[PR]
この記事では、「自己破産すると保証人・連帯保証人にどんな影響が出るのか」といった話を解説していきます。
- 保証人
- 連帯保証人
- 連帯債務のローン
…など、「自分以外のだれかが、契約に関わっている借金」での、自己破産の場合の注意点となります。
保証人・連帯保証人、共有名義・連帯債務とは
まずは、保証人・連帯保証人、共有名義・連帯債務について、かんたんに解説します。
保証人と連帯保証人
まず、保証人と連帯保証人の違いを見てみましょう。
短くまとめると、次のようになります。
連帯保証人 | 主債務者(借りた本人)の返済能力に関わらず、請求・督促を受ける可能性がある |
保証人 | 主債務者(借りた人)が返せなくなった場合にのみ、請求・督促を受ける |
詳しい解説は、以下の記事でも行っています。
共有名義・連帯債務とは
共有名義 | ある財産の所有権を、複数の人で共有すること。たとえば、ローンを組んで買った家を、夫婦ふたりの持ち物として、共有名義にするなど。 |
連帯債務 | 複数の人が、同じ返済義務を負う借金のこと。住宅ローンのフラット35などが当てはまります。 |
保証人・連帯保証人、共有名義・連帯債務…それぞれ立場が微妙に異なる
このように、「保証人・連帯保証人」「共有名義・連帯債務」といっても、それぞれ微妙に立場が異なってきます。
大まかに共通点を言ってしまえば、
“複数の人が関係する、財産や借金”
という点でまとめられるでしょうか。
こうした状況で自己破産をすると、「自分一人だけ破産すれば全て解決」という話ではなくなってしまう事も多くなるので、注意が必要です。
もう少し具体的に、それぞれの場合について見ていきましょう。
保証人・連帯保証人がいる場合の自己破産
まずは、保証人または連帯保証人がいる借金の場合です。
身近な例としては、次のようなものが当てはまるでしょう。
- 自動車ローン
- 一部の住宅ローン(プランや金融機関による)
- 賃貸住宅の契約
- 未成年による携帯電話の契約
- 奨学金の借入(人的保証の場合)
自己破産すると保証人・連帯保証人に請求が行われる
保証人の責任は、民法第446条第1項によって、次のように定められています。
【第446条第1項 保証人の責任等】
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
簡単に言えば、「借りた本人が返せなくなったら、保証人が返済する責任がありますよ」ということです。
そのため、借りた本人が自己破産すると、「借りた本人はもう返済できない」こととなり、保証人に対して請求が行われます。
これは、連帯保証人の場合も同じです。
連帯保証人は、本人(主債務者)の返済能力にかかわらず、請求を受ける可能性がある立場です。
ですから、本人が自己破産=返済不能となれば、なおさらのこと、連帯保証人に対して請求が行われるでしょう。
連帯債務のローンや借金を自己破産する場合
つづいて、連帯債務の場合です。
連帯債務は、二人以上の人が、おなじ返済義務を負う借金です。
身近な例では、
- フラット35など、一部の住宅ローン
…が、当てはまる人が多いでしょう。
連帯債務者の片方が自己破産をするとどうなる?
たとえば、夫婦ふたりの連帯債務で住宅ローンを組んでおり、夫が自己破産することになったとしましょう。
この場合、「住宅ローンの返済は免除されるのか、それとも妻に一括返済請求が行われるのか」という疑問がありますね。
ネットを調べてみると、「妻(破産しなかったほうの連帯債務者)に一括返済請求」という解説が多いのですが、実はこれ、そう簡単な説明で済む話ではありません。
ネット上の解説は混乱だらけ…実際どうなるの?
この問題について調べてみたところ、ネット上の資料は、かなりの混乱だらけだとわかりました。
- 連帯債務と連帯保証人の話が混ざってしまっている
-
弁護士ドットコムなどの相談事例でも、「質問者は連帯債務について聞いてているのに、回答者は連帯保証債務として回答している」などの混乱が見られます。[6]
しかし、連帯保証と連帯債務は事実上、異なるものです。
- 連帯債務者の負担割合が定められているものとして解説されている
-
連帯債務者は、契約の内部的には各自の負担割合が設定されている場合もありますが、法的には、「各自が独立に全部の給付をすべき債務を負担」するものです(民法第432条)。[1]
こうした負担割合の取り決めについて法的にどう扱うかは、民法改正に際して、法務省内でも議論があったようです。[2]
- 破産法第104条(全部の履行をする義務を負う者が数人ある場合等の手続参加)の法解釈が諸説ある
-
「全部の履行をする義務を負う者が数人ある場合」とは、連帯債務を差すものと思われます。しかし、これについて定めた破産法第104条の解釈には、「口単位説」「総債権説」など諸説があります。[3][4][5]
- 民法第441条(連帯債務者についての破産手続の開始)と破産法第104条が食い違っている
-
連帯債務の破産については、民法第441条にも決まりがあります。しかし、この民法第441条と、同じく連帯債務の破産について定めた破産法第104条との間に食い違いがあり、よけいに事態がややこしくなっています。
この問題は法務省も把握しており、2020年の民法改正によって、同法第441条を削除することで解消が見込まれています。[2]
- ネット上の解説に混乱がある
- 法学者の間でも議論が続いている
- そもそも法律に不備がある
という、とてつもなく厄介な問題です。
そのため当サイトとしては、安易な言及は控えさせて頂きたいと思います。
連帯債務、連帯保証人、保証人…など、言葉は似ていても、背負っている責任はまったく違うものです。
しかし、これらの違いについて、私たち一般人は良く知らないのが当たり前。
「連帯保証人だと思っていたが、実際には連帯債務者だった」
「保証人だと思っていたら、連帯保証人だった」
…などのトラブルも、おそらく、たくさんあるでしょう。また、連帯債務の負担割合がどうなっているのか…等も、契約書を見ないとわかりません。
ですので、「あなたの場合はどうなるのか」については、弁護士・司法書士に契約書を見てもらい、判断してもらうのが一番理想的です。
連帯保証人や保証人、連帯債務者の家族を巻き込まずに破産はできる?
