個人再生できない条件…非減免債権・一般優先債権・共益債権とは

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この記事では、債務整理の一種である「個人再生」について、できる条件・できない条件をまとめていきます。
個人再生は、原則として「すべての返済を5分の1~10分の1に減額する」手続きです。借金が返せない・払えない場合の解決方法として、強力な効果がありますが、誰でも無条件で利用できるわけではありません。

今回は、裁判所の資料[※1]などを元に、個人再生ができる条件・できない条件を見ていきましょう。

個人再生の条件(1):返済・支払が不能になる恐れがある時

まず一つ目の条件は、「返済や支払が難しくなる・不能になる恐れがある時」です。
問題なく返済できるのに、得をしたい・楽をしたい…といった理由で個人再生を利用することはできない、と理解して良いでしょう。

また、個人再生には細かく分けると、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」があります。どちらの場合も、この“返済・支払が不能になる恐れがある時」という条件は共通です。

滞納がなくても、“払えなくなりそう”で個人再生は可能

ここでのポイントは、支払や返済が不能になる“恐れがある”という事です。
つまり、今現在は滞納をしていなくても、今後滞納しそうだ、払えなくなりそうだ…といった事情がある場合は、個人再生ができる可能性があります。

給料が下がってしまった
子どもの進学があり、来年から教育費が負担になることが分かっている
親の介護で、フルタイムで働けなくなった

…など、今後の収入悪化や、避けられない出費の増加が見込まれている場合なども、個人再生の利用条件に当てはまるでしょう。

個人再生の条件(2):安定した収入があること

個人再生は、一定の金額は分割返済していく約束のもとに、返済の減額を行う手続きです。そのため、「一定の金額は返済できる」という根拠が必要になります。
その根拠となるのが、“安定した収入”です。

といっても、必ずしも正社員や公務員、フルタイムワークでなければいけない…という事ではありません。裁判所の資料によると、

継続的にまたは反復して収入があること(小規模個人再生)
給料や定期的な収入があり、その変動が少ない事(給与所得者等再生)

とされています。
アルバイトやパートの給料でも、ある程度一定した額を毎月受け取っていれば、「定期的な収入」とみなされるようです。

小規模個人再生の「継続的にまたは反復した収入」とは

「継続的にまたは反復した収入」は、小規模個人再生の条件となっています。
小規模個人再生は、個人再生の一種類で、主に個人事業主やフリーランス、小規模企業などを想定している手続きですが、サラリーマン(給与所得者)でも選ぶことができます。

事業主の場合、

「定期的に仕事をくれる取引先(お得意先・固定客)がある」
「先々の分まで受注が決まっている」
「月額制のサービスを提供しており、一定の契約者数が継続できている」

…など、売り上げの安定性がカギになるでしょう。

これはつまり、「事業を継続することが前提」とも言えます。
そのため、「もう事業を畳みたい」という場合、個人再生が難しくなる可能性もあるので、弁護士や司法書士とよく相談して、他の債務整理方法も検討してみましょう。

★専業主婦や無職の場合、個人再生は難しい

専業主婦や無職の場合、安定した収入が無いため、個人再生での返済解決は難しくなるでしょう。ですが、任意整理・特定調停・自己破産など、他の手続きが利用できる可能性があります。

また、個人再生は「最低でも100万円は返済する」という基準になっているため、収入が不安定な状態で、無理に個人再生を選ぶと、かえってデメリットが大きくなる心配もあります。

このように、人それぞれの状況によって、どんな債務整理の方法を用いるべきかは異なります。自分一人で判断することなく、債務整理に詳しい弁護士・司法書士に相談したほうが良いでしょう。

こんな債務は減額できない?個人再生の非減免債権・一般優先債権・共益債権

個人再生には、“減額できない債務”もあります。
その理由としては、

  • 非減免債権(民事再生法第229条)
  • 一般優先債権(民事再生法第122条1項)
  • 共益債権(民事再生法第119条)

といった規定があるのですが、これらは複雑な概念(考え方)になっているため、まずは結論から見ていきましょう。
結果として、どんな債務が減額できないのか、主な例をリストアップしていきます。

税金・保険料など(公租公課)や罰金(一般優先債権)
これは個人再生だけでなく、他の債務整理でも減免できない性質になっています。

個人再生開始後の水道光熱費や家賃など(共益債権)
整理対象から外されることで、家を追い出されたり、ライフラインを止められるリスクが無くなっています。(民事再生法第49条4項)

