特定調停とは?デメリットとメリットまとめ

投稿日:2018年5月13日 更新日:

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★この記事を読んでわかること
(約5分で読めます)
  • 債務整理の手続きの一つ「特定調停」とは?特徴やメリット・デメリットを解説。
  • 弁護士や司法書士に依頼せず、自分でできる債務整理。費用も安いのがメリット。
  • 一方、元金減額や利息・遅延損害金のカットはほとんどできず。他にも無視できないデメリット多数。その内容とは?

この記事では、債務整理の手続きの一つである「特定調停」について解説していきます。

特定調停とは

特定調停とは、任意整理、個人再生、自己破産と並ぶ債務整理のうちのひとつです。
借金やクレジットカード等、各種の支払いや返済について、返済計画の立て直しをはかる手続きです。

裁判所の「調停委員」と「調停委員会」が間に入る

特定調停は、債務整理の専門家による「調停委員」と、裁判官による「調停委員会」が、債権者(銀行や消費者金融など)と債務者(返済する人)との間に入り、和解を取り持ちます。

弁護士や司法書士に依頼せずに、自分で手続きできる

他の債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)では、弁護士や司法書士に依頼して行うのが一般的です。一方、特定調停の場合は、弁護士や司法書士に依頼せずに、自分で手続きできます。
(※調停委員には弁護士や司法書士が入りますが、自分で選んで依頼することはできません)

特定調停を申し立てる人(特定債務者)

特定調停は、借金などを従来の約束(契約)どおりに払えなくなった人が、返済計画の見直し等を、裁判所に求める手続きとなります。
この、「借金などを従来の約束どおりに払えなくなった人」のことを、特定調停の手続きにおいては、「特定債務者」と呼びます。

★特定調停は、“支払・返済(金銭債務)”の解決に用いる手続きです

特定調停は、支払・返済など、“金銭債務”の解決に用いられる手続きです。よく似た名前の手続きに「離婚調停」などがありますが、こちらとは別の手続きとなります。

特定調停の手続きの流れ

特定調停の手続きに流れについて、簡単に説明します。
申し立ての必要書類や費用、管轄裁判所については、次の記事で詳しく解説します。

:申し立て
管轄裁判所に必要書類を提出し、特定調停の申し立てを行います。

:事情聴取期日
借金などの返済ができなくなった理由や、生活状況、収入、今後の返済計画について、事情聴取を受けます。

:調整期日
債権者(銀行やサラ金など、お金を払う相手)との交渉で、返済額や返済計画などの和解方法を調整します。

:調停成立or調停不成立
今後の返済計画などについて、双方の合意できれば、「調停成立」となります。合意に至らない場合、「調停不成立」として手続きが終了します。
また、合意に至らなかった場合も、「17条決定(正式名:特定調停に代わる決定」により、裁判所の職権で調停成立とされる場合もあります。

特定調停の効果とメリット

次に、特定調停に期待される効果とメリットをご紹介します。

取り立てがストップする(ただし、数日は掛かる)

特定調停の申し立てが裁判所に受理され、各債権者に通知が行われると、原則として取立てがストップします。

ただし、「申し立ての書類を整える」⇒「裁判所に受理される」⇒「裁判所から債権者に通知される」という3ステップが必要なので、早くても何日かは掛かるでしょう。

一方、他の手続き(任意整理、個人再生、自己破産)では、依頼した弁護士や司法書士が直接債権者に受任通知を送るため、最短即日で取立てがストップします。

返済計画を立て直すことができる(ただし、減額は期待できない)

特定調停の効果は、「返済計画を立て直す」というものです。今よりもっと長い期間での返済計画に立て直せば、月々の返済額は少なくなるかもしれません。

ただし特定調停では、“債務そのものの減額は期待できない”ので、注意が必要です。

たとえば、任意整理では将来利息や遅延損害金をカットします。利息の引き直し計算で過払い金が発生していれば元金を減らすことも可能です。また、個人再生では全ての債務を5分の1程度に減額できます。
ですが、特定調停の場合は、利息も遅延損害金もカットできず、元金も減額できないのが通常です。

手続きの費用が安い(ただし、トータルでの負担は大きい)

“弁護士や司法書士を雇わなくて良いぶん、手続き費用が安い”というのは、特定調停のメリットの一つです。そのため、「費用の出費を抑えたいから、特定調停で債務整理したい」という方も多いようです。

とはいえ、「トータルでの(=総合的な)負担」を考えると、特定調停は、必ずしも安いとは言えません。なぜなら、肝心の返済減額の効果が、特定調停ではほとんど期待できないからです。

手続き費用がいくら安くても、借金が“ほとんど減額できない”となれば、他の手続きよりもトータルの負担が大きくなってしまいます。
この点については、次の記事で詳しく解説します。

手続き期間が短い(ただし、“一番早い”わけではない)

特定調停は、申し立てから2か月程度で手続きが終了します。裁判所を通す手続きとしては、比較的早いほうだと言われています。
ただし、この分野に強い弁護士・司法書士であれば、同じくらいの早さで“任意整理”もできるでしょう。

特定調停では借金の減額はあまり期待できませんが、任意整理なら減額も可能なことが大半です。
そう考えると、「なるべく早く手続きを終えたい」という場合も、自分で特定調停を行うより、弁護士・司法書士に依頼して任意整理を行ったほうが、メリットが大きくなるでしょう。

