時効援用ができる条件・できない条件…時効の中断事由・債務承認・時効援用権の喪失

投稿日:2018年9月27日 更新日:

この記事では、「時効援用ができる条件・できない条件」について、解説をお届けしていきます。

時効援用とは、簡単に言えば、借金やローンなどの返済を、「消滅時効」によって、帳消しにできる制度です。
最後の取引から5年以上たっている場合、この手続きを行うことで、返済の約束そのものを消滅できる可能性があります。

「お金を返す約束そのものが無くなる」ので、ブラックリストにならずに、返済をナシにできるなど、メリットもたくさんあります。

こう聞くと、

「すぐにでもやりたい!」
「私もやりたい!」

と思えますよね。
だれだって借金を返すのは大変ですから、自然な気持ちです。ですが実際には、時効援用は、“だれでも簡単に今すぐできるもの”ではありません。

消滅時効の援用には、複雑な「できる条件」「できない条件」があるからです。どんな条件があるのか、詳しく見ていきましょう。

★たいへん複雑な、法律の話です。弁護士や司法書士の無料相談もご活用下さい

いまから解説をお届けするのは、たいへん複雑な、法律の話になります。内容もとても長く、読んで理解するのは、簡単ではありません。

弁護士や司法書士でも、この分野に詳しくない先生なら、頭を抱えてしまうような話です。私たち一般人が、「よくわからない」のも当然です。

ですので、少しでも「難しい」と理解に詰まったら、無理をせず、時効援用に詳しい弁護士・司法書士・行政書士に、無料相談で話を聞いてみて下さい。
特に、ご自身の借金返済などについて、時効援用をしたい方は、かならず無料相談を利用してみましょう。

時効援用に強い弁護士・司法書士

時効援用できる条件は「いつから」「何年?」時効期間と起算点の考え方

まず、「いつから何年で時効なの?」という、一見するとシンプルな条件がありますね。

「いつから?」⇒時効の起算点
「何年で?」⇒時効期間

と、専門用語では呼ばれています。


この話はとても難しい仕組みになっており、さらに今後、法律が変わることも決まっています。ここで解説すると大変長くなってしまうので、次の記事で詳しくお伝えしていきます。

詳しい仕組みはともかくとして、要点だけをまとめると、

現行法では、最終取引から5年または10年
現行法では、借りた相手により異なる
改正後の法律では、「5年になる条件」「10年になる条件」が変わる

といった事になります。

時効援用ができなくなる条件:債務の時効の中断事由

さて、詳しい仕組みはともかく、「5年または10年経てば、借金は時効援用できる(返さなくて良くなる」という事なのか…と言うと、実は単純にそうとも言えません。

時効には、「時効の中断事由」というものがあります。
これに当たる出来事がおきると、時効の起算点…つまり、「いつから?」というカウントが、リセットされてしまうのです。


時効援用に詳しい、ウィズユー司法書士事務所の奥野正智司法書士による、わかりやすい解説をご紹介します。

▶サラ金等の債権者が裁判所に請求の訴訟を起こした時は、時効期間が10年延長します。
▶サラ金等の債権者が裁判所に差押え、仮差押え、仮処分をした時は、時効期間が10年延長します。
▶サラ金等の債権者に借金の事実を承認した時は、時効期間が5年延長します。
上記事由に該当する場合は、今までの時効期間がリセットされ、新たに時効期間がカウントされることになります。

出典:ウィズユー司法書士事務所 消滅時効相談所

なお、上記の解説では、「サラ金等の債権者に」とされていますが、相手はサラ金に限りません。

  • 銀行、信用金庫、信用組合
  • 消費者金融
  • クレジット会社
  • 信販会社
  • 債権回収会社
  • 法律事務所

…など、返済を受け取る権利(債権)を持っている相手なら、どこでも同じです。

それでは、時効の中断事由にあたる3つのポイントについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

時効の中断事由1:裁判上の請求(民法149条~152条)

まずは、「裁判上の請求」です。
裁判、支払督促、少額訴訟など、要するに“裁判所に訴えられる”ことですね。

相手から、返済を求めて裁判所への訴えを起こされると、時効の中断が発生して、時効期間がリセットされてしまいます。

判決を取られると、時効期間が10年に延びる

この「裁判上の請求」で時効が中断し、さらに判決を取られてしまうと、時効期間が10年に延びてしまいます。(民法第174条第2項)

「時効期間が5年」という借金でも、判決を取られると、「時効期間が10年」と、倍になってしまうわけです。
しかも、これは“判決を取られてから10年”となります。(民法第157条第2項)

