[PR]
この記事では、時効援用のデメリットとメリットについて解説します。
時効援用(債務の消滅時効の援用)は、借金などの返済を、時効で帳消しにする手続きです。条件を満たしていれば、返済が一気にゼロ円にできると言っても良いでしょう。
ですが、「そんなに都合の良い話ばかりなの?」と、逆に不安になりそうですよね。
そこで今回は、時効援用のデメリットとメリットを、公平に見ていきたいと思います。
「借金の消滅時効の援用」のメリット
まず、時効援用のメリットを見ていきましょう。
時効援用に詳しい「ふくだ総合法律事務所」は、次の3つのメリットを指摘しています。
業者からの返済督促が無くなる
返済をしなくてよくなる
信用情報機関の事故情報が抹消される
この3つについて、もう少し詳しい解説を行っていきます。
返済督促がなくなる(取立てがストップする)
これは、弁護士や司法書士・行政書士などに、借金解決を依頼した場合のメリット…と言い換えても良いでしょう。「受任通知」の発効により、時効援用の成果に関わらず、依頼しただけで、取り立てがストップする仕組みになっています。
また、もちろん時効援用がうまくいけば、“返済の約束そのものがナシになる”ので、取り立ても以降行われなくなります。
返済をしなくてよくなる
時効援用に成功した場合、その借金(債務)は、以降、一円も払わなくて良くなります。時効援用の効果で、“返済の約束(債務)”の存在そのものが消滅するからです。
信用情報機関の事故情報が抹消される(ブラックリスト解除)
これはあまり知られていない、時効援用のメリットかと思います。
実は、消滅時効の援用に成功すると、「一気にブラックリストが解除される」ケースがあります。
大手信用情報機関のJICCの扱いでは、時効の援用があった場合、その時点でそれまでの数年間の延滞による事故情報が抹消されてきれいになります。(時効の起算日に遡って完済情報が上がるため)
同じく大手信用情報機関のCICの扱いでは、時効の援用があった日をもって「完了」という情報が載り、そこから5年経過すると、すべての事故情報が消えます。
ブラックリストは、「個人信用情報機関」という所で管理されている、借金返済などに関する記録です。個人信用情報機関には、JICC、CIC、全銀協(JBA)の3つがあります。
このうちJICCの扱う情報に関しては、
“時効の援用があった場合、その時点でそれまでの数年間の延滞による事故情報が抹消されて、きれいになる”
という事ですね。
また、他の個人信用情報機関にも、しっかりと「完了」の記録になります。過去の滞納の記録も、一定期間が経てばキレイになります。
★サラ金・クレジットカード等の借金は、時効援用できれば即・ブラック解除の可能性大
JICCに関して言えば、一定期間を待たずにブラックリストが解除されるわけですから、これは非常に大きなポイントです。
JICCは、消費者金融や信販会社・クレジット会社が主な加盟企業です。こうした所の借金(サラ金・クレジットカード等)は、時効援用ができれば、すぐにブラックリストが解除できる可能性が高そうですね。
「借金の消滅時効の援用」のデメリット
続いて、時効援用のデメリットも見てみましょう。
時効援用のデメリットについては、詳しい人の間でもいろいろと意見がわかれています。というのも、実際には、「これといって大きなデメリットが無い」からです。
大きなデメリットが無いので、小さな部分で、「これはデメリットと言えるのではないか?」という意見の違いがあるのですね。
そうした曖昧な部分があることも踏まえつつ、「デメリットと言えそうな部分」を挙げていきましょう。
大きなデメリットは、特にない
繰り返しになりますが、時効援用には、債務者(時効援用をする側)にとって、これといったデメリットはありません。
ブラックリストにならない(むしろ解除される)
自己破産と違い、財産の処分・清算などもない
周囲に知られる(バレる)こともなく、官報にも掲載されない
…など、大きなデメリットが本当にない仕組みと言えます。
条件を満たしていなければ、利用できない
あえてデメリットを挙げるとすれば、この点になるでしょう。
時効援用には、さまざまな条件があります。
時効の起算点から、一定期間(5年または10年)が経過していること
相手が対抗要件を備えていないこと
時効援用権を喪失していないこと
…といった条件です。
詳しくは、次の記事で解説していきます。
厳格な法律で定められており、仕組みを理解するのが、とても難しい
もう一つデメリットを挙げるなら、「仕組みを理解するのが、とても難しい」という点もあります。
民法、商法などの法律がいくつも関係していきますが、法律の条文をどう解釈するかによって、専門家の間でも意見がわかれている部分もたくさんあります。とはいえ、現実に時効援用を行う分には問題ありません。
ただ、「自分で勉強して、自分で時効援用を行おう」と考えると、とてつもなくハードルが上がってしまいます。
そのため、「時効援用をしたい」と思う場合、弁護士や司法書士・行政書士などに相談する必要があるでしょう。
なぜ時効援用には大きなデメリットが無いのか
ここからは余談になりますが、なぜ時効援用には大きなデメリットが無いのか、その理由を考察していきたいと思います。
恐らくこれは、時効援用の法的な論理構成に由来があるものと思われます。
勘違いを招きやすいのですが、時効援用は、借金が返せない人を助ける制度や、借金解決のための制度…というわけではありません。
“債権者が、その権利を一定期間行使しなかった場合、権利を消滅させることができる”というのが、債務の消滅時効の援用を、より厳密に示す説明となります。
つまり時効援用とは、債権者に対して、
「法的な督促・債権回収を行う権利を持っているのに、それを何年も使わなかったのだから、その債権はもう不要ですよね?」
…といって、債務(返済義務)を消滅させる論理構成だと考えて良いでしょう。
大袈裟に言ってしまえば、「権利を行使しなかった債権者が悪い」のですから、債務者にペナルティ(のようなもの)を科す必要もないのです。
そうした理由から、時効援用には、大きなデメリットが設けられていないのだと思います。
ただ、このように時効援用は、「債権者の法的権利」と「債務者の法的権利」をどうするか…という、難しい権利問題でもあります。しっかりした法的知識や、過去の判例に関する知識、そして実務経験が大切になります。
ですので、「時効援用をしたい」と考える場合、自分一人で対処せず、かならず弁護士・司法書士や行政書士にご相談下さい。