自己破産の申立書の書き方は?自分で作れる?管轄裁判所は?

投稿日:2019年4月3日 更新日:

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この記事では、「自己破産の申立書は自分で作れるのか」「書き方はどうなのか」「管轄裁判所はどこになるのか」といったことを解説していきます。

こうした疑問をお持ちの方は、

「自己破産を自力で行いたい」
「弁護士や司法書士に頼まずに、自己破産をしたい」
「自分一人で自己破産をする場合、どうなるのか様子を見てみたい」

と考えている人が多いかと思います。
ですので、“自力で自己破産”の観点に立って、解説をお届けしていきます。

自己破産の必要書類

自己破産の必要書類は、各地の裁判所によって異なります。
(自己破産の管轄裁判所は、各地の地方裁判所となります。詳しくは後ほど解説します)

一例として、東京地方裁判所による自己破産の「同時廃止」の申立ての場合に、必要とされる書類の一覧をご紹介します。

  • 破産手続開始・免責許可申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 財産目録
  • 家計状況
  • 住民票(三か月以内に発行で、世帯全員のもの)
  • 戸籍謄本または抄本(三か月以内発行のもの)
  • 生活保護・年金・各種扶助などの受給証明書のコピー
  • 給料明細書のコピー
  • 源泉徴収票のコピー、または課税証明書
  • 退職金計算書
  • 通帳のコピー
  • 生命保険証書、生命保険の解約返戻金計算書のコピー
  • 車検証・登録事項証明書のコピー

※不動産がある人は

  • 不動産登記事項証明書(三か月以内発行のもの)
  • 不動産評価関係書類
  • ローン残高証明書
  • 不動産物件目録

※不動産がない人は

  • 無資産証明書

※賃貸を契約している人は

  • 賃貸契約書

※自営業(個人事業主、フリーランス、法人代表者など)の人は…

  • 事業に関する陳述書
  • 業務内容、営業状態、倒産に至る経緯、営業継続の有無
  • 資産・負債の概要、整理・清算の概況
  • 従業員の状況、解雇の有無
  • 法人に関する訴訟の有無、破産申し立て予定の有無
  • その他、税金の申告書控え(直近2期分)のコピー

裁判所の書式を守って作成する必要がある書類も

自己破産の必要書類は、住民票や戸籍謄本など、役所でもらってくる書類だけではありません。
裁判所の書式を守って、作成する書類もあります。

《自己破産の申し立てで、作成が必要な書類》

  • 破産手続開始・免責許可申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 財産目録
  • 家計状況
  • …など

これらの書類の書式についても、この記事の後半でご紹介します。

必要書類の入手方法

作成する書類のひな型は、各地の裁判所でもらうこともできます。
もらったひな型に必要事項を記入して作成します。
裁判所によって書式が微妙に異なるので、自己破産の申し立てを行う予定の裁判所で、ひな型をもらって来ると良いでしょう。

その他の関係書類は、それぞれの発行元から出してもらう必要があります。

自己破産の申立書や必要書類は、すべて自力で揃えられる?

必要書類の一覧を見て、「かなり多いな…」と思えますよね。
これらの書類は、すべて自力で揃えることはできるでしょうか?

一応、理屈の上では“可能”ということは出来るでしょう。
役所や裁判所、関係各所をまわって書類を取り揃え、申立書や陳述書などを記入すれば良いためです。

ただし現実的にできるか…と言われると、かなり難しいでしょう。
「書類を取りそろえるのが大変」というのもありますが、一番の理由は、“申立書や陳述書などの作成”が難しいためです。

たとえば、「陳述書」と「資産目録」は、それぞれ約10ページ程度、あわせて20ページ程度の量があります。その一枚一枚に記入事項があるのですが、これが簡単なものばかりではありません。

たとえば陳述書には、「債務の発生原因・増加の事情」といった内容も書く必要があります。

「どうして借金をしてしまい、なぜ返せなくなってしまったのか?」

…といったことを、詳しく記述する必要があります。
また、「今後の見通し,生活を改善すべき点,今までに反省すべき点など」という記入事項もあります。ここは文章で書く項目なので、作文力も必要になってくるでしょう。

ほかにもたくさんの記入・記述事項があり、どれも正確に記す必要があります。
実際に、この記事の最後で書式をご紹介しているので、一度目を通してみて下さい。

「どうやって書けばいいの?」
「こんなの、わからない…」

という項目が、一つや二つではないでしょう。
そもそも、量もかなり多いので、目を通すだけでも大変です。

★自分で書類を整えるのは現実的ではない

自己破産は、書類を整えて申し立てるだけでも大変です。

自分で行う場合、取り立てのストップもできません。
そのため、債権者から厳しい取り立て・督促を受けつつ、仕事や家事・育児など日々のことも行うなかで、役所や税務署などから様々な書類を取り寄せ、裁判所に提出する何十ページもの書類を作ることになります。