知らない間に判決が取られていることも…「公示送達」「郵便に付する送達」

「裁判なんか起こされた記憶がないから大丈夫」

という方も、実は油断はできません。
裁判所の手続きには、「公示送達」「郵便に付する送達」という仕組みがあるからです。

この仕組みが使われると、知らないうちに“訴状が届いたこと”になってしまい、自分がまったく知らないうちに、判決が取られてしまう恐れがあります。

内容証明郵便による督促状・催告書でも、時効が中断する事がある

裁判上の請求ではなく、内容証明郵便による督促や催告でも、時効が中断することがあります。

内容証明郵便による督促や催告は、“それだけ”では時効を中断させません。しかし、こうした書類が送られてから、6ヵ月以内に訴訟や支払督促などを起こされると、時効中断の効力が発揮されます。

時効の中断事由2:差押え・仮差押え・仮処分(民法第147条第2項)

相手によって、「差押え・仮差押え・仮処分」を裁判所に申し立てられた場合も、時効期間のカウントがリセットされてしまいます。

これは、住宅ローンなどの「担保付き債権」に、当てはまるでしょう。住宅ローンの債権者(銀行など)が、競売の申し立てを行った場合、その時点で時効が中断されます。

複雑な法的手続きが関係しますので、詳しくは、弁護士や司法書士にご相談下さい。

時効の中断事由3:債務承認(民法第147条第3項)

時効期間のカウントをリセットしてしまう、「時効の中断事由」。3つめは、「債務承認」です。
ウィズユー司法書士事務所の解説では、「借金の事実を承認した時」となっています。もう少し具体的に見ていきましょう。

「ちょっとした一言」で時効が援用できなくなる

「債務承認」というと、難しい手続きのように思えますが、実はとてもシンプルです。ちょっとした一言を、“ただ言っただけ”でも、債務承認になって時効が中断されてしまいます。

しかも、「はい、私には借金があります」といった、ハッキリした言葉だけではありません。

たとえば…

「ちょっと返済を待ってください」
「今は払えません」
「1000円だけなら何とかなります」

…など、“返済があることを理解している発言”や、“返済がある前提での発言”も、すべて債務承認になってしまいます。

電話もメールも、相手に直接連絡してはいけない

この“債務承認”があるため、消滅時効の援用をする場合、「相手に直接連絡してはいけない」とされています。
消滅時効に強い、アルスタ司法書士事務所の大塚勇輝先生による解説をご覧下さい。

債権者に直接連絡してはいけません!
サラ金や債権回収業者(サービサー)、債権回収代行を行っている法律事務所からの書類等に驚いてしまい、直接連絡をしてしまうと時効の中断事由に該当してしまい、消滅時効の援用ができなくなることがありますのでご注意下さい。
法律事務所はもちろんのこと、サラ金や債権回収業者(サービサー)、相手は回収のプロです!

出典:アルスタ司法書士事務所-消滅時効相談センター

督促状や催告書、法的手続き執行予告、最終通告…etc、取り立ての郵便には、

『期日までに必ず、下記連絡先までご連絡下さい』

という文章が入っています。
しかし、急な督促にあわてて、言われるままに連絡すると、“債務承認”によって時効が中断されてしまう恐れがあるのです。

★自分で対処せずに、弁護士・司法書士・行政書士に無料相談を

時効援用ができなくなる事を防ぐためにも、取り立てに対して、「自分で対処しない」「自分で電話しない」ことが重要です。

昔の借金について督促状や催告状が来たり、取り立てを受けたら、すぐに弁護士や司法書士に相談しましょう。

時効援用に強い弁護士・司法書士

「知らなかった」が通用しない!時効援用権の喪失

さて、ここで少し疑問があります。
先ほどの債務承認ですが、「知らなかった」場合も、やはり時効援用ができなくなるのでしょうか?

たとえば、こんなストーリーを想像してみましょう。

Aさんは、昔の借金について、債権回収会社からいきなり督促状を受け取りました。遅延損害金もあわせると、とても払いきれない金額に膨れ上がっています。
驚いたAさんは、督促状に書かれている連絡先に、慌てて電話してしまいました。

-Aさん:
「こんなの知りませんよ!もう昔の借金でしょ?それにこんな金額、とてもじゃないけど払えません」
「せめて分割にするとか、遅延損害金をまけてもらう事ってできないんですか?」

しかし、債権回収会社は「ダメです」としかいいません。
途方に暮れたAさんは、借金問題に強い司法書士に、ネットで無料相談をしました。
すると…

-司法書士:
「Aさん、あなたの借金はもう時効になっていますよ。時効援用をすれば、返済をゼロ円にできたでしょう。ただ…、相手に電話してしまって、債務承認が生じていますね。
「なので、残念ですが、消滅時効の援用はできません。債務整理に切り替えて、すぐに対処しましょう。」

-Aさん:
「時効援用?債務承認?そんなの私、ぜんぜん知らなかったです!知らずに言っちゃっただけです。でもダメなんですか?

