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- 法テラスとは?借金返済トラブルの相談もできる?
- 法テラスに借金の悩みを相談するとどうなる?
- 法テラスの「無料法律相談」や「弁護士費用の立て替え」は誰でも利用できるわけではない?
この記事では、法テラスの「民事法律扶助制度」について、審査や条件などを解説していきます。
法テラスの民事法律扶助制度は、経済的に余裕のない方を対象に、法的トラブル解決を支援する仕組みです。
- 債務整理や自己破産
- 離婚調停
- 労働紛争
…など、さまざまな民事上の法律トラブルにおいて、「費用が払えない」といった人を助ける制度となっています。
今回は、「債務整理で弁護士費用や司法書士費用が払えない場合」に注目して、
- どんな支援を得られるのか
- 支援を受けるための審査や条件
- 申請や申し込みの方法
- メリット、デメリット
などを、幅広く解説していきます。
法テラスとは
まずは、法テラスについて簡単に説明していきます。
「法テラス」という名前は知っていても、実際にどんな所なのかは良く知らない…といった方も多いのではないでしょうか。
そこでまずは、法テラスとはどんな所なのか、何ができるのかを、簡単にご紹介していきます。
法テラスは、法的トラブル解決の「道案内」をしてくれる場所
法テラスは、正式には「日本司法支援センター」と言います。総合法律支援法[1]に基づいて設立されており、国の公的な機関と言って良いでしょう。
法テラス公式サイトの解説を見てみましょう。
「借金」「離婚」「相続」・・・さまざまな法的トラブルを抱えてしまったとき、「だれに相談すればいいの?」、「どんな解決方法があるの?」と、わからないことも多いはず。こうした問題解決への「道案内」をするのが私たち「法テラス」の役目です。
法的トラブルの“解決の道案内をする”というのが、法テラスの役割のようですね。
借金が返せないのも「法的トラブル」
「法的トラブル」というと、裁判を起こされたり、差し押さえを受けたり…といった事が想像できるかもしれません。
ですがそれ以外にも、借金、離婚、相続など、「法律に基づいて解決する必要がある問題」は、どれも法的トラブルと言って良いでしょう。
借金やローン、クレジットカードなどの返済滞納や、家賃滞納なども、実は「法的トラブル」の代表例。法律に基づき、“債務整理”という手続きを使って解決する必要があります。
よく、
「借金が返せないのは自己責任」
「お金を払えないのは、その人が悪い」
…なんてことも言われますが、実際には、「法律に基づいて、国の定めた仕組み=債務整理によって、返済の減額・免除で解決できる」のです。
そのために、破産法、民事調停法、特定調停法、民事再生法など、いくつもの法律が作られ、時代に合わせて改正されています。
こうした法律に基づき、債務整理の手続きで解決する必要があるため、借金問題など「払えない・返せない」は、法的トラブルの一つと言えます。
法テラスでは、すぐに解決はできない
ところで、先ほどの「法テラスの役割」ですが、少し気になる点がありますね。公式サイトの説明で、“問題解決の道案内をする”と書かれています。
これはおそらく、「法テラスだけでは、すぐに問題解決はできない」という事情があるためでしょう。
たとえば…
--相談者:「借金が返せなくて困っています。取り立てを止めて欲しいです」
--法テラス:「わかりました!では、すぐに取り立てを止めさせましょう!返済も債務整理で減額しましょう!私たちにお任せ下さい!」
…とはならないのです。
法テラスができるのは、法律専門家(弁護士・司法書士)に、困っている人を“つなげる”支援です。
そのため、法的トラブルを「解決する」ではなく、「解決の道案内をする」と、公式サイトでも解説されています。
法テラスに借金返済の悩みを電話するとどうなる?
それでは、実際に法テラスに電話すると、どんな流れになるのか、具体的に見てみましょう。
なお、後ほど詳しく説明しますが、法テラスの窓口での「無料法律相談」は、条件を満たす一部の人しか利用できません。誰でも審査なしで利用できるのは、電話・メール相談となります(※総合法律支援法第30条第二項各号)
法テラスに電話すると?まず解決方法を教えてもらえる
法テラスの資料や、総合法律支援法の規定、金融庁の「多重債務者相談の手引き」などの公的資料をもとに、相談した場合どうなるのか、会話をシミュレーションしてみます。(※あくまで架空のシミュレーションとなります。イメージを掴むためにご覧ください)
--相談者:すみません、借金のことで相談したいのですが…
--法テラス:ご事情を詳しくお伺いしてもよろしいですか?
