時効援用(債務の消滅時効の援用)とは?わかりやすく概要を解説

投稿日:2018年9月28日 更新日:

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この記事では、時効援用(債務の消滅時効の援用)の概要を解説します。

時効援用とは、一口にわかりやすく言えば、「借金やローンなどの返済を、時効で帳消しにする」手続きです。

「借金は死んでも返すもの」と考える人もいたりするので、私たちの普段の感覚だと、ピンと来ない部分も多くなります。簡単な話ではありません。

また、時効援用は好き勝手にできるものでもありません。法律でしっかりと定められている仕組みです。

だまってどこかに行ってしまう「夜逃げ」や、取り立てを無視して放置する「踏み倒し」とは、まったく違います。時効援用は、“法律で定められている、わたしたちの正当な権利”ですので、恥ずかしいものではありません。

それでは、時効援用について、もう少し詳しく見ていきましょう。

債務の消滅時効の援用(時効援用)とは

「債務の消滅時効の援用」は、「時効援用」という仕組みで、債務(=お金を返す約束)そのものを、消滅させてしまう手続きです。
連帯保証人の債務も消滅します。

お金を借りると、「いつまでに返しますよ」とか、「毎月いくらずつ返していきますよ」という、約束(契約)をしますね。この約束そのものが、ナシになるわけです。

「返す約束」が「ナシ」になるので、これ以上、お金を返さなくて良くなるのですね。

なぜ「返す約束」がナシになるの?

この答えは、「貸した側が、裁判所を通すなどの、きちんとした取り立てを行わなかったから」という風になります。

借金やローンには、「貸した側=債権者」と、「借りた側=債務者」がいます。

  やること・役割 持っている権利や義務
債権者 お金を貸す 返してもらう“権利”がある
債権
債務者 お金を借りる 返す“義務”がある
債務

そして、少し勘違いされやすいのですが、時効援用は、「借金を返せなくなった人を、助ける仕組み」ではありません。

「借金を返してもらう側=債権者」が、「返してもらう権利=債権」を“きちんと使わなかった”場合に、

「“返してもらう権利”を持っているのに、ちゃんと使ってこなかったですよね。だから、もういりませんよね。」

…という事で、「貸した側の、返済を受け取る権利が、消滅される」わけです。その結果として、私たち”借りた人=債務者”は、お金を返さなくて良くなるのですね。

ざっくり言えば、「貸した側=返してもらう側が、ちゃんとしていなかったから悪い」ともなるでしょう。

そのため、時効援用で借金を帳消しにしても、ブラックリストになりません。財産の処分を求められることもありません。私たちには、なにもデメリットが無いのです。

また、滞納があるかどうかや、返済に困る事情があるか…といった事も問われません。借金の理由も問われないので、株やパチンコ・パチスロなどの借金でも、時効援用で帳消しにできます。

消滅時効とは、一定期間行使されない権利を消滅させる制度

「“返してもらう権利”を持っているのに、ちゃんと使ってこなかったですよね。だから、もういりませんよね。」

…ということを、もう少し詳しく言うと「一定期間行使されない権利を消滅させる」となります。
そしてこれが、「消滅時効」と呼ばれる仕組みの正体です。

消滅時効の援用とは
→消滅時効、すなわち、
一定期間行使されない権利を消滅させる制度を用いる行為です。

出典:消滅時効援用手続きの流れ-司法書士行政書士熊谷駅前事務所

つまり、「債務の消滅時効の援用」とは、

取り立てる側が、返してもらう権利=債権を、一定期間行使せず、ちゃんと使わなかったので、

債務 = お金を返す義務を、

消滅させる

という制度を使うことだと言えます。

★“一定期間”などの条件はある。目安は「最後の取引から5年間」

「貸した側=債権者が、返してもらう権利を、ちゃんと使わなかった」というのが、言い換えれば、時効援用ができる条件(の一部)になります。

ただ、どういう場合に「返してもらう権利を、ちゃんと使わなかった」となるかと言えば、これもまた複雑な問題ではあります。

ひとまずの目安として、「最後の取引(返済など)から5年間、裁判上の請求や、内容証明郵便を使った督促を行わなかった」という事が挙げられます。

そのため、「最後の返済から5年経っていれば、借金は時効になる」とも言えるわけです。

ただ、実際にはほかにも条件がたくさんあります。
詳しい話は、次の記事でまとめて解説していきます。

時効援用は、ブラックリストにならない

ブラックリストは、「お金を返す約束を、守らなかった」という記録です。JICCやCIC、JBAといった信用情報機関というところに記録されます。

しかし、時効援用では「約束そのものが、ナシになる」のですから、「約束を守らなかった」ことにはなりません。ですので、時効援用で返済を消滅させても、ブラックリストにはならないのです。


ただ、あくまで「時効援用が原因でブラックにはならない」という事です。滞納など、ほかの理由でブラックリストになることはあります。

時効援用とブラックリストについて、より詳しい解説は、次の記事で行います。

踏み倒しや夜逃げでは、ブラックリストになるが、時効援用ではブラックにならない

たとえば、踏み倒しや夜逃げでは、約束そのものは無くなりません。ですから、たんに「約束をまもらなかった」という事で、当然ブラックリストになります。

しかし時効援用では、法律で決まっている手続きで、返済の約束(債務)そのものが消えるので、ブラックリストにならないわけです。

★“間違った解説サイト”に要注意!

