個人再生の住宅資金特別条項とは?

投稿日:2019年5月7日 更新日:

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個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)について

この記事では、個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)について解説します。

この仕組みは、債務整理(借金減額)の一種類である「個人再生」の、少し特別なバージョンです。

「住宅ローンを返済中で、ほかの借金の返済でも悩んでいる」
「ほかの借金さえ減額できれば、住宅ローンの返済は続けられる」

といった方に向いている仕組みと言えるでしょう。
どんな仕組みなのか、ポイントをかんたんに解説していきます。

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の意味と必要性

まずは、

“「住宅資金特別条項」を使わずに、普通に個人再生をすると、住宅ローン返済中のマイホームはどうなってしまうのか?”

この問題を理解することで、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の必要性がわかります。
実際には難しい仕組みなのですが、わかりやすさを重視して解説していきます。

住宅ローンは、買った家が担保になっていることが多い

ほとんどの場合、住宅ローンを組むと、「そのローンで買った家を担保とする」契約になっているはずです。

言ってしまえば、「お金を払えなくなったら、借金返済の代わりに、家の所有権を没収しますよ」という約束です。
住宅や土地といった担保は、「抵当権」と呼ばれることが多いですね。

さて問題は、この状態…つまり、住宅ローンを返済中で、マイホームが住宅ローンの担保になっている状態で、個人再生を行った場合です。

個人再生は、原則では全ての債務を対象にします。
つまり、返済中の住宅ローンも、個人再生手続きを行うことで「返済できなくなりました」と言うことになってしまうのです。

すると、「返済できなくなったなら、担保権を実行し住宅を競売にかけますよ」という話になります。要するに、家の所有権が取り上げられしまうのです。

個人再生すると、住宅ローン返済中の家を手放すことに…回避するための「住宅資金特別条項」

マイホームは、家族の暮らしの基盤となる、大切なもの。
これを手放すのは、なるべく避けたいですよね。

そこで登場するのが、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」です。

この特殊なルールを適用すると、

「住宅ローン返済中のマイホームについては、住宅ローン返済を減額しないかわりに、手放さなくて良いですよ」

という事になります。
つまり、大切な家を守れるわけです。

マイホームの維持か、住宅ローンの減額か…住宅資金特別条項は「究極の二択」になりがち

単純に、「住宅ローン返済中の家があっても、担保で取り上げられない」と言えば、大きなメリットに思えますが…。
しかしこれは、「住宅ローン返済を個人再生の対象から外す=減額しない」という条件つきです。

ですので、「住宅ローン以外の借金があり、そちらを減額できれば、住宅ローンの返済自体は続けられる」という人でないと、現実的には難しいでしょう。

安易に考えてしまうと、住宅ローンの減額を取るか、それともマイホームの維持を取るか…そんな「究極の二択」にもなりかねません。

いろいろな返済減額のパターンを検討して、「無理のない計画」を立てることが重要

実際の検討にあたっては、

  • 住宅資金特別条項を適用する場合
  • 住宅資金特別条項を適用しない場合

…など、いろいろなパターンを事前にシミュレーションして、「どのプランなら無理なく返済できるか」「どのプランなら一番、暮らしを守れるか」といったことを、しっかり検討する必要があります。

住宅資金特別条項を使うかどうか…といった他にも、

  • 小規模個人再生を選ぶか、給与所得者等再生を選ぶか

…など、個人再生にはいろいろなバリエーションがあるので、そちらも合わせての検討となるでしょう。
さらに言えば、

  • 個人再生ではなく、自己破産を選ぶべきか
  • 一部の債務だけを減額できる任意整理との比較

…など、他の債務整理の方法とも比較検討が必要です。

こうした検討は、債務整理の詳しい知識と、家計の立て直しに関する専門知識が必要になります。
自分であれこれ考えても、とても答えは出せない問題です。

しかし言い換えれば、「いろいろな解決方法があり、自分に合ったものを選べる」ということでもあります。
弁護士・司法書士にしっかりと相談すれば、今思っている以上に「これなら人生をやり直せる!」と希望を持てる方法が、必ず見つかります。

