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この記事では、債務整理のメリット・デメリットについて解説します。
“国の認めた借金減額の手続き”とも言われる債務整理。借金やクレジットカード、家賃滞納など、さまざまな返済を減額したり、免除できるので、メリットは大きいですね。
ですが一方でデメリットもあるので、注意も必要になります。
そんな債務整理のデメリットとメリットを、この記事では、わかりやすく簡単にまとめていきます。
債務整理には、いろいろな種類がある
債務整理には、実はいろいろな種類があります。
主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」「特定調停」といった種類があり、それぞれメリット・デメリットが違います。
まず、主なメリットとデメリットを比較してみましょう。
実際には、他にも細かな点がいろいろありますが、主に注目したい点をまとめました。
メリット | デメリット | |
任意整理 | ・今後の利息のカット ・遅延損害金の免除 ・返済計画の立て直し |
・ブラックリストに載る(一定期間で解除) ・あまり減額できない場合もある |
個人再生 | ・今後の利息のカット ・遅延損害金の免除 ・返済を1/5~1/10に大幅減額 ・残りも3~5年の長期分割に |
・ブラックリストに載る(一定期間で解除) ・官報に掲載される |
自己破産 | ・原則として、すべての返済が免除(免責)される | ・ブラックリストに載る(一定期間で解除) ・官報に掲載される ・一定以上の財産がある場合、清算が必要になる ・手続き中の期間のみ、一部の職業に制限あり (士業、保険外交員、警備員など) |
特定調停 | ・返済計画の立て直し | ・ブラックリストに載る(一定期間で解除) ・あまり減額できない場合もある |
気になるのは、やはりデメリットのほうですね。
「官報に掲載される」「ブラックリストに載る」など、不安になってしまう内容もあるかと思います。
ですので、こうしたデメリットについて、重点的に解説していきます。
★手続きごとの違いについては、こちらをご覧ください。
任意整理、個人再生、自己破産、特定調停の、それぞれの手続きごとのデメリット・メリットについては、別の記事にて詳しくまとめていきます。
《内部リンク予定:任意整理のデメリットとメリット》
《内部リンク予定:個人再生のデメリットとメリット》
ブラックリスト、官報掲載…債務整理のデメリットとは
債務整理のデメリットには、言葉だけ見ると恐ろしく感じてしまう内容もあります。ですが“実際にどうなるのか”を見ていくと、実は、あまり影響の大きくないものがほとんどです。
ブラックリストは、一定期間で解除される
「ブラックリスト」と聞くと
「一生ローンが組めなくなる」
「社会的な信用がゼロになり、誰からも信頼されなくなる」
といったイメージをお持ちの方も多いでしょう。
ですが実際には、それほど大きな影響を及ぼすものではありません。
そもそも、債務整理でブラックリストになる前に、遅かれ早かれ、滞納でブラックリストになってしまう人が大半です。この滞納を解消できなければ、ブラックリストも延々と続いてしまいます。ですが、債務整理で借金問題を解消できれば、ブラックリスト解除の目途も立ちます。
5年程度で解除される事が多いようですが、実際の経済状況が立ち直っていれば、ブラック状態でもローン審査などに通る場合もあるようです。
ブラックリストの情報は、一部の限られた人しか閲覧できない
ブラックリストといっても、破産者や滞納者の名簿がある訳ではありません。実際には、CICやJICC、JBAといった「個人信用情報機関」に登録された与信情報のデータベースとなります。ここに滞納など“金融事故”の記録が残っていると、ローン等の審査に通りにくくなるため、その状態を例え話として“ブラックリスト”と呼んでいます。
この「個人信用情報機関」の情報は、誰でも見れるわけではありません。
金融機関や信販会社、貸金業者などの加盟企業が、与信審査を行う時にだけ照会できる仕組みになっています。(その他、本人または法定代理人であれば、自分の情報に限って、照会も可能です)
ですので、たとえば子供の就職の採用面接で、親の信用情報をチェックする…といった事は、たとえ大手銀行やクレジットカード会社でもできません。
一般に広く知られたり、誰でも閲覧できる情報ではないのです。
官報への掲載も、実質ほとんどの人が目にしない
「個人再生」または「自己破産」となった場合は、官報にそのことが掲載されます。官報とは、日本国政府の発行する機関誌(新聞のようなもの)です。といっても、官報を日ごろからチェックしている人は、現実にはほとんどいません。
つぎの画像が、官報の紙面ですが、「見たことがある」「毎日読んでいる」という人は、いるでしょうか?
