自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)とは?特徴や条件を徹底解説!

投稿日:2018年9月9日 更新日:

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★この記事を読んでわかること
(約10分で読めます)
  • 自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)とは?
  • 被災ローン減免制度の利用条件とデメリット・メリット
  • 国の正式な手続きではなく、減額の効果もあまり期待できない?その理由や根拠(エビデンス)

 

この記事では、「自然災害債務整理ガイドライン」について、わかりやすい解説をお届けしていきます。

まず冒頭、地震・台風・豪雨・土砂崩れなど自然災害にて、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りし、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

本記事の執筆は、2018年9月7日から9月8日にかけて行っています。台風21号による甚大な被害、そして北海道での地震により、現在も不眠不休の救助や復旧作業が行われている最中です。一日も早い復興を、心よりお祈りいたします。

さて、自然災害が続いていますが、「被災によってローンの返済ができなくなる」ことも大きな問題となっています。

住宅ローンが残っているのに、家が災害でボロボロになってしまった
職場が被災して、仕事を続けられなくなった
自動車ローンが残っている車が、災害でダメになってしまった
…など

こうしたトラブルを解決し、災害復興に加速をつけるために、銀行などの“民間の自主的なルール”として作られたのが、今回ご紹介する「自然災害債務整理ガイドライン」です。


政府も「政府広報オンライン」などで積極的に広報を行っていますが、国の定めた制度ではありません。全銀協(全日本銀行協会)が事務局となって取りまとめた仕組みですので、いわば「お金を貸す側が作った制度」です。

そうした背景も踏まえつつ、今回は、この「自然災害債務整理ガイドライン」について、特徴や条件、メリット・デメリット、申請方法などを詳しく解説していきます。

★大阪府にて台風21号に被災された方へ:被災住宅無利子融資制度について

大阪の松井一郎知事が、9月5日の記者会見にて、「大阪版・被災住宅無利子融資制度」を、今回の2018年台風21号の災害にも適用すると発表しました。()

こちらも被災時の住宅ローン問題の解決に役立つ制度となっています。詳細は大阪府内の「りそな銀行」各支店、または住宅金融支援機構にお問い合わせください。

「災害融資受付センタ-」 (7月17日(火曜日)開設)
(場所)住宅金融支援機構近畿支店1階(大阪府大阪市中央区南本町4丁目5番20号)
(営業時間)祝日・年末年始を除く月曜日から金曜日 10時から17時
上記窓口にお越しになれない方は、次の災害専用ダイヤルをご利用ください。
「住宅金融支援機構 お客様コールセンター(災害専用ダイヤル)」
(電話)0120-086-353(通話無料)
(受付時間)祝日・年末年始を除き、土曜日・日曜日も営業 9時から17時

出典:大阪府/大阪版被災住宅無利子融資制度

なお、今回この記事で解説する「自然災害債務整理ガイドライン」は、この「大阪版・被災住宅無利子融資制度」とは異なる仕組みとなります。

自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)の重要なポイント

まずは「自然災害債務整理ガイドライン」について、重要なポイントだけを簡単におさえていきましょう。

「災害救助法」の対象となった災害で被災した人が対象
すべての方が利用できる制度ではありません。被災者の方でも、さらに「災害救助法」の対象となった災害で、指定地域にて被災した方だけが対象となります。

災害救助法の適用状況 : 防災情報のページ - 内閣府

「今まで滞納したことが無い」など、その他の条件もある
たとえば、災害発生前から滞納しており、「期限の利益喪失通知」などが届いている場合、自然災害債務整理ガイドラインは利用できません。

条件に当てはまれば、ローン返済の減額を“交渉”できる
「絶対にローン返済が減額できる」という制度ではありません。また、「いくら・何割ほど減額できる」といった保証もありません。どの程度の減額が得られるかは、債権者との交渉次第となります。

交渉は、「登録支援専門家」が行う
弁護士や司法書士のほか、公認会計士・税理士・不動産鑑定士などが当てはまります。誰にお願いするかは、自分で選ぶことはできません。

弁護士費用が掛からない
国の支援により、「登録支援専門家」が無料で手続きを行います。「登録支援専門家」には、弁護士のほか公認会計士・税理士・不動産鑑定士などがいるようです。

