任意整理後に放置で時効援用…「時効待ち」「塩漬け」「喪明け」の意味とは?

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この記事では、「任意整理後の時効援用」について解説します。
業界用語で、「時効待ち」「塩漬け」といった呼び方をされる事もある方法です。
また、よく似たものに「喪明け」もあります。こちらは少し意味が違うのですが、この記事で合わせて解説していきます。

「一体、何の話なのかさっぱりわからない…」

という方も多いでしょう。
一つ一つ順番に説明していくので、安心してお読み頂ければと思います。

任意整理の交渉がうまくいかなかった場合、「時効待ち」(塩漬け)という方法がある

「借金やローン、クレジットカード等が、どうしても払えない・返せない」となった時、返済を減額できる“任意整理”という手続きがあります。

サラ金や銀行カードローン、クレジットカードのほか、家賃保証会社や債権回収会社から督促を受けている場合や、奨学金の返還に困っている場合も使える手続きです。

さて、この任意整理の効果ですが、まず弁護士や司法書士が、債権者と交渉を行います。そして、

将来利息(今後の利息)のカット
遅延損害金の免除
残った借金の長期分割返済

…といった話をまとめて、返済を減額する事になります。

この手続きのポイントは、あくまで「交渉による」減額という事です。法律で定められた減額ではないので、どうなるかは、交渉次第というわけです。

そのため、債権者が

「絶対に減額に応じない」
「遅延損害金も利息もカットしない」

と、強い姿勢に出てくることもあります。そうした場合にも、任意整理や債務整理に強い弁護士・司法書士なら、いくつも対処方法を持っています。

そんな対処方法の中でも、ある意味で“最終手段”と呼べるものが、この「塩漬け(時効待ち)」です。

「時効待ち(塩漬け)」は、受任通知による督促ストップ+債務の消滅時効の援用の合わせ技

かんたんにまとめれば、

“債権者が任意整理に応じなかった場合、返済をそのままストップし、債務の消滅時効の援用(時効援用)によって返済義務を消滅させる”

…という戦略です。
具体的に、順を追って解説していきます。

(1)任意整理をはじめると、取り立てがストップする

まず、任意整理を弁護士や司法書士に任意整理を依頼すると、「受任通知」によって、取り立てがストップします。この取り立てストップの部分は、相手が消費者金融か債権回収会社の場合、法律に基づいた効果となります。

相手が消費者金融の場合 貸金業法第21条1項
相手が債権回収会社の場合 債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー特措法)第18条8項

これによって、“任意整理の結果がどうなるかに関わらず、取り立てがまず最初に止まる”わけです。

(2)任意整理の交渉スタート⇒交渉決裂

取り立てがストップされてから、任意整理の交渉がはじまります。
通常の場合、ここで利息の引き直し計算や将来利息のカット、返済の減額などの話がまとまり、減額後の返済を続けることになります。
しかし、相手があまりに強固な姿勢で、「減額も利息カットも、何もかも認めない!」となると、交渉が決裂してしまいます。

こうなった場合、任意整理の話し合いを「終わらせずに」、そのまま放置しておくと、少し不思議なことが発生します。

(3)民法第7章 時効(第144条~第174条の2)に基づく「消滅時効」が援用できるようになる

さて、任意整理の話し合いがうまく行かず、“話し合いを終わらせずに”、そのまま何年も放置しておくとしましょう。

手続き上は、任意整理が継続中ですから、相手は法律に基づき、取り立てを行えません。簡単に言えば、債権者は、「手も足も出せない」状態になってしまうのです。

そして、この状態で5年以上が経過すると、その債権が“時効”に掛かります。
すると、民法第7章 時効(第144条~第174条の2)に基づき、「消滅時効の援用」が行えるようになります。
これを行うことで、返済義務が消滅し、1円も返済しなくて良くなるのです。


ざっくりまとめれば、
“任意整理を開始して、話し合いをまとめずに5年間放置すると、時効で返済をゼロ円にできるようになる”

