自然災害でローンだけ残った…返済できない場合の国の制度や手続き

投稿日:2018年6月26日 更新日:

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★この記事を読んでわかること
(約5分で読めます)
  • 災害に遭って、ローンが残ったまま家や車を失ってしまった…そんな場合どうすれば?
  • 国の定めた「債務整理」で、返済を減額・免除できる。そのメリットとデメリットは?
  • 一定の要件に当てはまる場合、「自然災害債務整理ガイドライン」が適用できる場合も。

この記事では、「災害にあって、ローンが残ったまま家や車を失ってしまった」という方のために、返済を免除・減額する方法、二重ローン(ダブルローン)を回避する方法などをお伝えしていきます。

まず冒頭、地震や台風、雷、土砂災害、洪水など、さまざまな天災でお亡くなりになった方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。


「大切な財産が一瞬にして破壊されてしまい、ローンだけが残ってしまう」…。
生活再建、そして災害復興の大きな妨げとなる、重大な問題の一つです。

この問題について、国も対策を用意してるのですが、あまり広く知られていないようにと思います。

そこで今回は、「災害にあって、ローンが残ったまま家や車を失ってしまった」場合にも利用できる、国が定めた正式な救済制度を解説していきます。

★こんな人に、特に役立つ内容です

地震、台風、豪雨災害、土砂災害などの災害によって…

ローンが残ったまま、家や車を失ってしまった
家や車の買い替え、修理・修繕などで、ダブルローン(ローンが残った状態で、新たにローンを組むこと)になった
収入が激減し、または収入の道が断たれて、住宅ローンや自動車ローンを返せなくなった

こうした被害に遭われてしまった人に、特に役立つ情報となります。
また、「将来の災害に備えたい」「いざという時のために、知識だけでも学んでおきたい」という方にも、お役に立てるかと思います。

ローンや借金が返せなくなった場合の基本は「債務整理」

まず基本的に、「ローンや借金が返せなくなった場合の救済制度」として、“債務整理”という手続きがあります。これは、借金返済を減額・免除するもので、被災が原因かどうか…といった事とは関係なく行える手続きとなります。

債務整理とは

債務整理は、国によって整備された“借金の減額・免除”の手続きです。
借金やローンの返済が難しくなった時に、

債権者(貸した側)と債務者(借りた側)の利害関係を適切に調整する
債務者の経済状態を建て直す
債務者が借金をしなくても生活できるようにする

…といった事を目的に行われる手続きとなります。

債務整理の種類と特徴

債務整理には、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」「特定調停」といった種類があります。また、借金を時効で帳消しにする「時効援用」も、広い意味では債務整理に含めて良いでしょう。

ここでは、まずは主な債務整理である「任意整理」「個人再生」「自己破産」について、簡単に説明します。

任意整理
・概要:遅延損害金と将来利息をカットし、残りを長期の分割払いとする。
・主なメリット:返済を減額できる。返済計画を立て直せる。
・主なデメリット:ブラックリストに掲載される。

個人再生
・概要:総負債額を5分の1程度に減額する。
・主なメリット:債務を大幅に減額できる。残った借金も長期の分割払いにできる。
・主なデメリット:ブラックリストに掲載される。

自己破産
・概要:原則として、すべての返済を免除する。
・主なメリット:どれだけ借金があっても、基本的に全額免除される。
・主なデメリット:ブラックリストに掲載される。一定以上の資産を持っている場合、管財事件となり、清算が必要になる。

こうした債務整理の各種手続きは、「災害にあって、ローンが残ったまま家や車を失ってしまった」場合にも利用できる、国の認めた正式な返済減額・免除の手続きとなります。

債務整理の利用条件と免責不許可事由

「ギャンブルや浪費が原因の借金は、自己破産が認められない」

といった話をご存知の方もいるかと思います。
確かに、“自己破産の免責不許可事由”という定めがあり、原則としては、ギャンブル、浪費、投資失敗などの借金は、自己破産は認められない…とされています。

ですが、

免責不許可事由の定めがあるのは、自己破産のみ
⇒任意整理や個人再生では、とくに借金の理由や事情は問われない

□実際には自己破産でも、“裁量免責”が認められる場合が多い
⇒ギャンブルや浪費など、“免責不許可事由”にあたる場合でも、裁判官の裁量免責によって、自己破産が認められる事も多くなります。

といった事になっています。

債務整理は、「被災してローンが残った場合」も活用できる

債務整理は、「被災してローンが残った」という場合も活用できる制度です。

たとえば…

ローンが残ったまま、震災で家や車を失ってしまった
住宅ローンが残っているのに、台風で家が壊れ、多額の修繕費用でダブルローンになってしまった
被災して働けなくなり、借金返済ができなくなった

といった場合も、用いることができます。

★債務整理は、弁護士・司法書士への無料相談から

債務整理は、弁護士や司法書士への無料相談から始めることができます。
また、「初期費用ゼロ円」での手続きも可能となっています。
詳しくは、次のページをご覧ください。

