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この記事では、個人再生と自己破産について、違いの比較を行っていきます。
自己破産も個人再生も、任意整理や特定調停とならぶ「債務整理」の手続きのうちのひとつです。
「自己破産」と「個人再生」は、
- 他の債務整理の手続きよりも減額効果が高い
- 大きな借金を抱えた人にとっては、返済を大きく減らせる
というメリットがあります。
しかし、個人再生と自己破産について詳しく調べてみると、仕組みが複雑で、違いを比較するのが大変になってしまいますよね。
そこで今回は、
- 「自己破産」「個人再生」について、その違いをより詳しく知りたい
- どちらを選べばいいのか知りたい
といった人のために、役立つ解説をお届けしていきます。
この記事はこんな人にオススメです
- 返済や支払いがつらくて、個人再生か自己破産を考えている
- 自己破産と個人再生について、それぞれの特徴はわかったけれど、比較した時の違いが知りたい
- 自己破産と個人再生、どちらのほうが自分にとって、よりお得なのか知りたい
なお、「個人再生や自己破産について、まだあまりよく知らない」という人は、以下の記事も参考にしてみてください。
まずは比較表!自己破産と個人再生は「何もかも違う」
まず最初に、自己破産と個人再生には、どんな違いがあるのか、簡単に表を見てみましょう。
自己破産 | 個人再生 | |
利用できる条件 | ・返済の見込みがないこと(支払い不能) | ・給与などの定期的な収入を得ていること ・債務の合計額が5,000万円以下であること |
法律の違い | 破産法 | 民事再生法 |
返済減額 最低弁済額 |
原則として、全ての返済が免除される。 | 負債総額により決まる金額(1/5~1/10程度)を基準とし、清算価値になどにより最低弁済額が変わる |
財産処分による精算 | 一定以上の財産がある場合、財産処分が行われる。 | 財産の処分は一切行われない。 |
免責不許可事由 | ギャンブル、浪費などの借金は免責不許可(ただし、実際には裁量免責で認められる場合も) | 特になし |
持ち家 | 精算される | 住宅資金特別条項により、ローン返済中の住宅を失わずに債務整理することが可能。 |
費用の相場 | 40万円~50万円 ※初期費用ゼロ円も可 |
20万円~30万円 ※初期費用ゼロ円も可 |
ほかにもまだまだ違いはありますが、主だったポイントで言えば、上記のようになるでしょう。
しかし、これだけ見ても、まだ「どちらがいいか」は、わからないですよね。
「個人再生のほうが費用が安いからいいのかな?」
「でも、自己破産じゃないと返済の全額免除はできないのか…」
…なんて一長一短もありますし、そもそも専門用語だらけで難しいですよね。
自己破産、個人再生…失敗しない正解はどっち?裁判所のアドバイス
「難しい解説やお勉強はもう十分!私は自己破産と個人再生、どっちを選べばいいのか教えて!」
という人もいるかと思います。
そこで、こうした疑問に対する、裁判所のアドバイスを見てみましょう。
破産申立てを考えている場合は,まず法律の専門家に相談することをお勧めします。
一般的に,弁護士に依頼をせずに,本人で日常の仕事に従事しながら,個人再生の申立手続を遂行していくことは,実際には相当難しいと思われますので,破産,調停,個人再生手続(「小規模個人再生手続」,「給与所得者等再生手続」のどちらを選択するか),弁護士による任意整理,のどの手続を選択するかも含めて弁護士会の相談窓口や司法書士などに相談したり,書類作成のアドバイスを求めることをお勧めします。
このように、どの裁判所でも、
「どんな手続きを使うかは、弁護士・司法書士(法律の専門家)に相談を」
としています。
個人再生も自己破産も、複雑な法律にもとづく、厳格な法的手続きです。そのため、一般の私たちでは、適切な判断を行うのが難しくなります。
また、実際に手続きを進めるにあたっても、本人で日常の仕事や生活をしながら行うのは“相当難しい(名古屋地裁)”ため…といった理由も挙げられています。
「自己破産」「個人再生」どちらを選べば?自由に選べない場合も…利用条件の比較
それでは、詳しい解説をはじめます。
まず最初の大切なポイントとして、“自己破産と個人再生には、それぞれ利用条件がある”というお話をしていきます。
利用条件がありますから、
「自己破産と個人再生、どちらにしようかな」
と自分で考えても、実際には、「自己破産しか利用できない」とか、「個人再生しか利用できない」といったことが起きてしまう場合もあります。
ですので、それぞれの利用条件の比較から見ておきましょう。
「自己破産」と「個人再生」の、できる条件の違い
自己破産と個人再生の、おおまかな条件は、次のようになります。
条件 | |
自己破産 | ・返済の見込みがないこと(支払い不能) ・浪費やギャンブルなどが原因の借金は免責不許可事由として、原則認められない (※裁量免責により認められる場合もある) |