--相談者:はい。実は借金が○○万円もあって、とても返せないんです。借りているところも、○○銀行と、消費者金融のA社と…あと○○クレジットカードのキャッシングとか、リボ払いとかもあって、もう、どこにいくら借金が残ってるのか…。
--法テラス:それは大変ですね。お話をお伺いする限り、債務整理をして頂いたほうが良いかもしれません。
債務整理という手続きを取ると、返済を減額したり、免除できる可能性があります。この手続きを検討してみましょう。
--相談者:そうなんですか!借金が減らせると、本当に助かります。どうすれば債務整理できますか?
--法テラス:弁護士・司法書士に債務整理を依頼することで可能です。
このように、まず「どんな解決方法があるのか」「どうすれば良いのか」といったことを、簡単に教えてもらえます。
借金返済の悩みの場合は、「債務整理」ですね。
債務整理については、当サイトでも詳しく解説しています。
法テラスの無料法律相談が利用できるか確認
さて、先ほどの会話(法テラスの電話相談)の続きをみていきましょう。
「債務整理で解決できる」
「弁護士や司法書士に依頼を」
…という所までは教えてもらえましたが、この相談者の方には、まだ心配があります。
「弁護士費用なんて、とても払えない」という不安です。
--法テラス:弁護士・司法書士に債務整理を依頼することで可能です。
--相談者:え、弁護士ですか…。ちょっとそれは…言いにくいんですが、今、本当にお金がなくて、弁護士費用なんて、とても払えないですよ…。
--法テラス:それでしたら、「民事法律扶助制度」がありますよ。条件を満たしていれば、「費用の立て替え」が利用できます。
まずは、「無料法律相談」が利用できるか、条件を確認してみましょう。現在の収入を教えてもらえますか?
--相談者:はい、月収はだいたい○○万円ぐらいで…(略)
--法テラス:それでしたら、「無料法律相談」が利用できるかもしれません。必要書類をお伝えするので、お持ちいただけますか?
--相談者:はい。
--法テラス:それでは、ご予約の日時をお伺いしますね。来週以降の平日で、ご都合のよろしい日はございますか?
--相談者:そうですね、来週ですと…(以下、省略)
この後の流れとしては、次のようになります。
- 予約した日時に、法テラスに行く
- 必要書類(援助申込書)を元に、「無料法律相談」を受けられるか審査
- 審査に通ったら、「無料法律相談」を受けられる
- 更に条件を満たしていれば「民事法律扶助制度」を利用し弁護士費用の立て替え払いを利用できる
- 解決後、法テラスに立替えてもらった費用を返済する(原則として3年で完済)
「法テラスに行けば弁護士費用が無料」は間違い!
「民事法律扶助制度」の詳しい内容や、審査条件については後ほど解説しますが、ひとまずここまでの内容を振り返ってみましょう。
- 法テラスでは、直接的な解決はすぐにできない
-
- 借金の取り立てストップや、返済減額・免除などは、法テラスが直接おこなってくれるわけではない
- 弁護士や司法書士への相談・依頼が必要。法テラスは、その「道案内」をする機関
- 無料の法律相談や、費用の立て替え払いを利用できるのは、条件を満たす人のみ
-
- 法律の規定により、法テラスの無料相談や費用立て替えは、条件を満たす人しか利用できない
- 手続き費用を立て替えてもらえたとしても、最終的には自分で払う必要がある
-
- 手続き費用が無料になるわけではない
- 解決後に、法テラスに対して分割払いする形
このような仕組みになっています。
そのため、「法テラスの無料法律相談は誰でも利用できる」「法テラスにいけばお金が掛からない」「法テラスなら弁護士費用が無料」というイメージは、正しいとは言えません。
法テラスの民事法律扶助制度の内容・審査と申請方法
ここからは、法テラスの「民事法律扶助制度」について、より具体的な内容を解説していきます。
民事法律扶助制度は、資力(収入や財産など)が一定以下の人を対象とした、法的トラブルの解決支援の制度です。
条件を満たしている人は、「費用の立て替え払い」といった支援を受けることができます。
法テラスの「民事法律扶助制度」の条件と内容
法テラスの「民事法律扶助制度」の大きな特徴は、「手続き費用などの立て替え払い」です。
こうした支援内容や利用条件は、総合法律支援法第30条第二項各号に詳しく定められています。少し長い条文になりますが、大切な法律なので、ご紹介したいと思います。
法テラスの民事法律扶助制度は、資力の無い人が対象
まず、法テラスの民事法律扶助制度は、「誰でも利用できるわけではない」という事を確認しましょう。
《総合法律支援法第30条 (業務の範囲) 第二項》
二 民事裁判等手続又は行政不服申立手続において自己の権利を実現するための準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない国民若しくは我が国に住所を有し適法に在留する者(以下「国民等」という。)又はその支払により生活に著しい支障を生ずる国民等を援助する次に掲げる業務
