どもの将来を守るためにも、離婚して親権を引き取ったほうが良い?」

…このように、“決して離婚したいわけではないが、自己破産によって仕方なく…”と考えている人向けの解説は、次の記事で行っていきます。

★住宅ローンなど、共同名義・連帯債務や、保証人・連帯保証人については次の記事をご覧ください

また、自己破産する借金に、「夫婦の共同名義・連帯債務」や「夫(妻)が連帯保証人や保証人になっているもの」がある場合については、次の記事をご覧ください。(住宅ローンなどが当てはまる家庭が多いかと思います。)

“離婚する自由”は、原則として、自己破産によって妨げられません

まずは、原則となる基本の大前提からお話します。

  • 離婚するもしないも、どちらも自己破産とは基本的に関係がない
  • 『自己破産するなら離婚せよ』という決まりも、『自己破産するなら離婚してはいけない』という決まりも無い

つまり、“原則自由”ということです。

しかし、ここで疑問を持たれる人もいるかと思います。

「ネット上で、離婚した直後に自己破産はできないって見たけれど…」

この部分が、今回のお話のポイントです。
少し難しい話になりますが、いくつか資料をもとに解説していきます。

財産分与や慰謝料の支払いは要注意!離婚直後の自己破産でトラブルに?

「離婚した直後に自己破産はできない」という噂ですが、まず、弁護士の回答から見ていきましょう。

離婚の際に、離婚した相手に多額のお金(財産分与とか慰謝料とか)を渡しているような場合、本当は財産があって債権者に支払えたにもかかわらず、このお金を「隠匿」するために「離婚」の形を取って、離婚相手の財産にしてしまった上で、破産して、支払いを免れるという手段を取ったのではないかと疑われるようなことがなければ、離婚直後に破産しても問題となることはありません。

つまり、裁判所が、離婚に当たっての「お金や資産の流れ(貴殿名義の財産が離婚相手の財産に転化した)」を見て、これはおかしい(財産隠しだ)と思われてしまうような事情がなければ、大丈夫だということです。

出典:離婚直後に自己破産は出来るのか -弁護士ドットコム 鈴木 克巳(弁護士)

このお話を、もう少し整理してみましょう。

「離婚した直後に自己破産はできない」と言われる理由は?

離婚した相手にお金を払っている場合(慰謝料や財産分与など)、それが「破産を見越した財産隠し」だと疑われてしまう恐れがあるから

では、離婚した直後に自己破産はできないの?

離婚にあたっての「お金の流れ」を見て、これはおかしい、財産隠しだ…と思われるような不自然なことがなければ、問題にならない

つまり、「財産隠しを目的にして、偽装離婚する」のでなければ、離婚した直後の自己破産も問題ないと言えます。

とはいえ、不自然なお金の流れを作らないことが大切ですから、これは弁護士など法律専門家にアドバイスをもらって、離婚手続きをしっかりと行うほうが良いでしょう。
協議離婚・調停離婚のどちらになる場合でも、「離婚後の自己破産」を見越して、弁護士に最初からお願いしたほうが良さそうですね。

「詐害行為」にならないように要注意!

さて、「離婚による財産分与や慰謝料の支払い」が、財産隠しになってしまう…。
これについて、もう少し解説しましょう。

 

まず、自己破産には次のような仕組みがあります。

一定以上の財産をもっている場合、自己破産すると、財産を没収されてしまう

自己破産には「管財事件」と「同時廃止」があります。
一定以上の財産をもっている人は、自己破産をすると「管財事件」となります。
これによって、破産手続きで、一定以上の財産が破産財団に組み込まれ、売却・換価などを経て、債権者への配当に充てられます。

つまり自己破産は、財産をもっている人ほどデメリットが大きい手続きなのです。
しかし、ここに実はひとつポイントがあります。
自己破産する人の財産は、「破産申立て時に持っている財産」で判断されるのです。