特定調停のデメリット

債務(借金など)の減額はほとんど期待できない

債務整理は、借金に限らず、クレジットカードや家賃滞納、奨学金などの金銭債務(払う約束をしたお金)を減額する手続きです。
ですが特定調停の場合は、債務の減額そのものは、実はほとんど期待できません。元金はもちろん、利息や遅延損害金もカットできない事がほとんどです。

払わなければいけない金額が、他の債務整理よりも大きくなる

「債務の減額がほとんど期待できない」のは、特定調停ならではのデメリットです。

債務整理には、特定調停のほかに「任意整理」「個人再生」「自己破産」といった手続きがあります。それぞれ、どのくらい減額が期待できるかを比較してみましょう。

任意整理 ・利息と遅延損害金をカット。
・場合により元金の減額も可能。
個人再生 ・すべての債務を、5分の1程度に減額。
・「1000万円のローンを200万円に」など、数千万円レベルでの借金減額もできる。
自己破産 ・すべての債務を原則として免除。
・何千万円、何億円と借金があってもゼロにできる。
特定調停 ・元金、利息、遅延損害金のいずれも減額が難しい。
・場合により、将来利息はカットできる可能性がある。ただし、未払利息はカットできず、任意整理よりも払う額が大きくなることも多い。

つまり特定調停は、

債務整理の中で、もっとも減額が期待できない
借金返済の負担(払わなければいけない金額)が大きくなる

というデメリットがあります。

平日の昼間に、裁判所に出頭しなければいけない

自分で申し立てて行う手続きですから、当然、裁判所に出頭するのも本人(自分)となります。裁判所で行うのは、事情聴取を受けたり、債権者と交渉したり…といった内容になります。
出頭する回数は、通常は2回程度とされています。ですが、交渉が行き詰まったり、債権者が多い(多重債務の)場合は、3回、4回と増えることもあります。

平日の昼間にしか開かれないので、仕事を休むのが難しい人にとっては、大きな負担になってしまいます。「職場や家族に内緒で債務整理したい」という人も、隠し通すのは難しそうですね。

ブラックリストに載る

ブラックリストに載ることは、他の債務整理と同様のデメリットです。
正確には、“個人信用情報機関に、特定調停を行ったことが、事実情報として記録される”と言ったほうが良いでしょう。

とはいえ、「債務整理が必要な状況」であれば、滞納などが原因で既にブラックリストに載っているか、遅かれ早かれそうなるか…といった状態でしょう。ですので、債務整理によるブラックリストは、あまり気にする必要はない…と言われています。

「ブラックリスト」というとインパクトが強い印象ですが、特定調停の実質的なデメリットとしては、他のポイントのほうが大きいでしょう。

必ずしも希望通りに成立するとは限らない

特定調停には、「17条決定」で成立するケースもあります。お互いの交渉がこじれてしまった時、裁判所が「こうしなさい」と職権で決めてしまう成立方法です。

自分は「もっと減額して欲しい」「元金も減らして欲しい」と思っていても、債権者が応じ無い場合、17条決定によって“ほとんど借金が減らせないまま”成立してしまう…という可能性もあります。

調停調書によって、差し押さえ(強制執行)が可能になる

特定調停が成立した後、調停での約束どおりにお金を払えないと、すぐに差し押さえ(強制執行)を受けてしまいます。
これは特定調停で作成した調停調書が「債務名義」と同じ効力を持つためです。

本来、差し押さえ(強制執行)は、いろいろと段階を経て取得した「債務名義」に基づき執行されます。ですが、“特定調停の成立後の滞納”に対しては、調停調書が「債務名義」にあたるため、一気に差し押さえ(強制執行)命令まで行ってしまいます。

たとえば、17条決定が出されて、不満の残る結果で成立した…といった場合でも同様です。

★特定調停のデメリットは、無視できないほど大きい

特定調停のデメリットは、無視して良いほど小さなものではありません。
たとえば、“悪いケース”を想像してみると、こんなシナリオが想像できます。

頑張って書類を整え、平日の昼間に何度も裁判所に呼び出され、苦労したのに返済はほとんど減額されず。
返済期間が少し伸びて、月々の返済額がほんのわずかに減っただけで、元金も利息も遅延損害金も一切減額なし。
それでも“特定調停をした”という理由で、ブラックリスト入り。
おまけに、調停成立後に一度でも滞納をしたら、あっという間に差し押さえ(強制執行)。

ほかにも、「調停が不成立に終わり、時間・費用・労力がすべて無駄になり、さらにブラックリストに載ってしまう」といったパターンもあるでしょう。様々なデメリットがある分、“失敗パターン”もたくさんあります。

自分で特定調停を行う前に、弁護士・司法書士の“無料相談”だけでも活用を

特定調停のデメリットとメリットを比較すると、デメリットは決して無視できず、非常に難しい手続きだとわかります。

たしかに特定調停は、債務整理の費用を抑えて「自分で行える」手続きです。
ですがそれは、「自分で申し立てできる」という事に過ぎません。
「自分で行って失敗しない」ということでもなければ、「自分で行って借金を解決できる」という保証もないのです。

とはいえ、「それでも自分で特定調停を行いたい」という方もいるかと思います。

そこで当サイトとしては、自分で特定調停を行う前に、“弁護士・司法書士の相談だけでも”利用することをおすすめします。

 

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