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- 強制執行(差押え)は、財産がバレなければ実行されない?財産隠しや逃げる方法についての噂を検証
- 「財産調査にコストと時間が掛かる」など、もっともらしい理由もあるが、実際には「財産開示手続き」により調査される
- 差し押さえから無理に逃げよう・隠そうとすると、強制執行妨害罪に問われる恐れも
- 強制執行を受ける前に、債務整理で返済問題を解決することが重要
強制執行・差し押さえについて、こんな話を聞いたことがないでしょうか?
「強制執行は、財産がバレなければ問題ない」
「預金口座や勤務先が知られていなければ、相手は調べるのに時間とコストが掛かり過ぎるから、実際に強制執行には踏み切れない」
…といったような、“差し押さえは逃げられる”という話です。
本当かどうかはわかりませんが、某大手掲示板の元管理人が、いくつもの裁判や差押えを“踏み倒している”という噂もあります。
それでは、本当に差し押さえ・強制執行は怖くないのでしょうか?
財産隠しや、“どうせ調べられないから差し押さえられない”といった主張は、現実的に正しいのでしょうか?
こうした疑問について、調べた結果をご紹介していきます。
“財産がバレなければ差押えは怖くない”という噂を検証
“財産がバレなければ、差し押さえはされない”といった噂は、結論から言えば“間違い”と言えるでしょう。
ですが、間違った噂が広がってしまうのには、それなりの理由があります。
そこでまずは、“差し押さえが怖くない”といった噂について、もう少し詳しく検証してみましょう。
まず、かんたんに強制執行の流れから見てみます。
債権者(差押えを行いたい人)が、裁判所に強制執行の申し立てをする
“どの財産に対して、強制執行するか”を、申し立てた債権者が指定する
「債権執行」「不動産執行」「動産執行」
それを元に、妥当と思われる申し立てについて、裁判所が執行命令を出す
裁判所や裁判所の執行官が、差し押さえを実行する
このような流れになります。
ポイントになるのは、“どの財産に対して、差し押さえを行うか”を、申し立てた債権者が指定するという仕組みです。
たとえば…
- 「〇〇銀行〇〇支店にある、債務者の普通預金口座の差押えを申し立てます。」
- 「債務者の勤務先企業である、株式会社○○に対して、給与差押えを申し立てます。」
- 「〇〇県○○市××町××ー××は、この債務者の所有する不動産なので、これに対し差押えの上、競売にかけます。」
といった風に、具体的な“相手の財産”を指定して、強制執行は行われます。
言い換えれば、“具体的な財産が何なのか、どこにあるのか”がわからなければ、差し押さえもできない…とも考えられそうです。
ですが、これは本当に正しいのでしょうか?
“調べること”(財産調査)は可能、ただし時間もコストも掛かるのでは?
もう一歩踏み込んだ話もあります。“財産調査”についてです。
“差し押さえは怖くない”という噂には、次のようなものがあります。
「債権者は、仮に裁判に勝ったとしても、そこから債務者の財産調査をしなければ強制執行できない。財産調査はとても大変で、銀行に手当たり次第に照会をかけたりと、莫大な時間とコストがかかる。よって裁判に訴えられて、負けて判決が取られても、現実には差押え強制執行にはならない」
財産調査には、莫大な時間と労力がかかってしまうので、結局それで財産が見つかって差押えできたとしても、赤字になってしまう、だから行わない…という主張です。
たとえば、債権執行における預貯金口座の差し押さえです。
相手がどの銀行のどの支店に口座を持っているか、わかっていれば早いですが…。それがわからない場合、弁護士会照会制度を利用し「適当な銀行・支店に目をつけて、逐一、照会を行う」しか方法がないという話もあります。
たとえば、「この人は新宿に住んでいるから、近くの銀行支店に口座を持っているだろう」と予想をつけて、新宿区内の各銀行・金融機関に照会をかけます。この作業だけでも、かなりの時間と手数料がかかってしまいます。また、口座名義人本人の同意が必要な場合もあり照会に失敗するケースもあります。運良く口座が見つかれば良いのですが、実際はまったく違う地方の信用金庫に口座を持っていた…なんてことになれば、もうほとんど発見のしようがなさそうです。
こうした困難が“予想される”ため、少なくとも、「口座がバレていない相手からは、強制執行はされないだろう」というのが、“差し押さえは怖くない”といった噂の根拠となっているようです。
一見、頭のいい人でも乗せられてしまいそうなほど、よくできた噂(ただし間違い)
いかがでしょうか?