つまり…

「自己破産して借金をゼロにしよう!」
↓ ↓ ↓
「でも、破産すると財産も没収されてしまう…」
↓ ↓ ↓
「そうだ!破産する前に、自分の財産を誰か信頼できる人に渡して、自分の持っている財産はゼロにしてしまおう!」

…こんな風に考える人も、いるかもしれませんよね。
そして、こうした「財産隠し」を実際にやってしまうと、“詐害行為(さがいこうい)”という不正行為になります。

詐害行為とは、債務者が債権者を害することを知りながら、故意に自己の財産を減少させ、債権者が正当な弁済を受けられないようにする行為のこと。

(…中略…)

具体的には下記の行為が詐害行為に該当する。

  • 破産申立て直前に不動産などの財産を他者へ贈与したり、安価で売却したりする行為
  • 破産申立て直前に不動産などの財産に担保権を設定する行為
  • 破産申立て直前に特定の債権者への支払いや返済行為
  • 破産申立て時に認められている自由財産以上の現金や預金の隠蔽行為

債権者はこれを一定の場合に取り消すことができる(民法424条「詐害行為取消権」)ので、債権者に指摘され破産管財人に否認されれば返還しなければならなくなる。

出典:詐害行為 さがいこうい Fraudulent Act-M&Aネットワークス

【民法424条 詐害行為取消権】
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2.前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

【民法第425条 詐害行為の取消しの効果】
前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

このあたりは非常に難しい法律論になるので、当サイトとしても、安易な解説は避けたいと思います。

ただ、たとえば「自己破産の直前の離婚で、相手に払った慰謝料や財産分与が取り消されて、受け取った側が返還を求められる」といった事もありそうな気配ですね。

偽装離婚は、詐害行為の手口の一つになる

いわゆる偽装離婚も、こうした「財産隠し」「詐害行為」の典型的な手口の一つでしょう。

自己破産は、あくまで“破産する本人(と保証人・連帯保証人・連帯債務者など)”の話なので、ただの家族・ただの夫婦というだけでは、手続き上の影響はありません。

たとえば、

  • 夫が借金を1000万円抱えている
  • 妻が貯金1000万円を持っている

…といった場合、「夫の借金1000万円の返済義務」は、当該債務の契約関係にない妻には、まったくありません。
ですから、夫が借金1000万円で自己破産しても、妻の貯金1000万円が没収されることはないのです。

この仕組みを逆手に取ったのが、偽装離婚による財産隠しです。

  • 夫が借金1000万円を抱えているが、夫名義の持ち家と貯金がある
  • 妻は借金も財産もない

↓ ↓ ↓

  • 偽装離婚をし、慰謝料と財産分与の名目で、家の名義を妻のものにし、貯金も全額を妻に支払う

↓ ↓ ↓

  • 夫は家も財産もない状態になる
  • 妻は、もともと夫が持っていた家と貯金を持っている

↓ ↓ ↓

  • 夫が自己破産をする。夫は「財産が無い状態」なので、財産を没収されない
  • しかし、「破産する直前まで、夫が持っていた財産」は、妻のところに、まるごとそのまま残っている

このような手順で、財産を隠して、自己破産ができてしまいそうです。
ただ実際には、弁護士や裁判所も“慣れて”いますから、詐害行為はすぐにバレてしまうでしょう。

詐害行為を疑われずに、離婚と自己破産を行う方法は?

それでは、詐害行為を疑われずに、離婚と自己破産をスムーズに行う方法はあるのでしょうか?
これに関しては、本当に「人それぞれのケースによって違う」と言えるでしょう。

基本的に、詐害行為をしようと考えて、不自然なことを行わなければ、問題にはなりません。しかし、万が一でも疑われないように…と考えると、法律の実務や経験が必要になってくるでしょう。

こうした「詐害行為に疑われるリスク」も考えると、やはり、自己破産や離婚の悩みは、弁護士・司法書士に相談するべきですね。

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