個人再生 | ・支払不能になる恐れがあるとき ・給与などの定期的な収入を得ていること ・債務の合計額が5,000万円以下であること |
※裁判所 手続対比一覧等を基に当サイト作成
ただ、これだけ見ても、まだよくわからないですよね。
「支払い不能ってなに?」
「免責不許可事由なんてあるの?私の場合も自己破産できないのかな?」
「個人再生の“一定の収入”って、パート・アルバイトでも大丈夫なの?」
「個人事業主の売上は、“一定の収入”に含まれるのかな?」
…などなど、疑問は尽きません。
そこで、特に重要なポイントを絞って、解説をしていきます。
どちらも「支払い不能」に陥るまで自分を追い詰める必要はない
まず、自己破産・個人再生どちらの条件にも、「支払不能」という言葉が出てきますね。
- 自己破産:返済の見込みがないこと(支払い不能)
- 個人再生:支払不能になる恐れがあるとき
返済不能というと、「ギリギリまで頑張って、それでもダメだった」イメージもあるかと思います。
「借金返済のために、1日1食に減らしたり、寝る間も惜しんでアルバイトをして…それで身体を壊して借金返済不能になるまで頑張らなければいけないの?」
しかし、そんな風に自分を追い詰める必要はありません。
自己破産・個人再生それぞれの、「支払不能」について定めたところを見てみましょう。
自己破産の支払い不能
“弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態”(破産法第二条)
個人再生の支払い不能
“再生債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態”(民事再生法九十三条第1項)
比較すると、どちらも、「一般的かつ継続的に弁済することができない状態」という言葉が同じです。
つまり、身体を壊すような無理な返済を強いるものではなく、健康で文化的な生活を営みながら継続的な返済ができない状態であれば、「支払い不能」だと認められる可能性が高いという事です。
個人再生は、定期的な収入が必要
「支払不能」の条件は、どちらも基本的に同じだとわかりました。ですが、別の条件による違いもあります。
たとえば、個人再生には「定期的な収入」が必要になります。
個人再生は、「負債総額によって決められる金額」まで借金を減額し、3年~長くて5年で返済するという手続きです。
よって、“返済”することが必要なため、一定の収入があることが条件なのです。
ですから、主婦や求職中、無職といった無収入の人は、個人再生ではなく、自己破産を検討することになるでしょう。
自己破産は、個人再生と違って「免責不許可事由」がある
一方、自己破産には、「返済免除ができない(認められない)」とされる条件=免責不許可事由があります。
「ギャンブルで作った借金は破産できない」
「浪費でできた借金は破産しても返済免除されない」
…といった話を、2ch(5ch)や知恵袋などで、見かけたこともあるかと思います。
たとえば、ギャンブルが原因の借金は“免責不許可事由”にあたります。
(免責許可の決定の要件等)
破産法第252条第1項
裁判所は,破産者について,次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には,免責許可の決定をする。④ 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ,又は過大な債務を負担したこと
出典:破産法第252条第1項
- 収入に見合わない「浪費」が原因の借金
- パチンコやパチスロ、競馬、競輪、競艇といった「賭博(ギャンブル)」が原因の借金
- 株やFX、先物取引、仮想通貨、ソシャゲ課金といった「射幸行為」が原因の借金
こうした「免責不許可事由」に該当する借金は、原則として免責されません。
ですが実際には、「裁量免責」という制度で、免責不許可事由にあたる借金でも、自己破産が認められることもあります。しかし原則としては、このような「免責不許可事由」の決まりがあるのです。
個人再生は、自己破産と違って「免責不許可事由」がない
一方、個人再生には、免責不許可事由がありません。そのため、ギャンブルや浪費などの借金でも、減額が認められることになります。
「パチンコで作った借金で、自己破産しても免責不許可事由になる…裁量免責が認められるかわからない」
といった場合などは、個人再生のほうが選択肢になる場合もあるでしょう。しかし、個人再生にも「定期的な収入」という条件もありますから、兼ね合わせて判断する必要がありそうですね。
自己破産と個人再生はどちらがお得?「経済的負担」の違い…借金減額と財産の精算
次は、自己破産と個人再生の「経済的負担」の違いを見ていきましょう。
「経済的負担」というとカタい印象ですが、要するに、「減額効果を見ると、どちらがお得?」という話ですね。
実際には費用なども関係してきますが、ここでは“手続きの減額効果のちがい”に注目して、比較していきましょう。
自己破産と個人再生、経済的負担は比較すると“実は同じ”
「返済減額の効果といっても、自己破産は全額免除だから、自己破産のほうがお得なんじゃないの?」
