家賃滞納や家賃保証会社からの督促は何年で「時効の援用」ができる?

投稿日:2018年10月24日 更新日:

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この記事では、家賃滞納は何年で消滅時効の援用ができるのか、解説していきます。


時効援用は、「借金の返済義務を、時効で消滅させる手続き」と、解説される場合もあります。ですが実は、カードローンやキャッシング、サラ金などの借金だけでなく、滞納してしまった家賃も、時効援用の対象になります。

もう何年も前に家賃を滞納して、放置している
滞納したまま引っ越して、昔の部屋の家賃をまだ払っていない
5年以上前の滞納家賃を支払うように、家賃保証会社から督促を受けている

…といった方は、これから解説する内容が、当てはまる可能性も高いでしょう。
この記事の内容を、ぜひお役立て下さい。

滞納した家賃は、“消滅時効の援用”で返済義務を無くせる可能性あり

「家賃は、実は借金と同じ」

…というと、信じられない方も多いかもしれませんね。
確かに、お金(現金)を借りているわけではないので、借金のイメージではありませんよね。

もう少し正確に言えば、「お金を払う(返す)約束」という意味で、家賃も借金返済も同じという事になります。

借金 = 借りたお金を返す約束がある
家賃 = 借りた家の賃料として、お金を払う約束がある

どちらも、お金を払う(返す)約束があるわけです。
この約束のことを、払う側の私たちにとっては“債務”と呼び、受け取る側の相手にとっては“債権”と呼びます。

そして時効援用は、正確に言えば“債務の消滅時効の援用”です。
家賃も「お金を払う約束=債務」ですから、“債務の消滅時効の援用”の対象になるのです。

家賃の支払い義務は、5年で時効になる

現在の法律では、家賃の支払いは5年で時効になるとされています。みらい総合法律事務所の水村元晴弁護士による解説をご紹介します。

ただし、家賃支払請求権は、定期給付債権として5年で時効消滅します(民法169条)。そのため、借主がこの消滅時効を主張した場合、大家は、支払期限から5年が経過した分の家賃は請求できません。

出典:相続した貸家で10年以上支払われていない家賃滞納発覚!遡って全額請求することは可能?【それ合ってる?大家さん】-不動産賃貸経営博士-

家賃は、「定期給付債権」となり、滞納して5年が経過すると、「時効援用」ができるようになります。
「時効援用」の手続きを取ることで、時効が成立し、返済義務が消滅するわけです。

「時効援用」の手続きを取らなければ、時効は成立しない

ただ5年間が経てば、勝手に時効になる…という事ではありません。債務の消滅時効は、「時効援用」という手続きを取らなければ、何年たっても成立せず、返済義務が消滅しません。

家賃の時効のカウント(時効の起算点)は、毎月の家賃の支払日から、個別に進行する

家賃の時効のカウントは、「毎月の支払日」ごとに個別に進行します。

たとえば、2018年の4月分と5月分の家賃を滞納したとしましょう。すると、4月分の家賃の時効は2023年の4月、5月分の家賃の時効は2023年の5月…というように、時効の成立するタイミングも、1ヵ月ごとに個別にやってくる事になります。

よって、1年分の家賃を滞納している場合でも、5年後に滞納している家賃1年分がすべて同時に時効になるわけではなく、一番古い支払日のものから順に時効になるわけです。

出典:千葉いなげ司法書士行政書士事務所

つまり、家賃の滞納から5年以上経過しても消滅時効に掛かるのは、「5年を超えた分だけ」となります。
5年を超えていない分の家賃は時効に掛からず請求されますので注意しましょう。

家賃保証会社からの督促は時効の起算点が変わる

賃借人であるあなたが家賃を滞納したとしましょう。大家さんや不動産管理会社が家賃保証会社を利用している場合は、家賃保証会社があなたに変わって滞納した分の家賃を払います。これを代位弁済と言います。
この時点で家賃保証会社は、あなた(債務者)に対して求償権が発生し、あなたの支払先は大家さんではなく家賃保証会社(=新たな債権者)に変わります。