ということです。
これが、「任意整理の時効待ち(塩漬け)」という戦略です。

★任意整理の「喪明け」との違い

ネット上には、時効待ち(塩漬け)と、「喪明け」を、間違えてしまっているサイトも見受けられます。
時効待ち(塩漬け)は、先ほど解説した通りです。

一方、「喪明け」は、任意整理や債務整理後に、一定期間が経って、個人信用情報機関の記録が抹消される(ブラックリストが解除される)ことを、たとえ話として言うものです。
本来の「喪明け」という言葉は、家族など近しい人が亡くなった際に、「喪中」という期間に入る風習がありますが、その期間が終わることを差します。こうした風習に、ブラックリスト解除までの期間を例えて、「喪明け」と呼んでいるのですね。

今回の“時効待ち(塩漬け)”は、ブラックリストに関する話ではなく、借金減額・免除の交渉のテクニックですから、意味合いがまったく違います。

任意整理の時効待ち(塩漬け)は、リスクも大きい

任意整理は、普通に話し合いがまとまれば、“減額はされるが、返済ゼロにはならない”手続きです。
一方、任意整理で「時効待ち(塩漬け)」が成功すれば、消滅時効の援用によって、“一円も返さなくて良くなる”事になります。

つまり私たち債務者としては、一見すると、「任意整理をするより、任意整理の時効待ちを狙ったほうが良いのでは」と思えますよね。

しかし実際には、これはそう簡単な話ではありません。
時効待ちには、訴訟リスクが伴うからです。

任意整理の時効待ち(塩漬け)は、訴訟リスクがある

先ほど、受任通知の発送で、「債権者は手も足も出ない状態になる」と書きました。ですがこれは、正確に言えば、通常の郵便物や電話、自宅訪問などによる督促ができない…という意味になります。
裁判や支払督促など、法的措置による債権回収は、受任通知では封じられません。

そのため、こちらが「時効待ち」の戦略を取ると、相手は「裁判所に訴える以外に、回収する手段がない」という状態に追い詰められてしまいます。

「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」という言葉もあります。
ネコに追い詰められたネズミが決死の反撃をするのと同様に、追い詰められた債権者も、「時効で1円も回収できなくなるより、訴訟を起こして、少しでも回収しよう」となってしまうわけです。

時効待ちのリスクについて、最高裁の判例も

こうした時効待ちのリスクについては、最高裁判所でも争われた例があります。

最高裁判所平成25年4月16日第三小法廷判決

この判例が出るまでは、時効待ちは「債務整理の基本戦略の一つ」とされていました。一般向けのマニュアル本などでも、記載されていたようです。

ところが、この判例[最判平25.4.16]によって、「時効待ちは、リスクが高すぎる」という事が明らかになりました。
その結果、「時効待ちの戦略は取らない」「時効間近の場合、任意整理の依頼は断る」といった弁護士や司法書士も出始めています。

★任意整理の依頼を断られたら、時効援用に強い弁護士・司法書士に相談を

「任意整理で、時効待ちを最初から狙う」ことは、最高裁判所の判断を見ても、やはり危険性が高いと言えるでしょう。
あまりにリスクが高すぎるため、「時効間近の借金は、任意整理の依頼を断られてしまう」場合もあるとわかりました。

こうした理由で任意整理の依頼を断られた場合、消滅時効の援用に強い弁護士・司法書士に相談を行ってみましょう。任意整理の時効待ちでなく、最初から「時効援用をストレートに行う」のであれば、ここまでのリスクはありません。

もっとも、時効の援用も訴訟リスクはゼロではないので、本当に時効援用に強く、経験や解決実績が豊富な弁護士・司法書士・行政書士を選ぶことが大切です。

消滅時効の援用に強い弁護士・司法書士

 


参考:
貸金業法第21条1項(取立て行為の規制)
債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー特措法)第18条8項
最高裁判所平成25年4月16日第三小法廷判決
民法第7章 時効(第144条~第174条の2)

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