ここまで、“差し押さえは怖くない”という主張の理由について、取りまとめてきました。
論理的にも筋が通っていて、よほど頭の良い人でも“納得させられてしまいそう”な話です。
ですが実際には、日本の司法システムは、それほど穴のある制度設計にはなっていません。
“財産のわからない相手に対しても、強制執行を行うための制度”が存在します。
債務者の財産隠しを防ぐ“財産開示手続き”とは
裁判上の手続きの中には、債務者の財産隠しを防ぐ“財産開示手続き”という制度があります。
債務者の財産が、どこにあるのか、どんな形であるのか…。一番よく知っているのは、持っている“債務者本人”です。そこで、その本人を裁判所に呼び出して、財産目録を提出させ、どこに何を、いくら持っているのか、裁判官の前で説明させることができます。
この財産開示手続きは、“自分が債権者である証拠”と“債務名義が確定していること”さえ揃えば、裁判所に申し立てできます。たとえば、スピーディーと言われている支払督促を経て訴訟判決にて債務名義を確定し、ローン契約書や取引明細を証拠として、すぐに財産開示手続きを申し立てることも可能でしょう。
この申し立てを受けると、裁判所は、債務者(取り立てを受ける側)を裁判所に呼び出します。債務者は、財産目録を作成・提出し、さらに裁判所に出頭して自分の財産について陳述します。これに対して債権者は、裁判所の許可を得て質問できます。
差し押さえを受ける側の視点に立てば、「財産を隠したり、預金口座や勤務先が知られていない場合、“裁判所で取り調べを受ける”ことになる」と言えます。
さらに、この“財産開示手続き”を拒否、出頭しない場合や嘘をついたりすると、制裁として30万円の過料を科せられることになります。
財産開示手続きの出頭を拒み続けることはよほどの大金持ちでない限り無理でしょう。
強制執行を妨害する行為は犯罪
債権執行(債権差押え)、不動産執行(不動産差押え)、動産執行(動産差押え)といった強制執行は国家の権力による強制力を使って行うものです。
そのため、これらを妨害する行為は刑法に定めのある「公務の執行を妨害する罪」にあたります。
警察官の公務を妨害する罪として「公務執行妨害罪」が有名ですが、強制執行(差し押さえ)を妨害する罪として以下のものも刑法に定められています。
刑法の定める「強制執行を妨害する行為の犯罪」
強制執行妨害目的財産損壊等罪
(刑法96条の2)
強制執行行為妨害等罪
(刑法96条の3第1項)(刑法96条の3第2項)
強制執行関係売却妨害罪
(刑法96条の4)
このように、強制執行を受ける際に、妨害したり、財産を隠したり、意図的に壊したりする行為は、これらの犯罪行為として罪に問われる場合があります。
強制執行は、“国家の力で行うもの”ですので、それを妨害することは、債権者の権利に対する侵害だけでなく、“公務の執行を妨害する行為”とも解釈されるためでもあります。
強制執行を妨害する行為は、刑法に定めのある“刑事犯”です。ですので、警察に捕まってしまう恐れもあるでしょう。強制執行を受けたら、素直に従うしかありません。
もちろん、差押え強制執行を受ける前に、債務整理で解決をはかることが、もっとも望ましいのは言うまでもありません。
“強制執行を受けたら、素直に従うしかない…と書きましたが、
不動産や預金、証券、車などはもとより、“職場から受け取る給与”や“換金可能な家財道具”など、様々なものが回収の対象になってしまいます。
「差押え禁止財産」として守られる財産は、ほとんど生活保護と同水準、しかも2か月分ほどしか保護されないとも言われています。
こうした点について、つぎの記事にて詳しく解説しています。
差し押さえ・強制執行を防ぐ方法とは?
実際に強制執行に至ってしまったら、もう逃れる術はないと言ってもいいでしょう。裁判所から執行命令が下されて、それでも逃げよう、隠そうとすれば、「強制執行行為妨害等罪など」に問われてしまうリスクもあります。
ですので、もっとも大切なのは、“強制執行(差し押え)を受ける前に、滞納問題を解決すること”です。
差し押さえというのは、払えなくなったらすぐに起こるものではありません。
仮執行付支払督促の確定、少額訴訟、通常訴訟など、裁判上の手続きを経て、判決により債務名義(強制執行する権利)が確定してから行われるものです。(執行証書を作っている場合など、例外もあります)
といっても、裁判上の支払督促など、最短数日で手続きが完了してしまうものもあるので、時間の余裕があるとは限りません。なお、カードローンやキャッシング、クレジットカード等の滞納では、この支払督促によってスピーディに判決が取られることが多いようです。
ですので、必ずしも“時間がある、まだ大丈夫”という事は言い切れません。しかし、差し押さえを防ぐために、お金がなくても、今すぐできることはあります。
それが、債務整理です。
債務整理は、「借金を減額する手続き」と言われたりしますが、実際には、“返せなくなった借金やローン、クレジットカード等の債務を、国(司法)の力を借りて、無理のない形で解決する手続き”です。
債務整理を実施すれば、少なくとも差し押さえ、強制執行に至る可能性は、かなり低くなると考えられます。
さらに、
任意整理による将来利息と遅延損害金のカット、および分割返済の計画の立て直し
個人再生による元金の減額(最大10分の1程度)、および3~5年の分割返済
自己破産による返済の全額免除
といった、返済負担を減らす効果、そして「最短即日での取り立てストップ」など、返済問題解決に役立つ、さまざまな恩恵を得ることが期待できます。