光熱費のうち過去6か月分の滞納(一般優先債権)
一般優先債権として、減免されない事になっています。

個人再生開始後の養育費(共益債権)
養育すべき子供や家族の暮らしを守るためだと考えられます。

個人再生委員への報酬の支払い(共益債権)
手続き上、必要な債務となります。

事業主の場合、事業の継続のために必要な債務(共益債権)
個人再生が原因で仕事が成り立たなくなるのを防ぐためと考えられます。個人再生は、“収入を継続させること”が重要だからです。(民事再生法第85条5項)

事業主の場合、従業員への給与や賃金(一般優先債権)
未払いの給与や賃金も、従業員に対する債務となりますが、これは事業継続に必要なこともあり、免除されません。

一部の損害賠償(非減免債権)
悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、故意または重大過失による不法行為に基づく損害賠償請求権は、個人再生で減免されません。ただし、債権者の同意がある場合は異なります。

夫婦間の扶養、婚姻生活、扶養義務に関する債務(非減免債権)
非減免債権として定められています。一部の内容は、「共益債権」としても個人再生できないとされています。ただし、債権者の同意がある場合は異なります。

株や投資、ギャンブル、浪費などの借金は、個人再生で“減額できる”可能性あり

「株や投資、ギャンブル、浪費の借金は、破産しても免責されない」という話は、ご存知の方も多いかと思います。
これは、「自己破産の免責不許可事由」に当たることが理由です。

ですが、「自己破産の免責不許可事由」は、あくまで“自己破産”に適用されるルールです。個人再生や任意整理、特定調停といった、他の債務整理には適用されません。

そのため、「株や投資、ギャンブル、浪費などの借金」でも、個人再生や任意整理、特定調停では、減額が認められる可能性があります。

★実際の返済の悩みについては、弁護士・司法書士にご相談下さい。

ここで解説した内容は、あくまで“主な事例”に過ぎません。
実際には複雑な原則があるため、必ずしも当てはまるとは限らないケースもあるでしょう。ご自身の債務について、個人再生できるかどうかは、必ず弁護士や司法書士の診断を受けて下さい。
次のページでは、実績が豊富・実力の評価の高い相談先の一覧と解説をまとめています。

個人再生の非減免債権・一般優先債権・共益債権に関する解説

それでは、先ほどは省略しましたが、個人再生の「非減免債権」「一般優先債権」「共益債権」について、より詳しい説明をお届けしていきます。

どれも、「減額されない債務」という結果は同じなのですが、その根拠となる仕組みがそれぞれ異なります。

非減免債権とは

民事再生法第229条3項によって、「当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない」とされているものです。

(再生計画による権利の変更の内容等)
第二百二十九条

3 第一項の規定にかかわらず、再生債権のうち次に掲げる請求権については、当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない。
一 再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
二 再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
三 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの

出典:民事再生法第二百二十九条

ただし同法4項にて、

4 住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者と他の再生債権者との間については第一項の規定を、住宅資金特別条項については第二項の規定を適用しない。

出典:民事再生法第二百二十九条

との規定もあるため、住宅ローン特別条項を利用する場合は、条件が異なる部分もります。また、条文に「当該再生債権者の同意がある場合を除き」と記載されている事から、債権者の同意があれば、非減免債権でも減額が認められる可能性もあるようです。

一般優先債権とは

民事再生法の第122条に定められた内容となります。

(一般優先債権)
第百二十二条

一般の先取特権その他一般の優先権がある債権(共益債権であるものを除く。)は、一般優先債権とする。
2 一般優先債権は、再生手続によらないで、随時弁済する。
3 優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合には、その期間は、再生手続開始の時からさかのぼって計算する。
4 前条第三項から第六項までの規定は、一般優先債権に基づく強制執行若しくは仮差押え又は一般優先債権を被担保債権とする一般の先取特権の実行について準用する。

出典:民事再生法第百二十二条

「一般の先取特権がある」ものと、「その他一般の優先権がある」ものの2種類が、ひとまとめにされています。債務整理に詳しい朝日中央グループの解説によると、

例えば、労働者の賃金請求権や公租公課がその典型です。

出典:民事再生手続上、一般優先債権とはどのような権利ですか-朝日中央グループ

とされています。


なお、「一般の先取特権」とは、民法第303条に規定されています。

(先取特権の内容)
第303条
先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

出典:民法第303条

ただし、民法第303の条文を見ても、“この法律その他の法律の規定に従い”との決まりで、具体性がありません。何が先取特権になるかは、民法の各条文や、各種法律の規定を参照する必要があります。