このように、家賃保証会社が滞納家賃の代位弁済(肩代わり)をした場合は、求償権という新たな債務が発生しているので、代位弁済したときの翌日が時効の起算点となり、新たな時効がスタートします。

時効中断など、相手が対抗要件を備えている場合もある

滞納したまま5年間経てば、必ず時効援用が成立するとも限りません。債務の消滅時効には、時効期間のカウントをリセットする「時効の中断」があります。

債務承認、裁判所の督促、内容証明郵便による督促などが、「時効の中断事由」にあたります。

詳しくは、以下の記事で解説していきます。

★家賃滞納の時効援用は、仕組みがとても難しい

ここまでお読みいただいて、「わかったような、わからないような…」という気分の方が多いのではないでしょうか。

ただでさえ直感的に理解しにくい「時効援用」。それに加えて、家賃の場合、定期給付債権という特徴があるため、より複雑な形になっています。
さらに、これは後ほど詳しく解説しますが、2020年の民法改正により、家賃の時効に関するルールも変化します。こうした事情もあるため、少しネットで調べただけでは、とても理解できないのが当然です。

ですから、何もかも自分で調べよう、理解しよう…と務めるよりも、時効援用に強い弁護士・司法書士・行政書士の無料相談を活用したほうが良いでしょう。
法律や法務の専門家に、詳しい話を直接聞くのが、もっとも確実で安心です。

時効援用に強い弁護士・司法書士に無料相談

こんな場合は家賃の時効援用できる?悩みの具体例

ここからは、滞納家賃の時効援用について、もう少し具体的な事例を見ていきましょう。
実際に必ずこの通りになるとは限りませんので、あくまでイメージを掴むためのフィクションとしてご覧ください。

昔の家賃を放置したまま引っ越し…忘れていたころに滞納家賃の督促がきた!

「家賃を滞納したまま引っ越した」
「昔の家の家賃が未払いのまま、転居して放置している」

まずはこうした状況を考えてみましょう。

「未払いの家賃が残っているとはいえ、もう前の家は契約を解除して引っ越したから、問題にならないのでは?」
「前のマンションの家賃なんて、もう済んだ話」

と考える人もいるのではないでしょうか。
まして、前の家の大家さんや家賃保証会社から、督促も来ていない…となると、完全に油断しきってしまう人も多そうですね。

ですが実際には、引っ越した後も、前の家の未払い家賃は無くなったわけではありません。そのため、何年も経ってから急に督促が来て、驚いてしまう事もあります。

ただ、こうしたケースでは、「滞納家賃の時効援用」ができる可能性もあるでしょう。
すでに時効が完成しており、あとは“時効援用”を手続きするだけで、返済義務が消滅できる場合もあります。

とはいえ、確実に時効援用ができるとも限りません。相手が対抗要件を備えている場合もあります。

「前の家の家賃を滞納したまま引っ越して、何年も経っている」という方は、時効援用に強い弁護士・司法書士・行政書士に相談してみると良いでしょう。

何年も前に、家賃を滞納してしまった。その後の家賃は払い続けているけど、滞納した時の家賃は未払いのまま…

たとえば、2013年の4月、5月、6月分の家賃を払えなかった…としましょう。次の7月から現在までは、家賃をしっかり払っています。しかし、払えなかった2013年4月、5月、6月分は、未払いのままです。

こうした状況を考えてみましょう。
この場合、時効援用ができるかどうかは、判断が難しいところです。
なぜなら、大家さんや不動産管理会社が、帳簿上でどう処理しているかによって、変わってくるからです。

たとえば、2013年7月分だと思って払った家賃が、未払い分の2013年4月分に、翌8月分だと思って払った家賃が、未払い分の2013年5月分に…と、順番をずらして充当されている可能性もあります。

こうなると、本人としては「2013年4月、5月、6月分を未払い」と思っていても、実際には、「直近三か月分の家賃が未払い」という風に処理されている事になります。そのため、時効援用での解決は難しくなるでしょう。

