債権回収会社が振込超過を見過ごすなど“不適切”な会計処理で行政処分へ

投稿日:2016年12月15日 更新日:

他社から債権を買い取って回収したり、委託を受けて回収・督促業務を行う『債権回収会社』。

“取り立ての専門企業”とも呼べますが、だからこそ、不法・不当な行為がないよう、法務省が監督を行っています。

そんな債権回収会社の一つ、『株式会社ジャスティス債権回収』に、平成28年12月13日、“業務改善命令”が発出されました。[1]

ジャスティス債権回収についてはこちらの記事でも詳しく解説しています

 

法務省:債権回収会社に対する行政処分について(ジャスティス債権回収2016-12-13)

業務改善命令は、“違法ではないが不適切”とも言えそうな事柄に対して行われるもの。
一体、どんな問題があったのでしょうか?

法務省の立入検査で発覚した問題点

今回の業務改善命令は、『法務省の立ち入り検査により、不備・過誤事例が認められた』とのこと。

法務省による、ジャスティス債権回収への定期的な立ち入り検査によって発覚したものと思われます。

立入検査において認められた不備・過誤事例(ジャスティス債権回収)
同省の資料[2]によると、

過去3回の立入検査における指摘事項を踏まえ,改善報告書を提出していたにもかかわらず,下記(1)のとおり,自ら講ずることとした改善策が完全には履行されておらず,債権管理回収業の適正な遂行を確保するために必要な法令遵守意識が欠如した
まま業務を行っていることが認められたほか,(2)のとおり,新たな不備・過誤が確認された。

出典:立入検査において認められた不備・過誤事例

とのこと。

1:過去に発覚しており、改善報告までされていたものの、実際は改善されていなかった問題点

2:今回の立入検査で、新たに発覚した問題点

以上の2種類があったことがわかります。

過去に発覚していたものは、

取締役弁護士会の機能不全
社内規則の見直しが実施されていない

等を含めた2点。


そして、今回新たに発覚した問題点は、

内部監査を実施していない期間がある

債務免除などを行う際、相手が反社会的勢力にあたらないか確認していないものがある

法律(サービサー特措法)の内容を、誤認しているものがある

弁済金の充当処理を適切に行わず、振込超過になっているもの等が見落とされているケースがある

委託者のために収受した弁済金を、自己の財産と明確に区分せず、保管しているものがある

…などを含む7点が指摘されています。

この記事では、特に次の2点に注目してみました。

弁済金の充当処理
委託者のために収受した弁済金と、自己の財産の区分

弁済金の充当処理とは?一般人の私達も知っておきたいポイント

『弁済金の充当処理を適切に行わず、振込超過になっているもの等が見落とされているケースがある』

この指摘事項について、まずは詳しく見ていきましょう。
といっても、『弁済金の充当方法』と言われても、あまりピンと来ませんよね。

これは、『借金などの返済金を、何の費用として扱うか』という、会計上の問題になります。
(※ここでは借金を例に解説します。)

返済を受ける側(債権者)から見れば、借金には『費用・利息・元金』と、3つの内訳があります。

借金の内訳
返済する側(債務者)の感覚では、「借金が○○万円ある」とか、「あと○○万円の借金が残っている」といった感覚になりますよね。

ところが、この区別が、今回のジャスティス債権回収の事例では、問題に関わってきます。
“弁済金の充当処理が不適切”というのが、問題になっているからです。


たとえば、分割払いなどで“借金の一部”が返済されたとしましょう。
この時に返済されたお金は、『費用・利息・元金』のどれに充てるべきでしょうか?

これは実は、法律で基本のルールが決まっています。『民法第491条1項』により、費用⇒利息⇒元金の順番に充当すると決められています。[3]

費用・利息・元金の間の充当方法(民法第四九一条一項)

(※カードローン等では、契約により、これとは違った返済方式になっている場合も多くなります。)

この『弁済金の充当処理』が違ってしまうと、利息や元金の減り方が違ってきてしまいます。
その結果として、“振込超過”(払い過ぎ)などの問題が起きている…というのが、今回の問題の一つなんですね。

委託者のために収受した弁済金と、自己の財産の区分

続いての問題にうつりましょう。

『委託者のために収受した弁済金を、自己の財産と明確に区分せず、保管しているものがある』

この問題を考えるためには、『債権回収会社の仕事』について、少しだけ基礎知識が必要です。

まず、下の図をご覧ください。

債権回収会社が入らない場合

債権回収会社が間に入らない場合のケースです。
債権者(ここでは銀行)と債務者との、直接のやり取りなので、シンプルですね。

次の図にいきましょう。
債権…つまり『弁済金を受け取る権利』を、債権回収会社が買い取っているケースです。

債権が債権回収会社に移動したケース

この場合、債務者からの返済金は、“債権回収会社のもの(売上)”になります。

そしてもう一つ。
今度は、債権回収会社が、“督促業務の委託を受けている”ケースです。

債権回収会社が業務の委託を受けたケース

先程とよく似ていますが、図の右側に注目して下さい。『債権者』は、銀行のままになっています。
債務者が返済した弁済金は、債権回収会社を“通して”、最終的に、債権者に渡っています。