ブラックリストにならない
ふつうの場合、債務整理(借金の減額・免除の手続き)を行うとブラックリストになるのですが、この「自然災害債務整理ガイドライン」では、ブラックリストになりません。

財産の処分が無い
「自然災害債務整理ガイドライン」でローン返済を減額しても、財産の処分は発生しません。
ただし、これは通常の債務整理でもほとんど同様です。「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産の同時廃止」など、財産処分なしで返済を減額・免除できる手続きは他にもあります。

自然災害債務整理ガイドラインの対象と利用条件

まずは、自然災害債務整理ガイドラインの対象と利用条件についてまとめます。

被災した災害が、平成27年(2015年)9月2日より後に発生していること

平成27年(2015年)9月2日より前の災害では、「自然災害債務整理ガイドライン」の利用はできません。東日本大震災も対象外です。

さらに、「災害救助法」が適用された災害・地域であること

ざっくり言えば、「国の指定した災害で、国の指定した地域で被災した人」ということです。災害で被災したからといって、誰でも利用できるわけではありません。
どの災害・どの地域が当てはまるかは、内閣府のホームページで確認する必要があります。

被災した災害が起こる前に、ローン返済を滞納したり、一括返済を請求されていないこと

「期限の利益喪失事由に該当する行為」とされている内容ですが、簡単に言えば、「滞納していない」「一括返済を請求されていない」といった事になります。

“ふつうの借金減額の手続き”に比べて、減額される金額が少ないこと

「自然災害債務整理ガイドライン」の正体は、債務整理という借金減額手続きが、すこし特別な形になったものです。
つまり、「自然災害債務整理ガイドラインではない、“ふつうの債務整理”(借金減額の手続き)」があるわけですが、その“ふつうの債務整理”に比べて、減額される金額が大きくなってはいけない(そう解釈できる)とされています。

個人事業主などの場合、借金を減額すれば、仕事を続けて利益を得られること

自然災害債務整理ガイドラインは、企業(法人)は利用できませんが、個人であれば、自分でビジネスを行っている人でも利用できます。ただし、「借金を減額することで、事業を続けられるようになる」「それによって利益を上げて、減額した後の残りを返済できる」といった見通しが必要になります。

★条件が厳しい…でも、「普通の債務整理」ならローンを減額できる可能性があります

こうして整理してみると、「自然災害債務整理ガイドライン」の利用条件は、かなり厳しいものがありますね。

とくに、“国の指定した災害と地域”でなければ利用できないので、この時点で対象から外れてしまう方も大勢いるでしょう。自然災害が原因で、ローン返済に困っていても、「国の指定」から外れていれば利用できないわけです。

ですが、ローン返済を減額する方法は、「自然災害債務整理ガイドライン」だけではありません。

そもそも、「自然災害債務整理ガイドライン」は、もともとある「ふつうの債務整理」を、すこし特別な形に変化させたものです。そして、「ふつうの債務整理」は、条件はもっともっと緩くなります。

「ふつうの債務整理」には、いくつか種類があります。
その中でも、いちばん条件が緩い「任意整理」では、“返済に困っている”以外の条件が特にありません。ほかにも「個人再生」「特定調停」「自己破産」などがありますが、どれも地域や、被災した災害などは問われません。

こうした「ふつうの債務整理」について、無料で相談できる窓口を、次のページでまとめています。気になるポイントの解説も行っているので、こちらもぜひご覧ください。

債務整理に強い弁護士・司法書士の無料相談窓口の一覧はこちら

自然災害債務整理ガイドラインのメリット

続いて、自然災害債務整理ガイドラインのメリットとデメリットも、まとめていきましょう。

自然災害債務整理ガイドラインのメリットは、

ローン返済の減額を“交渉”できる
ブラックリストにならない
弁護士費用が掛からない
財産の処分がない

という4点になります。
ですが実は、4つとも「注意するべきポイント」があります。

メリット1:ローン返済の減額を“交渉”できる

あくまで“交渉できる”という点に注意が必要です。
交渉できるといっても、だから絶対にローン返済が減額できるとは限りません。交渉の結果、“不成立”でローンが一円も減らせず終わってしまう恐れもあります。

これは、「自然災害債務整理ガイドライン」が、最終的には「特定調停」という手続きになるためです。この「特定調停」という手続きは、減額の基準が特にありません。「行った結果、交渉がまとまらず不成立に終わる」という事もあり得る手続きです。

