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この記事では、「自分で特定調停をしたい」という相談事例をご紹介していきます。[1]
借金などの返済を解消する「債務整理」には、大きく分けて、「任意整理」「自己破産」「個人再生」「特定調停」といった4つの種類があります。
そのうち一つである「特定調停」は、「弁護士・司法書士に依頼しなくてもできる」とされているため、
「弁護士費用を払えない(または、もったいない)から、自分で特定調停をして、借金返済を解消したい」
と考える人もいるようですね。
今回ご紹介するのは、まさに、こうした相談事例です。
悩みの内容
- 複数の消費者金融や銀行カードローンで借金がある。
- 返済をなんとか減らしたいが、弁護士費用がもったいないので、自分で特定調停の手続きをしたい。
- なので、手続きの方法を教えて欲しい
「自分も似たような悩みがある」という方は、ぜひご覧ください。
弁護士費用がもったいない…特定調停なら自分でできる?方法は?
まずは、この事例の詳細情報をまとめていきます。
性別 | 年齢 | 職業 | 月収 | |
相談者(本人) | 男性 | 40代 | 自営業 | 不明 |
借入先 | 借入件数 | 債務残高 | 月々の返済額 |
銀行カードローン | 複数 | 不明 | 不明 |
消費者金融 | 複数 | 不明 | 不明 |
借金の理由
- 借金の詳細は不明
※借金などの返済の相談は、何もかも話さなければいけない…というものではありません。そのため、聞きたい内容だけを聞いて、借金の詳細については話さない人もいるようです。
相談者の希望
- 借金の返済に困っており、減額したい
- しかし、債務整理をするのに弁護士費用がもったいない
- 弁護士費用のかからない特定調停をしたいので、方法を教えて欲しい
専門家の回答:本当に特定調停で良いのか、弁護士・司法書士に確認を
続いて、この相談者の悩みに対して、専門家がオススメしたアドバイスと、その理由を見ていきましょう。
専門家のアドバイス
- 特定調停は確かに自分でできるが、調停調書が「債務名義」となり、調停後に滞納すると、すぐに差し押さえを受けてしまうというデメリットがある。
- 自分で申し立てをする前に、法テラスや弁護士・司法書士の無料相談窓口を利用し、本当に特定調停で良いのか確認を。
弁護士・司法書士への無料相談を勧めた理由
- 特定調停にはリスクやデメリットもあるため。
- 裁判所に聞いても、教えてもらえるのは、手続き的な部分だけで、「どの方法が適しているのか」までは教えてもらえないため。
- 本当に特定調停が適しているのか、自己判断だけでは難しいため。
弁護士・司法書士への無料相談を行った結果
- 特定調停のほか、任意整理や個人再生といった他の解決方法もある。
- 弁護士費用が払えない場合も、「後払い・分割OK」で、費用の心配をせずに債務整理できる。
- 特定調停はあまり減額できないので、他の手続きにしたほうが、トータルでの経済的負担は安くなる。
- 他の手続についても、詳しい説明を聞いて、もう一度考え直すことに。
特定調停のデメリット:費用が安くても、返済が減らなければ意味がない
それでは解説を始めましょう。
今回の事例のポイントは2つあります。
- 債務整理は、費用が安い=負担が少ないワケでは無い
- 特定調停は「自力でできる」が成功するとは限らない
この2点がポイントになります。
債務整理は、「費用の安さ」だけでなく「どのくらい返済を減額できるか」も重要
債務整理は、「借金などの返済を減額・免除する手続き」と言われます。
ですが実際には、債務整理には「任意整理」「個人再生」「特定調停」「自己破産」の4つの種類があり、それぞれ費用だけでなく、減額できる金額も違います。
簡単に傾向だけを示すと、次のようになります。
費用 | 返済減額 | |
特定調停 | 安い | ほぼ期待できない |
任意整理 | やや安い | 将来利息カットなどによる減額 |
個人再生 | 普通 |
将来利息カット 元金も最大1/10まで減額 |