条文の内容を、すこし細かくわけて解説します。
民事裁判等手続において
「民事事件」での法的トラブル解決が対象となります。刑事事件(警察に逮捕された場合など)では利用できない、と解釈して良いでしょう。
必要な費用を支払う資力がない国民等、またはその支払いにより生活に著しい支障を生じる国民等
「裁判費用や手続き費用、弁護士費用などを払えない」
「払ってしまうと、生活ができなくなる」
といった事情を抱えている日本国民、または適法な在留者が対象となります。
ここでは年収などの基準が示されていませんが、実際には、より具体的に「月収○○万円以下」などの条件が定められています。
民事法律扶助制度の内容1「費用の立て替え払い」
続いて、民事法律扶助制度の支援内容です。
「費用の立て替え払い」について定めた条文を見てみましょう。
《総合法律支援法第30条 (業務の範囲) 第二項イ、ハ》
イ 民事裁判等手続の準備及び追行(民事裁判等手続に先立つ和解の交渉で特に必要と認められるものを含む。)のため代理人に支払うべき報酬及びその代理人が行う事務の処理に必要な実費の立替えをすること。
ハ 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)その他の法律により依頼を受けて裁判所に提出する書類を作成することを業とすることができる者に対し民事裁判等手続に必要な書類の作成を依頼して支払うべき報酬及びその作成に必要な実費の立替えをすること。
こちらも簡単にまとめれば、次のような費用を法テラスに立て替えてもらえる事になります。
- 民事裁判などの手続きのために、弁護士や司法書士に払う費用
- 裁判所に提出する書類の作成を、弁護士や司法書士に依頼するための費用
民事法律扶助制度の内容2「無料の法律相談」
民事法律扶助制度には、もう一つ「無料の法律相談」という支援もあります。
《総合法律支援法第30条 (業務の範囲) 第二項イ、ホ》
ホ 弁護士法その他の法律により法律相談を取り扱うことを業とすることができる者による法律相談(刑事に関するものを除く。)を実施すること。
ここで注意が必要なのは、「法テラスによる無料法律相談も、誰でも利用できるわけではない(資力が一定以下の人のみ)」という事です。
「資力が一定以下の国民等」を対象とする…と定めた、総合法律支援法第30条第二項の規定は、この条文にも掛かっているためです。
ですから、「法テラスに行けば無料で弁護士に法律相談できる」といったイメージもありますが、実際には“条件を満たした人のみが対象”ということに、注意しなければいけません。
法テラスの民事法律扶助制度の申請方法
それでは次に、法テラスの民事法律扶助制度の申請方法を解説します。
法テラスに電話相談する。その際、民事法律扶助制度を利用したいことを伝え、面談の予約をする
予約した日に法テラスに行き、「援助申込書」を記入して審査を受ける
審査に通れば、民事法律扶助制度が利用できる
援助申込書は、次のような書類になります。
なお、この書類は郵送・FAX等での提出はできません。
まず法テラスに電話し、事情を話したうえで、面談の予約をする必要があります。
法テラスの民事法律扶助制度の審査と条件
それでは、法テラスの民事法律扶助制度(無料相談・費用の立て替え)の審査について詳しく見ていきましょう。
具体的な審査の条件は、法テラスの公式サイトにて公表されています。内容をご紹介します。
無料法律相談を受けることができるのは、(1)(3)の条件を満たす方です。
弁護士・司法書士費用等の立替制度を利用することができるのは、(1)(2)(3)すべての条件を満たす方です。
いずれも我が国に住所を有しなかったり、適法な在留資格のない外国人や、法人・組合等の団体は対象者に含まれません。
(1) 収入等が一定額以下であること
以下の資力基準をご覧ください。
(2) 勝訴の見込みがないとは言えないこと
和解、調停、示談等により紛争解決の見込みがあるもの、自己破産の免責見込みのあるものは、(2)に含みます。
(3) 民事法律扶助の趣旨に適すること
報復的感情を満たすだけや宣伝のためといった場合、または権利濫用的な訴訟の場合などは援助できません。
これを見ると、法テラスの「無料の法律相談」と「費用の立て替え」では、審査基準が異なることがわかります。
法テラスで無料の法律相談が利用できる人の条件
- 収入等が一定額以下であること
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
法テラスで債務整理などの費用を立て替えてもらえる人の条件
- 収入等が一定額以下であること
- 勝訴の見込みがないとは言えないこと(和解、調停、示談等により紛争解決の見込みがあるもの、自己破産の免責見込みのあるものも含みます。)
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