一方、自然災害債務整理ガイドラインではなく、“ふつうの債務整理”であれば、話は変わってきます。返済減額の基準が決まっている「個人再生」や、原則として全ての返済が0円になる「自己破産」もあります。

メリット2:ブラックリストにならない

正確に言えば、「自然災害債務整理ガイドラインを活用して債務整理を行っても、そのことが信用情報機関に登録されない」という意味です。

※個人信用情報機関に債務整理をした事実や滞納などの事故情報が掲載されることを、ブラックリストになるといった呼び方をします。

信用情報がブラックリストから解除されるには5年程度かかると言われおり、その間は新たな借入れやローンの審査に通りにくくなります。
住宅ローンが組めなくなったり、クレジットカードが使えなくなったり、マイカーローンの審査に通らなかったりといった弊害が出る恐れがあります。

しかし次のような代替え案を使う事で問題は回避できる可能性が高くなります。

  代替え案
住宅 賃貸物件に住む
クレジットカード デビットカード機能付きの銀行キャッシュカードを使う
リースで乗る

このように考えると、「自然災害債務整理ガイドラインが原因でブラックにならない」というのは、それほど大きなメリットとは言えないかもしれません。

メリット3:弁護士費用が掛からない

債務整理(借金減額の手続き)は、基本的に、弁護士や司法書士に依頼して行います。基本的に費用もかかるのですが、自然災害債務整理ガイドラインが適用できると、こうした弁護士などの費用が無料となります。

これは大きなメリットですが、「そもそも適用条件が厳しい」ことを考えると、手放しに喜べるものでもありません。

さらに言えば、「自然災害債務整理ガイドライン」ではない“ふつうの債務整理”でも、手元にお金がなくても、費用の心配をする必要はありません。
初期費用無料、相談料無料、費用の後払い・分割OKで、“ふつうの債務整理”で借金問題を解決できる弁護士や司法書士もいるためです。

さらに、法テラスの「民事法律扶助制度」などもあるため、「お金がなくて債務整理(借金解決)ができない」という心配はありません。

メリット4:財産の処分がない(手元に残せる)

「自然災害債務整理ガイドライン」の4つめのメリットは、「財産の処分がない」事とされています。
政府広報オンラインの説明でも、

具体的には、債務者の被災状況や生活状況などの個別事情により異なりますが、預貯金などの財産の一部を「自由財産」として残すことができます。

出典:自然災害債務整理ガイドライン|政府広報オンライン

とされており、また「500万円までなら残せる」といった噂もあります。

ですがこれは、はっきり言えば説明が不十分です。
財産の処分がないのは、「自然災害債務整理ガイドライン」だけのメリットではありません。
厳しい利用条件がない“ふつうの債務整理”でも、「任意整理」「個人再生」「特定調停」「自己破産の同時廃止」では、財産の処分は発生しません。

さらに、財産の処分が生じる「自己破産の管財事件」は、“もともと一定以上の財産を持っている人だけ”に適用されます。
もっと言えば、この「自己破産の管財事件」で財産が処分される場合も、“預貯金などの財産の一部を「自由財産」として残せる”ことに変わりはありません。

つまり、「財産が残せる」のは、自然災害債務整理ガイドラインに限ったメリットではなく、“ふつうの債務整理”でも、まったく共通しているのです。

自然災害債務整理ガイドラインのデメリットと注意点

自然災害債務整理ガイドラインには、公式もきちんと説明していないデメリットもあります。
とくに重要な3つのデメリットについて、解説します。

デメリット1:とにかく条件が厳しい

先ほども詳しくご紹介しましたが、自然災害債務整理ガイドラインの条件は、とにかく非常に厳しいです。

国の指定した災害に、国の指定した地域の人が被災していなければ、利用できません。また、今までに滞納があってもダメです。

「災害のせいでローン返済に困っている」という人のうち、どのくらいの方が実際に「自然災害債務整理ガイドライン」を利用できるかは、大いに疑問が残るところです。

デメリット2:減額できる金額が少ない

自然災害債務整理ガイドラインは、最終的には「特定調停」という手続きになります。この「特定調停」自体、債務整理の中でも“ほとんど減額が期待できない”手続きだと言われています。