自己破産 | -- 財産のある人は負担が大きく、財産の少ない人は負担が少ない |
原則、全ての返済を免除 |
このように、特定調停は「費用は確かに安く済むが、借金減額はほとんど期待できない」手続きです。
いくら費用が安くても、かんじんの返済減額がほとんどできなければ、結果として“お財布から出ていくお金”は、他の手続きよりも大きくなってしまう恐れもあります。
特定調停が適しているのは、「返済計画の立て直しが目的」という人
たとえば、「減額はできなくていいし、利息も払うけれど、返済計画の見直しだけ話し合いたい」という人には、特定調停は向いているでしょう。
しかし、今回の事例のように“多重債務”に陥っている場合、特定調停だけでは、生活を立て直すのが難しいと考えられます。
特定調停後に返済を滞納すると、すぐに差し押さえを受けてしまう
また、特定調停は調停調書が“債務名義”になるので、「調停後に返済を滞納すると、すぐに差し押さえを受けてしまう」というデメリットもあります。
“特定調停は、返済減額はほとんど期待できない”ことと、合わせて想像してみましょう。
- 「借金返済に困っているけど、費用がもったいないから、自力で特定調停を行った。」
- 「しかし、ほとんど返済が減額できず、返済計画を少し見直しただけで成立してしまった。」
- 「調停後もあいかわらず返済が苦しく、仕方なく滞納したら、いきなり差し押さえを受けてしまった」
特定調停は、こうした危険性がある手続きなのです。
“自分でできる”特定調停は、“自分でやってうまくいく”という意味ではない
そもそも、「特定調停は自分でできる」という言い方自体が、かなり不親切だと筆者は思っています。
特定調停に応じるかは相手次第
これは、特定調停は“話し合い”により解決を図るので、相手の業者にそのつもりがなければ拒否することが可能だからです。
多くの業者は特定調停に応じてくれるようですが、返済滞納や督促を放置していたなど、あなたに明らかな瑕疵(かし)がある場合、特定調停を拒否されてしまう可能性もあるでしょう。
また、たとえ特定調停で協議ができたとしても、話し合いがまとまらなかった場合は、裁判所が「17条決定」を出すか、不成立として終了します。
特定調停も、厳格な法的手続きの一つ
しかし、特定調停が“気軽な話し合い”ではない事にも注意が必要です。
特定調停は、
- 民事調停法
- 特定調停法
の2つの法律に基づいて行われる、厳格な法的手続きです。
ですので、これを適切に行うためにも、やはり最低限の法的知識は必要になります。これは条文の知識だけでなく、過去の判例や、近代法の理念・原則・法理なども含まれてきます。
また、特定調停の調停調書が“債務名義”となるので、借金が減額されなかったとしても、滞納してしまえばすぐに差し押さえを受けてしまう事にも留意が必要です。
こうした事を踏まえ、特定調停が、決して“ゆるい手続き”ではないことは、心得ておく必要があるでしょう。
特定調停の利用や、自分で行うことも、法で定められた“国民の正当な権利”です。ですから、「特定調停はダメ」とか、「特定調停はするな」と言うつもりはありません。
しかし、「本当に特定調停がベストなのか?」といった事だけでも、法律専門家の助言を受けたほうが良いでしょう。
このことは、以下の通り、裁判所も公式にアナウンスしています。
少なくとも,個人再生手続,破産,調停,任意整理など各種の負債整理の手続のうち,自分がどれを利用するのが適切なのかについては,是非弁護士に相談するのが妥当でしょう。
公平・中立な司法機関である「裁判所」も、このように言っています。
「特定調停にしよう」と自分で決める前に、まずは弁護士や司法書士に相談することが大切です。
また、「弁護士や司法書士に相談するのは、少しためらってしまう」という方は、気軽に利用できる返済減額シミュレーターもオススメです。
--脚注、参考資料--
[1]本記事は、下記資料掲載の事例をもとにしています。
返済困難者相談支援の相談事例集
平成30年10月 大阪府商工労働部中小企業支援室金融課 相談事例C-(2)