条件①法テラスの民事法律扶助制度の月収条件
それでは、気になる審査の内容を見ていきましょう。
まずは、月収の条件です。
これは、「無料法律相談」「費用の立て替え」どちらの場合でも適用される条件となります。
人数 | 手取り月収額の基準 (注1) |
家賃又は住宅ローンを負担している場合に 加算できる限度額 (注1) |
1人 | 18万2,000円以下 (20万200円以下) |
4万1,000円以下 (5万3,000円以下) |
2人 | 25万1,000円以下 (27万6,100円以下) |
5万3,000円以下 (6万8,000円以下) |
3人 | 27万2,000円以下 (29万9,200円以下) |
6万6,000円以下 (8万5,000円以下) |
4人 | 29万9,000円以下 (32万8,900円以下) |
7万1,000円以下 (9万2,000円以下) |
注1:東京、大阪など生活保護一級地の場合、()内の基準を適用します。以下、同居家族が1名増加する毎に基準額に30,000円(33,000円)を加算します。
注2:申込者等が、家賃又は住宅ローンを負担している場合、基準表の額を限度に、負担額を基準に加算できます。居住地が東京都特別区の場合、()内の基準を適用します。
世帯人数に応じて、月々の収入が上記の表よりも多い場合、法テラスの民事法律扶助制度は利用できません。
月収の条件は、地域による物価の違いも考慮されているようです。生活保護の等級で1級地にあたる場合、すこし基準が違うようですね。
条件②パチンコ、FX、ガチャ課金による自己破産は、法テラスで支援してもらえない?
二つ目の条件は、勝訴の見込みがないとは言えないこと(和解、調停、示談等により紛争解決の見込みがあるもの、自己破産の免責見込みのあるものも含みます。)ということです。
この条件は、費用の立て替え払いを申し込む場合に適用されます。
債務整理の手続きには「任意整理」「個人再生」「自己破産」「特定調停」といった種類があります。
この中で自己破産の場合、他の手続きと違って、「免責不許可事由」という法律の決まりがあります(破産法第252条)。
この「免責不許可事由」とは、ギャンブルや浪費、株やFXといった投資などが理由の借金は、免責(返済免除)が認められない…といった決まりです。
この点を考えると、一般的に免責不許可事由とされる
- パチンコ、パチスロ
- 競馬、競輪、競艇
- ガチャ課金
- FX、株などの損失
- 買い物のし過ぎ
などによる浪費が原因で自己破産をする場合、「免責不許可事由にあたるため、法テラスによる費用の立て替えが認められない」となる可能性がありそうです。
条件③民事法律扶助の趣旨に適すること
最後の条件は、「民事法律扶助制度の趣旨に適すること」となっています。「無料の法律相談」「費用の立て替え」どちらの場合にも、この条件を満たす必要があります。
「民事法律扶助制度の趣旨に適すること」というのは、やや理念的な条件とも言える基準です。
具体的にまとめると、次のような理由や目的で行う場合、民事法律扶助制度の利用が認められない事になります。
- 感情的な報復
- 宣伝
- 権利の濫用
…など
たとえば債務整理の場合、「お金に困ってはいないけれど、返済を減らして得をしたい」とか、「業者が気に入らないから困らせてやりたい」といった理由では認められないと考えて良いでしょう。
ちなみに、総合法律支援法による「民事法律扶助制度」の理念規定は、第2条および第4条に記されています。
《総合法律支援法第2条 (基本理念)》
第二条 総合法律支援の実施及び体制の整備は、次条から第七条までの規定に定めるところにより、民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを目指して行われるものとする。
《総合法律支援法第4条 (民事法律扶助事業の整備発展)》
第四条 総合法律支援の実施及び体制の整備に当たっては、資力の乏しい者にも民事裁判等手続(裁判所における民事事件、家事事件又は行政事件に関する手続をいう。以下同じ。)の利用をより容易にする民事法律扶助事業が公共性の高いものであることにかんがみ、その適切な整備及び発展が図られなければならない。
わかりやすく言い換えれば、「お金があっても無くても、だれもが公平・平等に、法律で決められた権利を使える社会を実現するため」といったような意義です。
日本国憲法第14条前段に定められた「法の下の平等」の精神を実現するためと考えられます。
《日本国憲法 第十四条 (法の下の平等)》
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
こうした「法の下の平等」を実現するために、法テラスの民事法律扶助制度も整えられていると考えれます。
そのため、正当な権利行使とは言い難い濫用は、法テラスによる支援が認められない事となります。