しかし、弁護士に依頼すれば、すぐに“受任通知”が債権者に発送され、取り立てが最短即日でストップします。
また、書類の作成もほとんど“おまかせ”でできます。

こうした理由もあり、債務整理や自己破産は、自分で何とかしようとするのではなく、弁護士や司法書士に相談することが大切です。

自己破産の管轄裁判所について

つづいて、自己破産の管轄裁判所について解説します。
管轄裁判所とは、「あなたの自己破産の申し立てを受け付けてくれる裁判所」です。

破産法第五条で決められている

さて、もしかすると今、あなたは、

「自己破産の管轄裁判所は○○裁判所ですよ」
「○○裁判所に申し立てれば良いですよ」

…という、白黒ハッキリした、シンプルな答えをお求めかもしれません。
しかし実際には、「自己破産の管轄裁判所はどこか?」という問題一つだけでも、非常に複雑な法律が関係しています。

そのことをお示しするために、破産法第五条の条文をご紹介します。
全て頭に入れなくて良いので、雰囲気を掴むために、ざっと眺めてみて下さい。

破産法 第5条
第1項 破産事件は,債務者が,営業者であるときはその主たる営業所の所在地,営業者で外国に主たる営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地,営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
第2項 前項の規定による管轄裁判所がないときは,破産事件は,債務者の財産の所在地(債権については,裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
第3項 前二項の規定にかかわらず,法人が株式会社の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き,会社法 (平成17年法律第86号)第879条第3項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。次項,第83条第2項第2号及び第3項並びに第161条第2項第2号イ及びロにおいて同じ。)の過半数を有する場合には,当該法人(以下この条及び第161条第2項第2号ロにおいて「親法人」という。)について破産事件,再生事件又は更生事件(以下この条において「破産事件等」という。)が係属しているときにおける当該株式会社(以下この条及び第161条第2項第2号ロにおいて「子株式会社」という。)についての破産手続開始の申立ては,親法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ,子株式会社について破産事件等が係属しているときにおける親法人についての破産手続開始の申立ては,子株式会社の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。
第4項 子株式会社又は親法人及び子株式会社が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には,当該他の株式会社を当該親法人の子株式会社とみなして,前項の規定を適用する。
第5項 第1項及び第2項の規定にかかわらず,株式会社が最終事業年度について会社法第444条の規定により当該株式会社及び他の法人に係る連結計算書類(同条第1項 に規定する連結計算書類をいう。)を作成し,かつ,当該株式会社の定時株主総会においてその内容が報告された場合には,当該株式会社について破産事件等が係属しているときにおける当該他の法人についての破産手続開始の申立ては,当該株式会社の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ,当該他の法人について破産事件等が係属しているときにおける当該株式会社についての破産手続開始の申立ては,当該他の法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。
第6項 第1項及び第2項の規定にかかわらず,法人について破産事件等が係属している場合における当該法人の代表者についての破産手続開始の申立ては,当該法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ,法人の代表者について破産事件又は再生事件が係属している場合における当該法人についての破産手続開始の申立ては,当該法人の代表者の破産事件又は再生事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
第7項 第1項及び第2項の規定にかかわらず,次の各号に掲げる者のうちいずれか一人について破産事件が係属しているときは,それぞれ当該各号に掲げる他の者についての破産手続開始の申立ては,当該破産事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
一 相互に連帯債務者の関係にある個人
ニ 相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人
三 夫婦
第8項 第1項及び第2項の規定にかかわらず,破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となるべき債権を有する債権者の数が500人以上であるときは,これらの規定による管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも,破産手続開始の申立てをすることができる。
第9項 第1項及び第2項の規定にかかわらず,前項に規定する債権者の数が千人以上であるときは,東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にも,破産手続開始の申立てをすることができる。
第10項 前各項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは,破産事件は,先に破産手続開始の申立てがあった地方裁判所が管轄する。

「こんなに決まりがあるの!?」…と、ちょっと驚いてしまいますよね。

このように、「自己破産の管轄裁判所はどこ?」という疑問の答えは、とても一言では解説できません。
そこで今回は、LSC総合法律事務所の解説[1]をもとに、いくつかポイントとなる部分のみを見ていきます。

自己破産の職分管轄を有する裁判所は地方裁判所

まず、裁判所といっても、いろいろな種類があるのをご存知でしょうか?