このお話のポイントは、2つあります。

:Aさんは、時効援用も債務承認も知らなかった。時効になっている事も知らなかった。

:Aさんが債務承認をしてしまったのは、時効期間が過ぎた後だった。

こうした状況で発生してしまうのが、「時効援用権の喪失」です。

時効期間が過ぎた後の債務承認は、「時効援用権の喪失」を招く(最高裁昭和41年4月20日判決)

実は、先ほどのAさんのような事例は、実際に起こった事があります。そして現実に裁判での争いとなり、最高裁判所まで行きました。その決着を下したのが、最高裁昭和41年4月20日判決です。

民法判例百選第8版を参考にした、わかりやすい解説をご紹介します。

では、時効援用権者(である債務者)が《時効の完成を知らずに》債務の承認をしたり弁済をしてしまった場合、どうなるのでしょう?

(…中略…)

判例も、このような場合、信義則上、もはや債務者は時効の援用をすることはできない、としています(時効援用権の喪失)。

出典:民法のブログ 総則物権編

一言でまとめれば、

「知らなかった、は言い訳にならない」

ということです。
これによって生じるのが、「時効援用権の喪失」です。

これは、「時効援用をする権利を失う」という事で、つまり、以降何年たっても、(その債務については)絶対に時効援用ができなくなってしまう事を意味します。

先ほどのAさんの事例では、「債権者(相手)に電話してしまった」ために、「時効援用ができなくなってしまった」わけですね。

時効援用権の喪失=今後、何年たっても時効援用できない理由

「借金には時効があるのに、時効援用がずっとできなくなるなんて、おかしい」

という声もありそうですね。
この理由は、以下の3つの法律・法理によって導かれています。

民法第146条の反対解釈
民法第1条2項「信義則」
禁反言の法理(エストッペルの法則)

たいへん専門的な話になるので、詳しく知りたい方は、弁護士や司法書士に問い合わせたり、民法判例百選などをご覧になってみて下さい。

ただ、簡単にまとめてしまえば、考え方はとてもシンプルです。

「知らなかったとしても、債務承認をしているのだから、『時効なの?じゃあ、やっぱり払うのやめます』というのはダメ」

ということです。

時効援用はできなくても、債務整理はできる

さて、時効援用権を喪失してしまうと、その債務については、何年たっても時効援用ができなくなります。

しかし、債務整理(任意整理、個人再生、自己破産、特定調停)での減額や免除は期待できます。

先ほどのAさんの例で言えば、

「せめて分割にするとか、遅延損害金をまけてもらう事ってできないんですか?」

…という発言がありますが、これは「任意整理」で十分にできる可能性があります。

サラ金等の債権者の消滅時効が成立していなかった場合、任意整理・自己破産・個人再生などによる解決を検討します。
出典:ウィズユー司法書士事務所 消滅時効相談所


ですので、時効援用ができない、時効援用権の喪失をしてしまった…という場合でも、借金そのものが解決不能になったわけではありません。

「どんな借金でも、絶対に解決する方法はある」

という事に、変わりはないのです。

時効援用権の喪失を防ぐためにも、早めに弁護士・司法書士に相談を

しかし、せっかく消滅時効の援用ができたはずなのに、相手に連絡してしまい、時効援用権が喪失してしまった…となったら、やはりガッカリしますよね。

時効援用権の喪失を防ぐためにも、また「時効の中断」でリセットされるのを防ぐためにも、時効援用は、「早めに弁護士・司法書士に相談する」ことが重要です。

銀行、サラ金、債権回収会社など、相手に直接連絡せず、すぐに、味方になってくれる弁護士・司法書士に相談してみましょう。

★この記事でご案内した司法書士に無料相談できます

時効援用に強い弁護士・司法書士・行政書士への無料相談窓口を、次のページで取りまとめています。

ここまで参考にしてきた、「ウィズユー司法書士事務所」「アルスタ司法書士事務所」も、時効援用の無料相談を受け付けています。

この記事をお読みいただいて、「参考になった」という方も、「よくわからない」という方も、ぜひ一度、無料相談を利用してみて下さい。

時効援用に強い弁護士・司法書士

 


※この記事で扱う民法は、2018年9月時点での現行民法となります。2020年施行予定の改正民法では、債権や時効に関する条文に改正が加えられているため、この記事の解説と異なる部分が生じる可能性があります。
ご自身の債務・債権の悩みに関しては、必ず、法律の専門家にご相談下さい。

参考:
民法第174条第2項
民法第157条第2項
民法第147条第2項

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