一方、「2013年4月、5月、6月分を未払い」「翌7月から現在までは未払いなし」といった会計処理がされていれば、2013年4月、5月、6月の未払い家賃は、2018年の同月に、順番に時効を迎える可能性もあります。

このパターンでは、ほかに時効の中断事由がなければ、時効援用ができるかもしれません。
一方で、「滞納以降に行った家賃の支払いが、家賃債務に対する債務承認になっている」等、相手側からさまざまな反論が来ることも想像できます。

このように、

「過去に家賃を払えなかった時期があった」
「その時の未払いを解消しないまま放置している」

…といった場合、時効援用ができるかどうかの判断は、とても難しくなります。そのため、時効援用に強い弁護士・司法書士・行政書士に、まずは無料相談を行ってみましょう。

今月の家賃を滞納してしまった…5年間逃げ切って時効成立を狙える?

続いて3つめのケースです。
直近で家賃を滞納してしまい、「このまま督促が来ても無視して、時効で逃げ切りたい」という場合ですね。

残念ながら、こうした「時効を狙って逃げ切る」ことは、非常に難しくなります。現実的にほぼ不可能と言って良いでしょう。
というのも、近年は、家賃保証会社や不動産管理会社、弁護士事務所などによる「未払い家賃の回収業務」のノウハウが発達しているためです。

そのため、こうした場合は、「きちんと家賃を払う」「事情があって払えない場合は、債務整理を検討する」といった対応が解決策となるでしょう。

次のページでは、債務整理によって滞納家賃を解決する方法をまとめています。

家賃滞納による立ち退きや裁判を防ぎ、返済を減額する方法

滞納家賃が、「いつから何年で時効」(時効の起算点)になる?今後、法律が変わります

複雑な話が続いていますが、最後にもう一点だけ、未払い家賃の時効援用について、抑えておきたい話があります。

「いつから5年間で時効になるのか」といったポイントを、「時効の起算点」と呼びます。この時効の起算点などに関する法律が、2020年の改正民法施行により、今後は変わっていきます。

時効援用に関する法改正について、詳しくは、次の記事で解説していきます。

ここでは、家賃の消滅時効に関係する部分だけを見ていきましょう。


現在の法律では、「支払期限から5年」が原則となっています。これは、現行民法第169条の「定期給付債権の短期消滅時効」によるものです。

【現行(2020年以前)民法第169条 定期給付債権の短期消滅時効】
年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。

しかし、民法改正により、この「短期消滅時効」そのものが法律から削除されます。かわって、新しい判断基準での時効のカウントが行われるようになります。

【改正後(2020年以降)民法 第168条】
1.定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。
前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。

2.定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

出典: 【新民法条文】定期金債権の消滅時効(168条)・定期給付債権の短期消滅時効(改正 弁護士紹介 コラム詳細 神戸合同法律事務所 archive

かんたんにまとめれば、

時効カウントのスタート地点が変わる
いつから何年か、というルールが変わる

という事が大きな違いです。
さらに家賃に場合、「定期金」になるため、改正後民法第168条第2項の適用対象になると考えられます。

この結果、債権者(=大家さんや家賃保証会社)は、債務者(=あなた)に対して、時効の更新の証拠を得るため、いつでも承認書の交付を求めることができるようになります。

「時効の更新」というのは、現行民法における「時効の中断」のようなものです。時効期間のカウントリセットのことだと考えて下さい。

つまり、民法改正により、滞納家賃の時効カウントを、より簡単にリセットできるようになると解釈できます。

こうした改正民法の施行も見通すと、家賃の時効援用は、今後はどんどん難しくなっていくでしょう。

「もう時効かもしれないけれど、まだ時効援用をしていない」

そんな過去の家賃滞納を抱えている方は、今のうちに時効援用に着手したほうが良さそうですね。

時効援用に強い弁護士・司法書士

 

 

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