官報 平成30年8月20日(本紙 第7330号)
ほとんどの方が、日頃あまり目にしない紙面だと思います。
しかも、非常に細かい文字で、ぎっしりと書いてありますね。これが30ページ近く、しかも新聞のように毎日ちがった内容で発行されています。この細かい文字の中にほんの数行だけ、破産者の情報として、1日だけ掲載されるのです。
実際にあなたが「自己破産」や「個人再生」を行って、官報に掲載されたとしても、それに気がつく人はまずいないでしょう。
自己破産の財産処分(競売)は、“全て持っていかれる”わけではない
「債務整理って、借金が返せなくなる事でしょう?家や車だけじゃなくて、家具とかテレビとかスマホとか、何もかも持っていかれて、ホームレスになるのでは?」
そんな心配をされている方も、多いかもしれませんね。
ですが、これはまったく事実ではありません。
財産の処分があるのは、限られた状況の時だけ
まず、借金が返せなくなって、財産を没収されてしまうのは、「債務整理をせずに、差し押さえ(強制執行)を受けた時」と、「財産がある状態で、自己破産をした時」になります。
借金が返せなくなったときの対応 | 財産はどうなる? |
債務整理の「任意整理」を行う | 財産の没収や処分、売却などは無い |
債務整理の「個人再生」を行う | 財産の没収や処分、売却などは無い |
債務整理の「特定調停」を行う | 財産の没収や処分、売却などは無い |
財産がない人が、 債務整理の「自己破産」を行う (同時廃止) |
財産の没収や処分、売却などは無い |
一定以上の財産がある人が、 債務整理の「自己破産」を行う (管財事件) |
一定以上の財産が売却・換価される |
債務整理せず、滞納を放置 | 差し押さえ(強制執行)により 一定以上の財産が売却・換価される |
債務整理には、自己破産のほかにも、「任意整理」「個人再生」「特定調停」といった方法があります。また、自己破産でも“一定以上の財産がない”のであれば、財産の没収や処分もありません。
“自由財産”として、最低限の財産は保護される
自己破産の「管財事件」(財産がある状態での自己破産)など、財産の回収がされる場合も、“何もかも持っていかれる”という事ではありません。
法律により、「破産しても持っていて良い財産」が定められているからです(自由財産 破産法第34条3項)。また、法律の決まりには無いものの、「この人にとっては、絶対に必要」と思われる財産など、裁判所の判断で手元に残されることもあります(自由財産の拡張 破産法第34条4項)。
法律の専門家による債務整理なら、ホームレスの心配もなし
それでは、ホームレスになる心配も無いのか…というと、実は「まったく無いとは言い切れない」難しさもあります。
この心配は、住宅ローンの返済が残っている場合に当てはまります。不動産の抵当権や、「担保権の実行」など、複雑な法律の仕組みが関係してきます。
ですが、ホームレスになる危険性を回避し、借金問題を解決することも、債務整理の専門家なら可能でしょう。
「個人再生」+「住宅資金特別条項」による解決方法
…など、特別な解決方法もあるからです。
自己破産後に手にした財産は、すべて自由に持っていて良い
財産のある状態で自己破産し、「管財事件」となると、一定以上の価値のある財産は処分となってしまいます。
ですが、この状態は一生続くわけではありません。
自己破産の管財事件で、処分の対象となる財産は、「破産手続き開始の時点で持っているものや、将来受け取る約束のある財産」になります(破産法第34条1項および2項)
第三十四条
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
言い換えれば、自己破産後に手にした財産(新得財産)は、“自分のものとして、自由に持っていて良い”という事です。
そのため、自己破産で返済をゼロにし、借金をまっさらな状態にして、そこからまた財産を築き上げることも可能になっています。
マスコミに報道される、戸籍に傷がつく、子供の結婚や就職に悪影響…“間違い・デマ”に要注意
「ブラックリストになっても、一定期間で解除される」
「官報に載っても、実質だれも見ない」
「財産の没収も、限られた場合だけ。しかも保護される財産もある」
「債務整理で借金を解決した後も、また人生をやり直し、頑張って財産を築くことができる」
これが、“債務整理”のデメリットです。
こうして見ると、いかにデメリットが少なく、生活の建て直し・人生のやり直しが重視されているか、実感できますね。
「本当にこんなにデメリットが少なくていいの?」と、逆に疑わしく思う方もいるかもしれません。
また、こんなうわさ話を耳にした人も、いるのではないでしょうか。
- 債務整理や自己破産をすると、戸籍に傷がつく
- マスコミが家に押し掛けてきて、ニュースになってしまう
- 子どもが将来、就職や結婚できなくなる
- 世間から後ろ指をさされ、会社をクビになり、子どもも学校に通えなくなる
- 裁判所に身柄を拘束される
- 選挙権を剥奪される
- 基本的人権が制限される
…これらは、まったく事実ではない、むしろデマと言える話です。
こうした間違いの指摘は、数多くの弁護士や司法書士だけでなく、裁判所からも行われています。
たとえば次の資料は、大阪地方裁判所が、債務整理についてわかりやすく、会話形式で紹介している内容の一部です。
-B介-「せやけど,孫娘がなあ・・・。東京の孫娘が年頃で,ええ結婚話があるんですわ。ワシが破産なんかしたら,戸籍が汚れて,そのせいで孫娘の結婚が破談になってしまうんやないかと,もう心配で心配で・・・。(泣く)」
-弁護士-「大丈夫ですよ,安心してください,B介さん。破産しても戸籍に載ったりしませんよ。あなたが自分から破産したという話をしない限り,普通の人には,あなたが破産したということはまず分かりませんよ。」
-B介-「ほんまでっか。ワシの名前がマスコミに出たりしまへんか。」
-弁護士-「大企業の倒産じゃないんですから,あなたが破産しても普通の新聞には載りません。
債務整理のデメリットは、“思った以上に少ない”
自己破産など債務整理については、必要以上にネガティブなイメージが広まってしまっています。ですが実際には、“思った以上にメリットが大きく、デメリットが少ない”手続きと言えるでしょう。
ただ、債務整理は「誰でも同じ」とはならない面もあります。人によって借金の状態や、家計の状況、生活実態などが異なってくるからです。
「自分にとって、どんなメリットが期待でき、どんなデメリットがあるのか」
「どんな手続きを使えば、一番デメリットが少なく済むのか」
「借金を解消し、生活を立て直すために、自分にとって一番良い方法は何か」
こうした答えは、債務整理に強い弁護士・司法書士に、実際に相談しなければわかりません。相談して、あなたの話を聞いてもらい、診断してもらうことが大切です。
そのためにも、債務整理の相談を、まずは利用してみましょう。
次の記事で、債務整理の無料相談ができる弁護士・司法書士をまとめています。お悩みの方はぜひ、こちらもご活用下さい。