債務整理に強い弁護士・司法書士の一覧とその解説

 

災害でローンが残った場合の、特別な債務整理(※条件あり)

さて、ここまでは通常の債務整理について、解説をお届けしてきました。
通常の債務整理でも、災害で残ったローンを減額・免除できます。

そしてもう一つ、条件はすこし厳しいのですが、「自然災害債務整理ガイドライン」という、特殊な債務整理があります。

自然災害債務整理ガイドラインとは

自然災害債務整理ガイドラインとは、“被災者が一定の要件に当てはまる場合に、生活や事業を債権しやすいように”作られた、特別な債務整理です。「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」という呼び方もあります。

政府広報オンラインの情報をもとに、この「自然災害債務整理ガイドライン」について解説していきます。

自然災害債務整理ガイドラインのメリット

自然災害債務整理ガイドラインが適用されると、次のようなメリットがあります。

債務整理をしても、ブラックリストにならない
国の補助により、弁護士などの「登録支援専門家」に手続き支援してもらえる
財産の一部を、ローン返済に充てずに“自由財産”として残せる

ただし、「財産の一部を“自由財産”として残せる」ことは、通常の債務整理でも同様です。また、債務整理のなかでも「個人再生」「任意整理」であれば、財産の清算はとくに必要ありません。

また、弁護士などの支援についても、通常の債務整理の場合でも、「初期費用ゼロ円」「後払い・分割OK」で依頼できる弁護士・司法書士がいる等、費用を心配せずに行うこともできます。

自然災害債務整理ガイドラインの利用条件

  • 平成27年9月2日以降に「災害救助法」が適用された自然災害により被災した、個人または個人事業者
  • “災害が発生する以前に”、滞納などの「期限の利益喪失事由」が無かったこと
  • 通常の債務整理(自己破産、個人再生)と比べた時、この制度を使うことで、債権者にもメリット(経済的な合理性)が認められること
  • 事業主の場合は、事業価値があり、債権者の支援によって再建の可能性があること

こうした条件に当てはまる場合、「自然災害債務整理ガイドライン」が利用できるとされています。

災害救助法が適用された自然災害の確認方法

災害救助法が適用された自然災害は、内閣府のホームページ(内閣府 災害救助法)で確認できます。

たとえば、平成30年度の場合、次のような災害が当てはまります。

  • 2月4日の豪雪災害(福井県福井市、あわら市、坂井市ほか)
  • 6月18の大阪北部地震(大阪府大阪市、豊中市、枚方市、高槻市ほか)
  • 「平成30年7月豪雨」(西日本の豪雨)

災害救助法の対象は、“災害”と“地域”で定められています。
ですので、たとえば「6月の大阪北部地震で、家が破損してしまった」という人でも、地域が災害救助法の対象に含まれていなければ、自然災害債務整理ガイドラインの適用はできない事となります。

その場合は、通常の債務整理にて対応することになるでしょう。

★東日本大震災が原因でローンが残った場合

ここでご紹介した「自然災害債務整理ガイドライン」は、“平成27年9月2日以降”の災害が対象になります。そのため、平成23年3月11日に発生した「東日本大震災」による借金問題は、この「自然災害債務整理ガイドライン」では対象外となります。

ただし、東日本大震災による債務整理の場合、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(個人版私的整理ガイドライン)が適用できる可能性があります。

詳しくは、一般社団法人「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」にお問い合わせください。

自然災害が原因の借金解決は、国の制度も次々と発展している

地震、台風、豪雨、豪雪など、さまざまな自然災害が生じる日本では、「災害による借金問題」も、決して軽視できない問題となっています。

たとえば、東日本大震災の際も、「ローンを組んで買ったばかりの家が倒壊し、借金だけ残ってしまった」等、被災者の債務問題が復興の足かせとなってしまい、大きな社会的問題ともなりました。

こうした事態を受けて、金融庁が「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」を整備。そして一般社団法人「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」が設立されました。

その後、さらなる災害に備えて、平成27年9月2日より「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」が整備され、運用されています。

このような国の制度づくりの時系列から、

  • 3.11の被害によるものは、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」
  • 平成27年9月2日以降のものは、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」

といった区別になっていると考えられます。

★複雑な制度なので、まずは法律の専門家に相談を

自然災害による借金解決の制度整備(国の仕組み)は、年々進歩しています。
一方、まだまだ過渡期にあるとも言えるため、個人で活用するには難しさもあるでしょう。

そもそも、債務整理それ自体が複雑な制度であり、私たち一般人には馴染みのない仕組みです。
ですので、まずは債務整理に強い弁護士・司法書士の無料相談を活用し、アドバイスをもらう所から始めたほうが良いでしょう。

債務整理に強い弁護士・司法書士の一覧とその解説

 

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