債務整理には、「任意整理」「個人再生」「自己破産」「特定調停」という種類があります。

  • 任意整理…今後の利息と、遅延損害金のカット
  • 個人再生…原則、すべての返済を、5分の1~10分の1に大幅減額
  • 自己破産…原則、すべての返済を0円に免除

…と、このように減額が大きく期待できる手続きもあるのですが、「特定調停」は、うまくいっても「今後の利息カットのみ」が相場。元金の減額も、遅延損害金の免除も、ほとんど期待できません。

この“ほとんど借金が減らせない特定調停”で、ローン減免を試みるのが、「自然災害債務整理ガイドライン」です。
もちろん“交渉次第”という部分もあるのですが、現実的には、あまり大きな減額は望めないでしょう。

デメリット3:「登録支援専門家」が、借金問題に強いとは限らない

自然災害債務整理ガイドラインは、「“交渉次第”という部分もある」手続きです。だからこそ、もっとも大きな問題が、この3つめのデメリットになります。

自然災害債務整理ガイドラインでは、“登録支援専門家”が手続きを支援してくれます。登録支援専門家は、『弁護士のほか、公認会計士・税理士・不動産鑑定士などが当該する』とされています。

つまり、必ずしも弁護士が助けてくれるのではなく、公認会計士だったり、税理士だったり、不動産鑑定士だったり…“だれが支援してくれるか、わからない”わけです。

しかし一方、普段から借金問題の解決に取り組んでおり、経験や実力が豊富なのは、「債務整理に強い弁護士・司法書士」です。
弁護士や司法書士の中でも、「債務整理」を得意としている人でなければ、十分な経験がありません。まして、普段は債務整理を行えない「税理士」「公認会計士」「不動産鑑定士」では、どうなるでしょうか。いくら“登録支援専門家”だと言っても、債務整理の実力に問題が無いとは言い切れません。


これは“たとえ話”ですが、あなたが心臓病になったとしましょう。心臓手術が必要になりました。そこに、

「無料で支援します。この人が専門家です」

…と、“盲腸のベテラン医者”がやってきたら、「頼みたい・任せたい」と思えるでしょうか?その医師は、盲腸手術では「神の腕」ですが、普段は心臓の手術をしていないのです。

「いくら無料でも、とても命は預けられない」
「心臓手術のベテランにお願いしたい」

…そう思いますよね。

これと似たようなことが、「自然災害債務整理ガイドライン」では、生じてしまう恐れがあるわけです。

それでも「自然災害債務整理ガイドライン」に頼るべきなのか

いかがでしょうか?
自然災害債務整理ガイドラインには、

そもそも利用条件が厳しい
実際に減額できる金額が、ふつうの債務整理よりも多くはならない(あまり返済が楽にならない)
無料とはいえ、登録支援専門家が本当に頼りになるか不明

といった、大きな問題があります。
利用できる人が限られるのに加え、利用できても、実際にローン返済が楽になる保証はないわけです。

自然災害債務整理ガイドラインが原因で、差し押さえを受ける恐れもある

もっとも知っておくべきリスクは、「差し押さえ」についてです。
自然災害債務整理ガイドラインの正体は、手続きとしては「特定調停」になります。

この特定調停は、和解が成立した場合、「調停調書」という文書が作られます。この「調停調書」は、判決と同じような効力を持つので「債務名義」になります。
そのため、一言でまとめてしまうと、次のようなリスクがあります。

“自然災害債務整理ガイドラインを利用した後、残ったローンの返済を滞納したら、裁判なしですぐに差し押さえ(強制執行)を受ける恐れがある”

実は、差し押さえ(強制執行)は、「債務名義」と呼ばれるものが必要になります。判決、公正証書、そして特定調停の調停調書などがあたります。

ふつうの借金の場合、「債務名義」をまず裁判などで取ってからでないと、差し押さえは行えません。ですが、「自然災害債務整理ガイドライン」後…つまり「特定調停」後…であれば、調停調書という債務名義がありますから、すぐに差押えを申し立てられることになります。

差し押さえについて、より詳しい解説は、以下の記事にまとめています。

自然災害債務整理ガイドライン、想定される“最悪の失敗例”