インターネット上には、時効援用と夜逃げ・踏み倒しの区別がつかず、「時効援用をすると、ブラックリストになる」と、間違ったことを書いてしまっている人もいます。

こうした間違いに“ひっかからない”ためにも、本当に時効援用に詳しい、弁護士・司法書士に話を聞いたほうが安心です。

ですので、繰り返しになりますが、時効援用をしようか迷っている場合は、弁護士・司法書士の無料相談をかならず使ってください。

時効援用に強い弁護士・司法書士

“消滅時効”は“援用”しないと意味がない

さて、時効援用をほんとうに平たく解説してしまうと、

「“返してもらう権利”を持っているのに、ちゃんと使ってこなかったですよね。だから、もういりませんよね。」

という事で、返済する約束そのものを消してしまう手続きです。

実際には、最終取引から5年の間、裁判上の請求や内容証明郵便による督促が無く、また債務承認など、他の対抗要件も備えていなければ…という、難しい話になっていきます。

しかし、難しい解説は他の記事にまわして、今回は「わかりやすさ」重視で話を進めましょう。

次のポイントは、「消滅時効は、援用しないと意味が無い」という話です。

消滅時効を使って返済の約束を消しますよ”と主張すること

ここでいう「援用」とは、簡単に言えば、

「消滅時効を使って、返済の約束を消しますよ」

…と、主張することです。

あくまでイメージの話になりますが、

「“返してもらう権利”を、ちゃんと使ってこなかったですよね。」と指摘して、「だから、返済の約束はもうナシですよ」と主張しなければ、債務の消滅時効は成立しません。

この“援用”を行わなければ、何年たっても、返済の義務は消滅しないのです。

法律の世界では、「言わない」ことは「無い」のと同じ

原則として、法律の世界では、「言わない」「黙っている」ことは、「無い」のとほとんど同じです。(※黙秘権など、違う場合もあります。あくまで原則論です)

「黙っていれば、相手の都合の良いようになってしまう」
「黙っていても、法律は助けてくれない」

という事です。

日本には、「沈黙は金」という美徳もありますし、「あれこれ自分の主張を言うのは良くない」という価値観もあります。しかし、日本の法律は、もともと西洋の法律(大陸法)をモデルに作られている事もあり、こうした“日本の美徳”があまり通用しないのです。

そういうわけで、債務の消滅時効についても、「黙っていたら=援用しなければ、無いのと同じ」という事になります。

債権者側から見た時効援用も、「督促の権利があるのに使ってこなかった=黙っていた」ので、「その権利が消滅する=無くなってしまう」という、同じ原理になります。

ただ言えばいいワケではなく、時効援用には正式な手順がある

時効援用とは、ざっくり言えば、「もう時効だから返しません」と主張することです。しかし、「ただ言えばいい」というほど、単純な話ではありません。

電話やメールなどで「時効援用します」と言うだけでは、時効援用したことにならず、返済義務も消えません。それどころか、言い方次第では、逆に「債務承認」となって、時効援用権を喪失し、時効援用ができなくなる恐れもあります。

このように、時効援用の方法にも複雑なルールがあるので、自分一人ですぐ簡単にできる事でもありません。

こうした時効援用の方法と、「本当に自分ではできないのか」といった話については、次の記事でまとめていきます。

時効援用の対象になる債務(支払や返済)

それでは次に、「時効援用できる対象」についても解説します。

ここまで、時効援用について「借金やローンの返済・支払を、時効で消滅させる」と解説してきました。ですが実際には、ほかにもさまざまな支払や返済が対象となります。

他にも、携帯電話料金、機種代、家賃、医療費などもこの「消滅時効」の対象になりますので、対応する時効期間が経過し、時効を援用することができれば、債権者は請求する権利を行使できなくなり、債務者はその後支払う必要がなくなります。

出典:アルスタ司法書士事務所

銀行カードローン
クレジットカード(リボ払い、分割払い、ボーナス払いや、キャッシング枠の利用など)
サラ金、消費者金融などのキャッシング
携帯電話料金(機種代など)
家賃
医療費

…こうしたものも含めて、条件を満たしていれば、時効援用で支払いをゼロにできます。

「債務の消滅時効の援用」は、ほんとうに難しい仕組み

いかがでしょうか?
この記事では、わかりやすさを重視して、時効援用について解説をお届けしてきました。しかし、それでもまだ「よくわからない」という事ばかりだと思います。

そもそも「債務の消滅時効の援用」という言葉自体、難しいですよね。「債務」「消滅時効」「援用」と、あまり知らない言葉が3つも並んでいます。

実際、ひとつひとつの言葉が深い意味を持っており、専門家のあいだでも意見がわかれる部分もあります。つまり、法律学者などの専門家のあいだでも、はっきりしていないこともあるのです。
たとえば、時効援用について定めた民法145条(※)についても、

時効の援用がいかなる法的性質を持つかについては争いがある。

出典:民法145条-wikibooks

…とされています。
ようするに、「正解はコレ!」…と、ハッキリしていない部分もあるのです。

ただ、全部がぜんぶ、わかっていないワケでもありません。ハッキリしている部分もありますし、現実に「時効援用で借金やローンを無くす」ことは、条件があえば可能です。

とはいえ、“ちゃんと理解しようとするのは、本当に難しい”話です。専門家も迷う部分があるのですから、私たちのような“ふつうの人”が、がんばって理解しようと思っても、わからないのは当然です。

ですので、自分であれこれ調べたり、悩んだりする前に、消滅時効の援用に強い弁護士・司法書士に、無料相談で話を聞いてみるほうが良いでしょう。

時効援用に強い弁護士・司法書士

 


※この記事で扱う民法は、2018年9月時点での現行民法となります。2020年施行予定の改正民法では、債権や時効に関する条文に改正が加えられているため、この記事の解説と異なる部分が生じる可能性があります。
ご自身の債務・債権の悩みに関しては、必ず、法律の専門家にご相談下さい。

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