  • 簡易裁判所
  • 家庭裁判所
  • 地方裁判所
  • 高等裁判所
  • 最高裁判所

裁判所には、こうした種類があります。
このうち、あなたの自己破産の申し立てを受けてくれるのは、どの種類の裁判所か?という疑問がありますね。
これは、“自己破産の「職分管轄」の裁判所はどこ?”という風に言い換えることもできます。

自己破産の場合、職分管轄では“地方裁判所の管轄”となっています。
簡易裁判所や家庭裁判所ではなく、地方裁判所が扱うということですね。

自己破産の土地管轄について

さて、「地方裁判所」という職分管轄はわかりました。
しかし、地方裁判所はその名前の通り、全国各地にあります。

「わたしの自己破産の申立て」は、どの地域の地方裁判所に出せば良いのでしょうか?

この問題は、「わたしの自己破産の土地管轄を有する裁判所はどこ?」とも言えます。

先ほどの破産法第五条の複雑な決まりは、この「土地管轄はどこ?」に関する規定だと言っても良いでしょう。とても理解しきれないぐらい、大量のルールがありますね。

一応、原則論としては、「普通裁判籍を管轄する地方裁判所」と言えるようです。

個人の破産の場合には,事業者でない場合には,債務者の普通裁判籍を管轄する地方裁判所に土地管轄があるとされています。個人事業者の場合には,その主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄です。

個人の普通裁判籍は,上記民事訴訟法4条2項のとおり,その債務者の住所地を管轄する地方裁判所です。したがって,この住所地を管轄する地方裁判所に対して破産手続開始の申立てをすることになります。

出典:自己破産はどの裁判所に申し立てればよいのか? LSC総合法律事務所

「普通裁判籍」…また慣れない用語がでてきました。
これは「民事訴訟法第4条」という法律で定められています。
先ほどでてきた、「破産法第五条」という、あの長い長い条文とは別の法律です。

こちらも雰囲気を掴むために、条文をご紹介しましょう。

民事訴訟法 第4条
第1項 訴えは,被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
第2項 人の普通裁判籍は,住所により,日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により,日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
第3項 大使,公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは,その者の普通裁判籍は,最高裁判所規則で定める地にあるものとする。
第4項 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は,その主たる事務所又は営業所により,事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
第5項 外国の社団又は財団の普通裁判籍は,前項の規定にかかわらず,日本における主たる事務所又は営業所により,日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
第6項 国の普通裁判籍は,訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。

これもまた、少し長くて、読むのも大変な法律ですね。

このように、「自己破産の管轄裁判所はどこ?」という問題だけでも、とても複雑な決まりがあります。


原則として、一般個人が自己破産を申し立てる場合、

普通裁判籍を管轄する地方裁判所 = 住所地を管轄する地方裁判所

に申し立てれば良いとされていますが、あなたが例外に当てはまらないとは限りません。
“こういう場合は、ココ”という、例外規定がたくさんある法律ですから、“しろうと判断”は絶対にやめておきましょう。

参考:自己破産の必要書類の書式

新潟地方裁判所の書式[2]を元に、自己破産の申し立てに必要な一部書類の書式をご紹介します。
※地方裁判所ごとに書式が異なる場合があります。実際に自己破産の申し立てを行う場合は、かならず正式な書式にて行ってください。

★免責事項
当サイトの情報をもとに、ご自身で破産申立書などの書類を作成され、その結果、いかなる不利益が生じたとしても、当サイトは一切の責任を負えません。

当サイトとしては、決してご自身一人で対応することなく、弁護士や司法書士に相談のうえ、ご対応いただくよう、重ねて推奨いたします。

自己破産申立について(説明と書き方),申立に必要なもの【全5P】

PDF自己破産申立について(説明と書き方)申立に必要なもの30205001

全5ページ

破産手続開始及び免責申立書(同時廃止用)【全1P】

PDF破産手続開始及び免責申立書(同時廃止用)30205002

破産手続開始及び免責申立書(同時廃止用)添付資料チェックシート【全3P】

PDF破産手続開始及び免責申立書(同時廃止用)添付資料チェックシート30205007

全3ページ

陳述書【全10P】

PDF陳述書30205003

全10ページ

債権者一覧表【全1P】

PDF債権者一覧30205004

資産目録【全7P】

PDF資産目録30205005

全7ページ

家計状況【全1P】

PDF家計状況30205006
★書類を整えるのは大仕事…自分では困難です

自己破産の申し立てを行うには、上記のような書類を作成し、さらに必要書類を整えて、裁判所に申立てを行う必要があります。

これだけでも大変な大仕事ですが、これでようやく“手続きのスタートライン”です。
その後も裁判所での手続きがあり、早くても3ヵ月~半年ほどの期間がかかります。

こうした手続きを、すべて自分一人で行うのは、とても現実的ではありません。
そのため、自己破産を考えている場合、かならず債務整理に詳しい弁護士・司法書士に相談しましょう。

 

脚注、参考資料

-自己破産

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