先ほどデメリットの項目で指摘した、

自然災害債務整理ガイドラインでは、あまり大きな減額は期待できない
支援する“登録支援専門家”が、借金解決や債務整理に強いとは限らない

という点も踏まえてみましょう。
すると、自然災害債務整理ガイドラインには、こんな“最悪の失敗例”が考えられます。

『自然災害債務整理ガイドラインを申請したけれど、ほとんどローンが減額できないまま成立してしまった。しかし、その後の生活が苦しく、ローン返済を滞納してしまった。
その結果、自然災害債務整理ガイドラインによって調停調書が取られているため、いきなり差し押さえ(強制執行)を受けてしまった』

こうした事態を避けるためにも、「自然災害債務整理ガイドライン」は、デメリットもしっかりと知っておく必要があります。

★まずは“債務整理(借金解決)”に詳しい弁護士・司法書士への無料相談を

自然災害債務整理ガイドラインには、大変な大失敗の危険性もあります。
こうした失敗を防ぐためにも、安易に検討するのではなく、債務整理に詳しい弁護士・司法書士に、まずは話をきいてみましょう。

ここまでも難しい話が続いてきましたが、実際には、もっと複雑で難しい仕組みです。また、政府広報などの説明には書かれていない、リスクや危険性、デメリットもあります。

さらに、「自然災害債務整理ガイドライン」を使わなくても、別の借金解決(債務整理)の方法も、きちんと用意されています。
場合によっては、自然災害債務整理ガイドラインを使わず、「ふつうの債務整理」を行ったほうが、メリットが大きくなる事もあるでしょう。

こうした点を総合的に考えて、「自分にとって、どんな方法がいちばん良いのか」を見つけるのは、自分一人では不可能です。債務整理に詳しい弁護士・司法書士に相談し、診断してもらう必要があります。

次のページで、債務整理を無料相談できる弁護士・司法書士をまとめています。相談だけならお金も掛かりません。また、24時間365日・全国対応で、メールや電話(フリーダイヤル)で無料相談できます。
まずは無料相談を利用して、債務整理について、詳しい話を聞いてみてください。

自然災害債務整理ガイドラインの申請方法

それでは最後に、自然災害債務整理ガイドラインの申請方法について解説します。
「誰にでもお勧めできる」といった制度ではなく、問題点やデメリットもありますが、それでも「自然災害債務整理ガイドライン」を申請したい方は、ご参考にお役立て下さい。


自然災害債務整理ガイドラインの手続きの申し込み方法は、

最も多額のローンを借りている金融機関に対して、自然災害債務整理ガイドラインに基づく手続に着手することを申し出ます。

出典:自然災害債務整理ガイドライン|政府広報オンライン

となっています。
ですので、まずは自分の借入状況(債務状況)を確認し、「もっとも多く借りている相手(金融機関)はどこなのか」を把握する必要があります。

そして、その「もっとも多く借りている金融機関」に対して、自然災害債務整理ガイドラインの申請を申し出ます。窓口に実際に行って相談する事になるでしょう。

また、申請の際に、『借入先、借入残高、年収、資産(預金など)の状況』も聞かれます。こうした点についても、確認してメモを取っておくと良いでしょう。

申請の結果、金融機関から合意が得られれば、「登録支援専門家」の支援のもとに、自然災害債務整理ガイドラインでのローン減額手続きを行うことができます。

詳しくは、「一般社団法人自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関」のホームページにてご確認下さい。

自然災害債務整理ガイドラインの相談は、市役所や公的機関ではできない可能性あり

「自然災害債務整理ガイドライン」についての相談も、上記の「ガイドライン運営機関」や、借入先の金融機関、または債務整理に詳しい弁護士・司法書士に行うほうが良いでしょう。

というのも、ここまで政府の広報資料などを元に解説してきましたが、「自然災害債務整理ガイドライン」は、国の定めたものではありません。

政府も後押しをしているものの、全日本銀行協会(全銀協)による「ガイドライン研究会」が考案・策定した手続きとなっており、運営主体も一般社団法人、つまり民間団体です。

民間企業や民間団体の取り組みですから、市役所などの公的機関では、自然災害債務整理ガイドラインの相談は受けられない可能性があるでしょう。

また、繰り返しになりますが、「自然災害債務整理ガイドライン」によらない、“ふつうの債務整理”でのローン解決方法もあります。こうした方法も視野に入れて、「債務整理に強い弁護士・司法書士」に相談してみるのが良いでしょう。