この場合、債権回収会社が受け取った弁済金は、『自分のもの』ではありません。あくまで『債権者(ここでは銀行)のもの』であり、“間に入った債権回収会社のものではない”んですね。

 

このように、債権回収会社には、『受け取った弁済金が、自社のものになる場合』と、『自社のものにならない場合』の、2つのケースがあります。

私たちの感覚で言えば、『自分で稼いだお金』と、『誰かから預かったお金』の違いに似ていますね。

この2つのお金は、きちんと区別しておかなければ、混乱してしまいます。トラブルの原因にもなりそうですよね。

ところが、今回の業務改善命令を受けたジャスティス債権回収では、その区別がきちんと行われていないケースがあった…とのこと。

そのため、『これはきちんと区別して管理しなさい』と、法務省から改善命令が下されたんですね。


こうした問題は、いわば『手続き上の間違い』とも呼べそうなもの。
“改善が必要”ではありますが、かといって“違法行為”という事でもありません。
そうした判断から、“業務改善命令”という形になったのかなと思います。

 

過去にも問題視された事もあるが…

さて、今回話題とした『ジャスティス債権回収』ですが、調べてみたところ、過去にも問題が指摘されていました。

2009年と、かなり古いニュースですが、『アクセスジャーナル』誌の記事より、一部抜粋してご紹介します。

 そもそも、被害者M氏が借りた金額は160万円余りだった。それが最後の支払いから実に5年半余りも経た08年8月、SFCGから債権を譲り受けたとしてジャスティス債権回収は、簡易裁判所を通じて請求して来た。その額は長年の利息により借りた額を大きく上回る約236万円(残り元金は約139万円)だった。
 この残り元金約139万円がくせ者で、訴訟価格(元金)が140万円以下だと簡易裁判所で、弁護士費用をかけることなく社員でも代理人となれ、費用は7050円で済む。
 どうやら、SFCGお得意の裁判制度を“悪用”しての合法的? 取立をやったわけだ。

出典:SFCG系「ジャスティス債権回収」の詐欺的取立(追加情報) 2009/01/05 山岡俊介記者 執筆

この山岡記者の記事では、ジャスティス債権回収の督促方法(取り立て)を『詐欺的』と、記事表題にて表現していますが…。

記事の内容を良く読めば、?マークつきではありますが、『合法的』とも書いてありますね。

株式会社SFCGからM氏が借り入れた借金を、ジャスティス債権回収が譲り受け、簡易訴訟で裁判を起こした…とのこと。

元金139万円、利息含め合計236万円での請求だったようですが、この『元金139万円』というのが、“簡易訴訟にするために、わざわざ金額を変えたのでは?”という疑問のようです。
こうすることで、『弁護士費用をかけることなく、裁判費用も7050円で済む』とのこと。

いろいろ意見はあるかと思いますが、私としては、このようにして裁判を起こすのは、詐欺でも詐欺的でもなく、“合法で、まったく通常”な督促だと思います。

そもそも、督促を行うのも、その法的な権利を主張するのも、債権者であるジャスティス債権回収に認められた正常な権利だからです。

もしもこれが、M氏が『時効援用』の手続きをしていた場合は、話が違ってきますが…。

記事によると、『最終返済から5年以上経っている』との事なので、おそらく“商事債権の時効5年”の期間は過ぎていると思います。
ですが、借金の消滅時効は、ただ時間が経てば勝手に成立するものではありません。

“時効の中断”となる、債務承認や裁判上の督促などが発生しない
時効期間が過ぎた後、『消滅時効援用』を行う

この2つの条件をクリアしていなければ、最終返済から5年以上が経っても、時効はまだ成立していません。
そのため、時効の中断・援用阻止を狙って、ジャスティス債権回収が簡易裁判を起こしたものだと考えられますが、これは『まったくの合法』と言えるわけです。

厳しい考え方かもしれませんが、このケースでは『時効期間を過ぎたのに、消滅時効援用の手続きを行わなかったM氏の失敗』ではないかと思います。


このように、同じ債権回収会社に対する批判・問題視の意見や情報でも、『まったく合法』の内容もある…という事ですね。

個人的には、ついつい何かと問題に思ってしまいがちですが、“批判のための批判”にならず、是々非々で見ていくよう、気をつけたいと思いました。

 

また、時効期間が過ぎた後でも、『消滅時効の援用』をしていなければ、債権回収会社により“裁判上の督促”を起こされ、時効の成立を阻止されてしまう事が実際にあることも、明らかになったと思います。


借金の消滅時効の援用を迷っているうちに、債権回収会社に裁判を起こされてしまう危険もあるため、『早め早めの対応』が本当に大切です。

もしも『時効では?』と思う借金やローンがあったら、迷わず早めに、弁護士や司法書士などの専門家に相談したいですね。

借金の消滅時効の援用を相談できる弁護士・司法書士をまとめました

 


---脚注--
[1]債権回収会社に対する行政処分について 法務省
[2]立入検査において認められた不備・過誤事例
[3]民法第491条

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