また、「その他一般の優先権がある」とされる債権については、債務整理に詳しい宮本督弁護士は、次のように解説しています。

企業担保権(企業担保法2条)で担保される債権、租税債権(国税徴収法8条など)などが「その他一般の優先権のある債権」にあたり、これらの債権が一般優先債権となります。

出典:企業のための民事再生の法律相談 - 中島・宮本・溝口法律事務所

こちらも「○○なら一般優先権のある債権」といった大きな基準は見当たらないようです。

結果として、何が個人再生上の一般優先債権にあたるのか、自分で考えて判断する事は事実上不可能でしょう。さまざまな法律に関する幅広い知識と、債務整理の実務経験が豊富な弁護士・司法書士でなければ、判断は困難だと考えらえます。

共益債権とは

共益債権とは、民事再生法第119条に定められた債権(再生者にとっては、債務)のことを差します。

(共益債権となる請求権)
第百十九条
次に掲げる請求権は、共益債権とする。
一 再生債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
二 再生手続開始後の再生債務者の業務、生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権
三 再生計画の遂行に関する費用の請求権(再生手続終了後に生じたものを除く。)
四 第六十一条第一項(第六十三条、第七十八条及び第八十三条第一項において準用する場合を含む。)、第九十条の二第五項、第九十一条第一項、第百十二条、第百十七条第四項及び第二百二十三条第九項(第二百四十四条において準用する場合を含む。)の規定により支払うべき費用、報酬及び報償金の請求権
五 再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権
六 事務管理又は不当利得により再生手続開始後に再生債務者に対して生じた請求権
七 再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で、再生手続開始後に生じたもの(前各号に掲げるものを除く。)

出典:民事再生法第百十九条

なお、共益債権の取り扱いは、一般優先債権と実質ほとんど変わらないとされています。

非減免債権・一般優先債権・共益債権の適用範囲

非減免債権・一般優先債権・共益債権といった決まりは、原則として、「個人再生」に適用されるルールです。民事再生法という、個人再生について定めた法律の中で言及されているためです。
債務整理の他の手続きには、それぞれ違った根拠法があります。

自己破産 … 破産法
特定調停 … 特定調停法
任意整理 … 根拠法なし
個人再生 … 民事再生法

任意整理については、制度上は法的枠組みではない債務整理となっています。
このように、債務整理と言っても、手続きごとに法律が異なります。そして、非減免債権・一般優先債権・共益債権については、「個人再生について定めた、民事再生法」のルールなので、他の自己破産、特定調停、任意整理には、基本的に影響しません。
(たとえば朝日中央グループによる解説でも、“個人再生上の共益債権”、“個人再生における一般優先債権”といった形で、範囲を個人再生手続きに限定した表現が用いられています。)

とはいえ、これはあくまで原則論の話です。
法的根拠を持たない「任意整理」や、法的に厳密な減免基準を持たない「特定調停」においては、個人再生の民事再生法、あるいは自己破産の破産法など、他の手続きの根拠法を、実務上適用しているケースも多々見られます。たとえば、「公租公課は債務整理の対象外」という判断など、民事再生法や破産法の論理が、任意整理や特定調停でも応用されるようです。

“異なる理由”により“同じもの”が「債務整理できない」とされる例もある

「債務整理できる・できない」の仕組みで、特にわかりにくい部分は、手続きごとに統一基準が無いのに、異なる法理論から、結果として同じものが「債務整理できない」とされる要素もあることです。

先ほどの「公租公課は債務整理の対象外」という判断もその例です。
個人再生では「一般優先債権にあたる」ためですが、自己破産では「非免責債権にあたる」ため、債務整理できないとされます。

こうした難解さがあるため、債務整理については、一般個人はもとより、弁護士や司法書士といった法律家であっても、“債務整理に詳しい”人でなければ、誤解を生じかねない面もあるでしょう。だからこそ、「家が近いから」「地域の弁護士・司法書士だから」といった理由ではなく、債務整理の実力や実績・評価で、弁護士や司法書士を選ぶことが大切になります。

そのため、実際の悩みや疑問は、債務整理に詳しい弁護士・司法書士の無料相談を活用し、アドバイスをもらったほうが良いと言えます。

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脚注
※1 債務整理の手続対比一覧表 裁判所

-個人再生

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