債務整理に強い弁護士・司法書士の一覧まとめ

 


各論の補足と根拠(エビデンス)解説

ここからは補足となります。本文内で詳しく触れられなかった論点や、各種のエビデンスについて補強していきます。

自然災害債務整理ガイドラインは、民間の自主的なルール

冒頭で少し触れましたが、自然災害債務整理ガイドラインは、民間の自主的なルールです。国の定めた被災者救済の制度ではありません。

政府広報オンライン、政府インターネットTVなどでも告知されているため、「国の定めた、正式な被災者救済制度」のように見えるのですが、実際には異なります。

このことは、政府インターネットテレビの番組でも、しっかりと明言されています。

「全国銀行協会を事務局とする研究会により、平成27年12月に取りまとめられた、民間の自主的なルール」
掲載動画1:40~

出典:政府インターネットテレビ 自然災害の影響で住宅ローンなどの返済にお困りの被災者の方へ

これは言い換えれば、「お金を貸す側(=債権者側)」が作った制度だと見ることもできます。

私たち「お金を返す側(=債務者)」にとって、あまりメリットが大きくなく、無視できないデメリットが多いこともご説明してきましたが、その理由も、こうした背景にあるのかもしれません。

自然災害債務整理ガイドラインの利用条件について

政府広報オンラインにより、以下の記述があります。

平成27年(2015年)9月2日以降に「災害救助法」(※)が適用された自然災害の影響によって、それまで抱えていた住宅ローンや自動車ローン、事業性ローンなどを返すことができない、または近い将来に返せなくなることが確実と見込まれる個人または個人事業者の方

(…中略…)

それに加えて、主に下記のような要件を満たすことが必要です。

  • 災害が発生する以前に、対象債権者に対して負っている債務について期限の利益喪失事由に該当する行為がなかったこと
  • このガイドラインに基づく債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること
  • 債務者が事業の再建・継続を図ろうとする事業者の場合は、その事業に事業価値があり、対象債権者の支援により再建の可能性があること

出典:自然災害債務整理ガイドライン|政府広報オンライン

これらの文言のうち、一部は一般にわかりにくいため、この記事の本文では、より平易な表現や、代表的な事例に置き換えて解説しています。

「期限の利益の喪失事由に当該する行為」
⇒被災した災害が起こる前に、ローン返済を滞納したり、一括返済を請求されていないこと

実際には、滞納などの他にも、「期限の利益喪失事由」に当たる行為も存在します。どんな行為が当てはまるかは、各ローン契約の「期限の利益喪失条項」を確認する必要があります。一般的には、仮差押え・仮処分・仮執行や、他社からの強制執行(差し押さえ)、そのほか信用情報の著しい悪化などが挙げられるでしょう。


「債権者が、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込み」
⇒ふつうの債務整理をした場合と比べて、減額される金額が少ないこと

「破産手続(自己破産)」「民事再生手続(個人再生)」といった制度自体が、あまり詳しく認知されていないため、“ふつうの借金減額の手続き”と置き換えて解説しています。
また、「債権者が~同等以上の回収を得られる見込み」は、債務者の目線から言えば、「破産手続きや民事再生手続きに比べて、減額できる債務の金額が少ない」ことを意味すると考えられます。そのため、債務者の目線に立った表現にて解説しています。

“ふつうの債務整理でも財産が残せる”というエビデンス

まず、“ふつうの債務整理”には、「任意整理」「個人再生」「特定調停」「自己破産」があります。
そして、「任意整理」以外の3つは、手続きが法律や裁判所の基準で定められています。

  • 個人再生 … 民事再生法
  • 特定調停 … 民事調停法、および特定調停法
  • 自己破産 … 破産法

「財産の処分があるかどうか」も、こうした法律や裁判所の基準によります。そのうえで、一定以上の財産の処分が必要とされているのは、自己破産のみとなります。

【破産法 第2条1項】
この法律において「破産手続」とは,次章以下(第12章を除く。)に定めるところにより,債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。

出典:破産法

さらに、自己破産の「破産手続き」も、すべての財産が処分・清算されるわけではありません。破産法第34条3項+ほか特別法による「自由財産」、および破産法第34条4項に基づく「自由財産の拡張」があるためです。