今月の住宅ローンの引き落としに間に合わない…そんな場合も助かる“隠れたメリット”も

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)には、実はちょっとした“隠れたメリット”もあります。

たとえば、こんな状況を考えてみましょう。

「住宅ローン返済も、ほかの借金の返済もあって、もう生活がギリギリ…」
「今月の引き落としに、到底お金が足りない」
「今月の返済を払ってしまうと、生活費がなくなってしまう」

こうした場合です。

仮に「住宅ローン以外の返済を大幅減額できれば、住宅ローン返済は何とかなる」という見通しになったとしても…。

「引続き住宅ローン返済は行う必要があり、今月の生活がもたない」…という事態になるのでは、と心配される方もいるのではないでしょうか。

ですが、こうした事態は回避できるのです。

住宅資金特別条項を使う場合でも、住宅ローンの返済は「一旦停止」される

住宅資金特別条項を使うことになっても、実は、住宅ローン返済も、他の返済と同じように「一旦停止」されます。

個人再生を申し立てると、すべての返済が再生債権となり、“返済を行ってはいけない”状態になります。

【民事再生法第85条第1項 再生債権の弁済の禁止】

再生債権については、再生手続開始後は、この法律に特別の定めがある場合を除き、再生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。[1]

そしてここには、住宅ローンの返済も含まれます。
つまり、個人再生を申し立てると、「住宅ローンの返済も、その他の返済も、一時的にストップ」するわけです。

その後、住宅資金特別条項の適用が認められた場合は、裁判所による一部弁済許可を受け、約定どおりに返済していく事になります。(民事再生法197条3項)

手続き後に契約通り返していくことになるとしても、ひとまず今月の引き落としはストップ=生活費を確保できる見通しになります。

住宅資金特別条項は、“債務者にも債権者にもメリットがある”制度

さて、ここから先は少し豆知識の部分になっていきます。

読み進めて頂いても大丈夫ですが、実際に住宅ローン返済や借金返済でお悩みの方は、少し上に戻って、弁護士・司法書士への無料相談も忘れずに行って下さい。

それでは話を続けましょう。

住宅資金特別条項は、いわば「住宅ローンの債権者だけ、特別扱いする仕組み」です。法律は、平等・公平が大原則。“住宅ローンの債権者だけ特別扱い”は、なぜ許されるのでしょうか?

これについて、債務整理に詳しい弁護士が、このような解説をしています。

また,住宅ローンを支払えば,支払った分だけ抵当権の被担保債権額が減少し,その結果,住宅不動産の資産価値が上がることになります。
住宅の資産価値が上がれば,債務者の総財産の清算価値も上がり,債権者に利益を与える可能性が増えることにもつながります。

出典:個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは? LSC総合法律事務所

住宅資金特別条項を使い、住宅ローンを約定通りに返済することで…

①抵当権の被担保債権額が減少
↓ ↓ ↓
②住宅不動産の資産価値が上昇
↓ ↓ ↓
③債務者の総財産の清算価値が上昇
↓ ↓ ↓
④債権者の利益にもつながる(清算価値保証原則)

…ということで、仕組みはかなり専門的なのですが、結果としては“債権者にも債務者にも、全員にメリットになる”ということのようです。

個人再生は、“暮らしを立て直すため”だから

また他にも、「住宅は生活の基盤であり、これを維持することは、債務者の生活再建に資する」という理由もあります。

個人再生は、“返済が苦しくなった人の、暮らしを立て直す”ための制度です。

【民事再生法 第1条】

この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。[2]

この「暮らしを立て直す=生活再建」という目的が、法律の第一条にしっかりと書かれています。つまり個人再生は、生活再建を一番に考えて、仕組みが作られているのです。

だからこそ、暮らしの基盤である「家」を守るために、住宅資金特別条項も作られているのですね。

 

脚注、参考資料

-個人再生

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