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この記事では、債務の消滅時効の援用とブラックリストについて解説していきます。
「時効援用をするとブラックリストになるの?」
「滞納があると、時効援用をしてもブラックリストは解除されないの?」
といった疑問にお答えしていきます。
消滅時効の援用をしても、ブラックリストにならない
まず最初のポイントとして、「借金の消滅時効の援用をしてもブラックリストにならない」という事をご説明します。
時効援用は、借金や各種ローンなどの返済を、「時効」でゼロ円(帳消し)にする手続きです。これは、「借金が返せないからゼロ円にしてもらう」という事ではありません。
“債権者が、「返済を受け取る権利」を一定期間行使してこなかったので、その権利を消滅させる”
という法的な仕組みにもとづいています。この仕組みを消滅時効といい、民法第7章第3節などによって規定されています。
こうした消滅時効の援用の仕組みについては、次の記事で詳しく解説しています。
複雑な仕組みがあるのですが、平たく言ってしまえば、「ちゃんと督促を行わなかった債権者が悪い」ということです。債務が時効になるのは、債務者である私たちのせいではないので、ブラックリストにもならないわけです。
消滅時効の援用をすると、ブラックリストは消えるのか
それでは逆に、時効援用をすると、ブラックリストは消えるのでしょうか?
その答えを知るために、まずは簡単に、「ブラックリストとは何か」というポイントをおさえておきましょう。
ブラックリストとは何か
ほとんどの場合、時効の援用ができる人は、過去に滞納があって、そのせいでブラックリストになっているでしょう。
より正しく言えば、個人信用情報機関に滞納が記録され、そのせいでお金を借りられなかったり、クレジットカードなどの審査に通らないような状況です。
個人信用情報に、滞納などの“よくない記録(事故情報)”が残っている状態が、ブラックリストの正体です。そのため、この事故情報が抹消されれば、ブラックリストも解除されます。
時効援用をすると、ブラックリストは解除されるのか
ブラックリストは、言うなれば「返済の記録」です。
そして時効援用は、「返済する約束(債務)そのものを消してしまう」強力な効果を持っています。返済自体が消えるのですから、返済に関するブラックな情報も、消してもらいたいですよね。
実際には、個人信用情報によって、消滅時効援用をした場合の対応は異なります。個人信用情報を取り扱う「個人信用情報機関」は、3つの機関があります。
全国銀行個人信用情報センター(JBAや全銀協、KSC) | おもに銀行などが加盟しています。 |
日本信用情報機構(JICC) | おもに消費者金融、信販会社などが加盟しています。 |
シー・アイ・シー(CIC) | おもにクレジットカード会社、信販会社、リース会社などが加盟しています。 |
時効援用がされた場合、記録をどうするかは、それぞれの機関によって対応が異なっているようです。
消滅時効の援用をした時の、個人信用情報機関の対応
それでは、3つある個人信用情報機関ごとの対応、ブラックリストがどうなるのかを、具体的に見ていきましょう。
個人信用情報機関は、加盟企業からの報告を受けて、個人信用情報の記録を行います。時効援用の場合も同じで、あなたの相手業者(債権者)が、個人信用情報機関にどう報告するかで、信用情報がブラックリストになるかどうなるかも変わります。
時効の援用に強い司法書士・行政書士報告をもとに、表にまとめました。
報告内容/ | JICC | CIC | 全銀協 |
「時効援用」 | 記録ごと削除 | 記録ごと削除 | 不明 |
「完済」 | 「完済」と記録 | 不明 | 不明 |
「契約終了」 | 不明 | 「契約終了」と記録 | 不明 |
「貸し倒れ」 | 不明 | 「貸し倒れ」と記録 | 不明 |
報告なしだと… | ブラックリストのまま | ブラックリストのまま | ブラックリストのまま |
(※いなげ司法書士・行政書士事務所の解説を元に当サイト作成)
この表は、一番左の列が「加盟企業からの報告」になっています。加盟企業がどういう形で報告するかにより、個人信用情報機関の対応も異なるからです。
また、個人信用情報機関の対応は、公式に公表されていません。そのため、「不明」となっている所も多くあります。
全銀協の対応方針は、ほとんど不明です。しかし、時効援用が適切に報告された場合、何らかの対応がなされると考えられます。
JICCの場合、ブラックリストがすぐ解除される可能性もある
消滅時効の援用でブラックリストがどうなるかは、専門家によってさまざまな証言がされています。「ふくだ総合法務事務所」は、次のように証言しています。
大手信用情報機関のJICCの扱いでは、時効の援用があった場合、その時点でそれまでの数年間の延滞による事故情報が抹消されてきれいになります。(時効の起算日に遡って完済情報が上がるため)
JICCは、主にサラ金(消費者金融)やクレジットカード会社などが加盟しています。こうした所からの借金は、時効援用で、すぐにブラックリストが解除される可能性もありそうですね。
即時解除~5年ほどで解除…ブラック記録が消えるまで
個人信用情報機関ごとの対応の違いや、「加盟企業がどう報告を上げるか」による違いもあり、時効援用でブラックリストがいつ解除されるのかは、はっきりとは言えません。
一言でまとめれば、「即時解除の可能性もあるが、5年ほど待つ場合もある」と言えるでしょう。本当に幅が広いので、ハッキリしたことは言えません。
消滅時効の援用をしてもブラックが解除されない?原因と回避する方法
実は、やり方を間違えてしまうと、時効の援用をしても、「ブラックリストが解除されない」という事もあります。
「時効援用をされたら、ブラックリストを必ず解除しなさい」
「時効援用をされたら、個人信用情報を消しなさい」
といった法律は無いからです。
これを防ぐためには、消滅時効援用通知書などで、債権者に対して「個人信用情報機関に、適切な報告を上げるように要求する」事が重要になります。
自分で時効援用通知書を作って、送ってしまった
時効援用に不慣れな弁護士や司法書士・行政書士を頼ってしまった
…といった場合、この点を見落として、「消滅時効の援用をしたのに、いつまで経ってもブラックが解除されない」となりかねません。
時効の援用をされた事を、“隠したがる”業者もある
もっとも理想的なのは、債権者に、きちんと「時効援用」と個人信用情報機関に報告させることです。これができれば、ブラックリスト即時解除の可能性もあります。
しかし、債権者(金融業者など)も、「時効援用をされてしまった企業」と見られるのは、恥ずかしいでしょう。「わが社は、債権回収がきちんとできませんでした」と言うのに等しいからです。
そのため、あの手この手を使い、「貸し倒れ」など別の言葉を使ったりして、消滅時効の援用された事を隠そうとする業者もあります。
債権者に、“ちゃんと報告させる”だけの力が必要
ブラックリストの解除や、個人信用情報の抹消は、時効援用の強制的な効果ではありません。
強制力がないからこそ、債権者(金融業者など)に対し、「時効援用を受けたことを、個人信用情報機関に、適切に報告させる」ことが必要になります。
これは、力関係の問題にもなってきます。
一般の私たちや、あまり知られていない地元の弁護士・司法書士・行政書士では、こうした力は期待できません。
一方、時効援用で名前の知られている、全国対応の弁護士・司法書士・行政書士であれば、話は違います。
債権者も、こうした所とは争いたくありません。そのため、「きちんと個人信用情報機関に報告して、ブラックリストを解除しよう」という判断になっていくでしょう。
ブラックリストを解除するためにも、消滅時効の援用は、全国対応の弁護士・司法書士・行政書士に頼みたいですね。