加えて、もとから一定以上の財産がない場合は、破産手続きを開始決定と同時に廃止し、免責手続きのみを行う「自己破産の同時廃止」となります(破産法第216条1項)。

つまり、自己破産でも「同時廃止」となれば、財産の処分は行われません。

こうした“ふつうの債務整理”の仕組みを参照すれば、自然災害債務整理ガイドラインで「一定の財産を持っていられる」ことは、この手続きの独自のメリットではありません。

こうした債務整理の財産清算・処分について、以下の関連記事でも触れています。

「自然災害債務整理ガイドライン」が「特定調停になる」という話の根拠(エビデンス)

政府広報オンラインによる解説を詳しく見ていくと、次の記載があります。

3.ガイドラインを利用した手続の流れは

《…中略…》

(6)特定調停の申立
対象にしようとする全ての金融機関等から同意が得られた場合、簡易裁判所に特定調停を申し立てます。
この調停には、原則として、債務者自身が参加する必要があります。

出典:自然災害債務整理ガイドライン|政府広報オンライン

この記載から、「自然災害債務整理ガイドライン」が、「特定調停になる」ことがわかります。
そして裁判所の資料により、「特定調停は不成立になり、解決に至らないまま手続きが終了する」ことがあると明記されています。

(どうしても折り合わない場合) 調停は不成立になり解決に至らないまま手続は終了します。

出典:特定調停 裁判所

特定調停には他にも注意点やリスクがあります。
詳しくは、次の記事をご覧ください。

“登録支援専門家が、借金問題に強いとは限らない”ことの根拠と解説

自然災害債務整理ガイドラインの実務を担う「登録支援専門家」について、政府広報では以下のように説明されています。

金融機関から手続着手について同意が得られれば、地元の弁護士会などを通じて、全国銀行協会に対し、「登録支援専門家」による手続支援を依頼できます。「登録支援専門家」は、中立・公正な立場から債務整理の手続を支援する専門家で、弁護士のほか、公認会計士・税理士・不動産鑑定士が該当します(弁護士以外は一部業務を実施できません。)。

出典:自然災害債務整理ガイドライン 政府広報オンライン

ここで書かれている、「弁護士以外は一部業務を実施できません。」という最後の一文が、実は大きな問題です。

自然災害債務整理ガイドラインの正体が、「特定調停」であることは、上記で確認した通りです。「特定調停」も、民事調停法および特定調停法に基づく、債務整理の一種類です。

そして、こうした債務整理をはじめとし、借金など金銭債務の整理は、誰でも代理できるものではありません。

  • 弁護士法第72条および73条に基づく、弁護士の独占業務
  • 司法書士法第3条第1項第六号および裁判所法第33条第1項第一号に基づく、簡裁訴訟代理認定を持った司法書士の独占業務(1件あたり140万円以下の債務に限る)

となっています。以上の法律に基づいて、「弁護士と、簡裁訴訟代理認定を持った司法書士」以外は、債務整理の手続きを支援することはできません。

つまり、「自然災害債務整理ガイドライン」の登録支援専門家として挙げられている、弁護士以外の「公認会計士・税理士・不動産鑑定士」については、“そもそも債務整理を支援する法的権限がない”わけです。

政府の説明による、「弁護士以外は一部業務を実施できません。」は、もっと正確に言えば、「弁護士以外の登録支援専門家は、自然災害債務整理ガイドラインの特定調停を実質ほとんど支援できない」という事にもなりかねません。

★債務整理は、本当に借金解決に強い弁護士・司法書士へ

地震、台風、豪雨など、自然災害の相次ぐ中、注目の高まっている「自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)」。ですが、必ずしもメリットばかりではなく、デメリットも多数あります。

また、「お金を貸す側」である全日本銀行協会が作った「自然災害債務整理ガイドライン」を利用しなくても、本当に国が定めた“ふつうの債務整理(借金解決の手続き)”もあります。

こうした点も踏まえて、「ブラックリストにならないから」と、安易に自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)に飛びつくのは、あまり推奨できません。

債務整理は、とても複雑な社会の仕組みです。
まずは債務整理に詳しい弁護士・司法書士に、無料相談を行ってみましょう。

電話・メールで無料相談可能な弁護士・司法書士事務所 一覧と解説

 

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