特定調停できない借金とは?できる条件とできない条件

投稿日:2018年8月28日 更新日:

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★この記事を読んでわかること
(約3分で読めます)
  • 債務整理の一種である「特定調停」には、できる条件・できない条件はある?
  • 手続きができても、借金減額が必ずしもできるとは限らない…特定調停の持つ、知っておきたい特徴とは?
  • 本当に特定調停を選ぶべき?デメリットもふまえて慎重な判断を

この記事では、債務整理の一種類である「特定調停」について、できる条件やできない条件などを解説していきます。

特定調停は、借金などの減額を行う“債務整理”の一種類です。
借金やクレジットカード等、各種の支払いや返済について、返済計画の立て直しをはかるのが一般的です。

「弁護士や司法書士に依頼せずに、自分でできる債務整理」と説明される事もありますが、現実にはそう簡単な話でもありません。
なお、“本当に自分でできるか”といったテーマについては、次の記事で詳しく触れていきます。

今回は、「特定調停できる借金・できない借金」など、条件的な部分に注目して、解説を進めていきます。

特定調停の条件は、「返済や支払いが難しい」=「特定債務者」であること

特定調停の条件は、実は非常にシンプルです。

「借金などの返済や支払が難しい」
「このままでは生活や仕事が維持できない」

…といった状況にある事が、特定調停の条件とされています。
これが、特定調停法第2条で定められている、特定調停の条件です。なお、法律上は「特定債務者」と呼ばれています。

第二条
この法律において「特定債務者」とは、金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの又は債務超過に陥るおそれのある法人をいう。

出典:特定調停法-衆議院

整理する対象が、“金銭債務”であることも条件

もう一点、厳密な話をすれば、“金銭債務があること”も条件とされています。金銭債務とは、言ってしまえば「お金を払う約束」のことです。これも、先ほどの特定調停法で定められています(同法第2条2項)。

  • 銀行カードローンやキャッシング、サラ金
  • クレジットカードの返済(リボ払い・分割払い・ボーナス払いなど)
  • 住宅ローンや自動車ローン
  • 奨学金の返還
  • 家賃滞納、携帯電話料金の滞納
  • 債権回収会社や保証会社からの督促・取り立て

…など、こうした悩みをお持ちの方は、“金銭債務が履行できない”という状態ですから、特定調停の条件を満たしている事になるでしょう。

借金の理由などの条件は、特定調停では問われないが…

特定調停の条件は、一口にまとめれば、「借金などが返せず、困っていること」となります。
そして法律上は、これ以外の条件は特に規定されていません。

「たったのそれだけ?ギャンブルや浪費の借金でも、特定調停で減額できるの?」

…という声が聞こえてきそうですね。
これについては、“手続き上は、問題ない”と言って良いでしょう。
ただし、あくまで手続き上の話です。

特定調停は、かならず減額できる手続きではない

特定調停について、ぜひ知っておいて頂きたいことは、「かならず減額できるわけではない」という事です。
大切な話なので、順を追って解説します。

まず、特定調停は、裁判所を通して行う債務整理の手続きです。ただし特定調停の場合、原則として裁判所は、「話し合いの場所と、話し合いを助ける専門家(調停委員)を提供してくれるだけ」です。

個人再生や自己破産では、最終的には裁判官の判断で、減額や免除がどうなるか決まります。しかし特定調停の場合、裁判官が「こうしなさい」と決めるわけではありません(※十七条決定という例外はありますが、ここでは原則を解説していきます。)

そのため特定調停では、「不成立」という結末も十分にあり得ます。

つまり、特定調停の申し立てはできました、裁判所に行って、債権者と話し合いを行いました、でもその結果、借金は一円も減額されませんでした…という事があり得る手続きなのです。

手続き自体は可能でも、借金が減額できるかどうかは別問題

こうした特定調停の特徴を考えると、「ギャンブルや浪費などの借金でも、特定調停で解決できる」とは、必ずしも言えないでしょう。

確かに、ギャンブルや浪費などの借金でも、手続きとして“特定調停をする”ことは可能です。
ただし、特定調停の手続きをした結果、相手側の債権者から、

-「ギャンブルに使ってしまったんですか?それは自己責任じゃないですか。とても減額なんて認められませんよ」

…と突っぱねられ、1円も減額できずに終わる可能性も、十分に考慮しなければいけません。

特定調停は、「手続きができる」ことと、「借金が減額できる」ことが、必ずしもイコールではないのです。

税金や保険料などの滞納は整理できない

細かい条件の規定が無い「特定調停」ですが、税金や社会保険料・国民健康保険料(公租公課)などの滞納は、解決できないと考えて良いでしょう。

理由は諸説あるのですが、

他の債務整理の手続きでも、「減額・免除できない」と定められている
税金や保険料などの場合、債務整理とは別に、減額や免除の手段が定められている

といった理由が挙げられます。
ほかにも、

一部の損害賠償
養育費など民法の定める婚姻費用や扶養義務に基づく支払
事業主の被雇用者に対する給与・賃金の支払い
罰金

といったものも、同様の理由で難しくなるでしょう。

ただしこれは、特定調停に限った話ではなく、任意整理・個人再生・自己破産でも同様です。

そもそも特定調停を選ぶべきか?という問題も

特定調停について定めた「特定調停法(特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律)」は、あまり細々とした規定が多くない法律になっています。

「借金をこのぐらい減額しなさい」
「こういう場合は、減免が認められません」

といった事が、個人再生や自己破産では、それなりに具体性を持って定められているのですが、特定調停にはそうした条件が特にありません。

明確な基準がない以上、「話し合いの結果次第」となるでしょう。

同じく基準を持たない任意整理では、弁護士や司法書士が交渉を行ってくれるので、債務整理に強い弁護士・司法書士に依頼すれば、一定の成果は見込めます。

ですが特定調停の場合、いわゆる素人である私たち一般個人が、金融のプロを相手に話し合いを行うことになります。
明確な「減額できる・できないの条件」が無い中で、プロを相手に話し合いをして、その結果次第になるわけです。

そう考えると、特定調停の“手続きは”できたとしても、“返済の減額など、借金の解決は”ほとんどできない恐れも、十分にあるでしょう。

現に、債務整理に詳しい専門家の間でも、

「特定調停で期待できるのは、一括返済を分割にするぐらい」
「遅延損害金の免除や、将来利息のカットも難しい」
「過払い金があったとしても、特定調停では取り戻せない」

…など、否定的な見方をする声もあります。

こうした特定調停のデメリットも踏まえた上で、「そもそも本当に特定調停で良いのか」という所に立ち戻って、考え直してみたほうが良いでしょう。

ただし、特定調停は、「手続きができる・できない」という話と、「借金などの減額ができる・できない」という話を区別して考える必要があります。

また、明確な減額基準なども持たないため、実際にどうなるかは、債務整理の経験豊富な弁護士や司法書士でなければ、判断がつかないでしょう。

ですので、特定調停の利用を検討したい場合、依頼するかどうかは別として、弁護士・司法書士への相談だけは、行っておいたほうが安心です。

-特定調停

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