という疑問もありそうですよね。
確かに、自己破産では返済が原則として全額免除されます。
一方、個人再生は、一定の基準に基づく減額です。
(個人再生の借金減額の効果について、詳しくはこちらをご覧ください)
しかし自己破産には、「一定以上の財産をもっている人は、その財産を精算(売却)しないといけない」決まりがあります。
そしてこの、
- 自己破産した場合に手放す財産
- 個人再生した場合に、減額後に残る(=返済することになる)お金
この二つを比較すると、どうなるのかが、この話のポイントです。
それぞれのルールは、次のようになっています。
- 自己破産では、一定以上の財産をもっている人は、その財産を手放さないといけない
- 個人再生では、「仮に自己破産をした場合に、手放すことになる財産の価値」と同じ金額は、最低限返済しないといけない(清算価値保証原則)
たとえば、あなたが「500万円の資産価値のある土地」を持っていると仮定しましょう。(なお、この土地は、自由財産に含まれないものとします。)
自己破産の場合:
⇒500万円の土地が清算される(売却されて債権者に配当される)
個人再生の場合:
⇒清算価値保証原則により、「最低弁済額(=借金の減額後に残る返済)」が500万円になる(自己破産で精算・配当する場合と同じ金額が最低弁済額になる)
つまり、“手放すものの価値”は、個人再生でも自己破産でも、どちらも変わらないのです。
※これはあくまでもザックリとした解説です。
個人再生は、財産の没収がない
個人再生は、自己破産と違い、“財産の没収がない”=“財産は精算(売却)されない”というメリットがあります。
手持ちの財産が没収されない代わりに、持っている財産の評価額(清算価値)は最低限返済しますよ、ということですね。
なお、この仕組みのことを、「個人再生の清算価値保証原則」と言います。
清算価値保証原則については、次の記事で詳しく解説していきます。
自己破産は、一定以上の財産は没収される
破産手続きは、一定以上の財産(自由財産に含まれない財産)がある場合、管財事件となり、資産が破産財団の中に組み込まれます。
そして、破産財団の中に組み込まれた財産を、債権者のために精算しなければなりません。
- 自動車
- 住宅や土地といった不動産
など、高額な資産は手放さなければいけないのです。
自由財産については、次の記事で解説しています。
家や車を守るなら、個人再生と自己破産どちら?担保権実行に要注意!
さて、先ほどの続きになります。
個人再生では、財産の清算(売却)はされない
という解説をしましたが、住宅ローンや自動車ローンを返済中の場合、注意しなければならないのが「担保権の実行」です。
担保というのは、「お金が返せなくなったら、肩代わりに○○を渡してもらいますよ」という、“契約”のことです。
- 住宅ローンの抵当権
- 自動車ローンの所有権留保特約
…といったものが、よくある例でしょう。
これは、自己破産や個人再生の“手続きの効力”ではなく、“ローン契約の効力”になります。
そのため、個人再生・自己破産どちらの場合も、「返済中の担保付ローン」がある場合、担保権の実行で、担保を取り上げられてしまう恐れがあります。
ただし、個人再生にはローン返済中の住宅を守るための「住宅資金特別条項」という制度もあるので、必ずしも住宅を競売にかけられ没収されるというわけではありません。
住宅ローンがあるなら個人再生の「住宅資金特別条項」で住まいを守れる
個人再生では、「住宅資金特別条項」=住宅ローン特則といった制度があります。
これは、返済中の住宅ローンを債務整理の対象からはずすことで、持ち家を失わずに債務整理ができるというものです。
住宅ローンがあるかないか、といったことが、「個人再生を選ぶか、自己破産を選ぶか」の判断基準になる人もいるでしょう。
ちなみに、個人再生の最低弁済額を決めるための総債務額は、住宅ローンを含めずに減額基準が定められているため、
住宅ローンを返済中の方が個人再生をすると、自動的に「住宅資金特別条項」が適用されるものと思われます。
個人再生と自己破産の、費用の相場の違い
自己破産と個人再生では、費用の相場も若干異なります。
個人再生では20万円~30万円、自己破産では40万円~50万円ほどが相場です。そのため、これ以下の借金返済で悩んでいる場合、より費用の安い任意整理や特定調停を使ったほうが良いでしょう。
また、費用は一見すると高額ですが、
- 費用を大きく上回る返済減額・免除が得られる
- 返済の悩みから解放される
- 生活を立て直せる
…といった点も考えると、決して無理な金額ではありません。
もちろん、今は「借金返済に追われていて、1円も余裕が無いのに、何十万円もの費用なんて払えない」と思えるでしょう。
しかし、債務整理に特化している弁護士・司法書士は、
初期費用ゼロ円、後払い・分割可
としているところもあります。
“費用を大きく上回る返済減額・免除が得られる”のが、個人再生や自己破産といった、債務整理の効果だということは、しっかり抑えておきたいポイントですね!