さて、いろいろと複雑な話もありましたが、家族が連帯保証人や保証人、連帯債務者になっている場合、「巻き込まずに自己破産」はできるのでしょうか?
結論から言えば、これは残念ながら、「何の影響もなし」とはいかないでしょう。
借りた本人ではないとはいえ、何かしら借金(債務)に対して責任を負う立場ですから、影響を避けて通ることは難しくなります。
離婚しても、連帯債務や保証人・連帯保証人の責務は免除されない
保証人、連帯保証人や連帯債務は、結婚(婚姻関係)とは、良くも悪くもいっさいの関係がありません。
「夫婦だから連帯保証人になった」とか、「夫婦で暮らす家だから、連帯債務でローンを組んだ」といった人も多いと思います。
しかし、私たちが「夫婦だから」という理由でそうしたとしても、契約上・法律上は、「夫婦であるかどうかは関係ない」となってしまうのです。
したがって、離婚をしても、それだけでは連帯保証や連帯債務、保証人などの関係は解消されません。
まずはこの大原則を念頭に置いておきましょう。
もし仮にあなたが夫(妻)と離婚して夫名義の自宅から出ていくことになったり、不動産名義を夫単独に名義変更して所有者が夫のみになったりしても、自動的に住宅ローンを組んだ時に負った「連帯債務」や「連帯保証債務」「保証債務」から解放されるわけではありません。
このことは、協議離婚の際に夫婦間で、口頭・離婚協議書・離婚公正証書などにより「離婚後は夫のみが債務(借金)を負担することとする」というような取り決めをしたとしても同じことです。
なぜなら、そのような離婚時の夫婦間の合意のみで返済義務を免れることができてしまうと、2人分の収入や財産をあてにしてお金を貸した銀行に対して、不測の不利益を与えてしまうことになるからです。
たとえば、あなたが
「連帯債務の契約をそのままにして、返済は元夫が一人で行う約束で離婚した。しかしその後、元夫が自己破産することになった」
といった場合を考えましょう。
この場合、連帯債務者である“あなた”に対して、ローン残債の請求が来る恐れがあります。
「離婚したからもう関係ない」「元夫が一人で返す約束だから」といっても通用しません。
夫婦関係に基づくものではなく、ローン契約(連帯債務)にもとづく請求だからです。
保証人・連帯保証人・連帯債務者などの家族を巻き込まずに破産する方法は
それでは、保証人・連帯保証人・連帯債務者などの家族を、巻き込まずに自己破産する方法はあるのでしょうか?
これは、「自己破産」となると少し難しいようです。
しかし、返済を解決(減額・免除)する手続きは、自己破産だけではありません。
他の手続きを使うことで、解決できる可能性もあります。
たとえば…
- 個人再生&住宅資金特別条項で、夫婦で連帯債務になっている住宅ローンだけを整理対象から外す
- 任意整理で、無担保・無保証のカードローンだけを整理する
…など、こうした方法で解決できるケースもあります。
実際には、人それぞれの債務の状況や、「どんな返済で困っているのか」といった悩みの背景によっても、解決方法は異なります。
「私の場合、どうすればいいの?」
といった悩みは、かならず弁護士や司法書士に相談し、診断を受けて下さい。
ただ、どんな場合であれ、“解決できない債務(借金・ローンなど)は無い”と言われています。
返済や支払いの悩みは、かならず解決できるものです。
いろいろな不安もあるかと思いますが、まずは気軽に、弁護士・司法書士に悩みを相談してみましょう。
脚注、参考資料
- [1]民法第442条(連帯債務者間の求償権)
- [2]民法(債権関係)の改正に関する論点の検討-法務省
- [3]Payment of part of a plurality of claim after the start of bankruptcy proceeding and the principle of existant claim amount at the start of bankruptcy proceeding ─ Two judgments of Supreme Court ─ Hiroshi NISHINAKAZONO
- [4]最判小三平成 22・3・16
- [5]破産法104条における口単位説の判例上の位置づけと関連する特約の効力について
鹿島久義 神戸学院法学第40巻第3・4号(2011年3月) - [6]連帯債務者が破産した場合どうなりますか。-弁護士ドットコム