自己破産できる条件・できない条件は?免責不許可事由と裁量免責、非免責債権

投稿日:2018年8月28日 更新日:

この記事では、債務整理の一種類である「自己破産」について、「できる条件・できない条件は何?」といった疑問に、詳しくお答えしてきます。

自己破産は、原則として“すべての返済を免除(免責)”する、強力な手続きです。この手続きを取ることで、どれだけ多額の借金を抱えていても、ゼロ円にすることができます。

この自己破産が、どんな場合に認められるのか、裁判所の債務整理「手続対比一覧」などを元に、条件面を詳しく見ていきましょう。

「ギャンブルや浪費、投資の借金でも自己破産できる?」といった疑問にもお答えしていきます。

自己破産の条件は“支払不能のとき”

まず、自己破産が認められるためには、「支払不能である」という事実が必要になります。
返済を滞納し、次のような書類などを受け取っている場合は、ひとまず当てはまると考えて良いでしょう。

  • 督促状
  • 催告書
  • 期限の利益喪失通知
  • 法的手続き執行予告
  • 代位弁済通知
  • 債権譲渡譲受通知
  • 最終通告書
  • …など

また、滞納が無い場合でも、何らかの事情により「返済を続けるのが不可能」と判断できる状態であれば、“支払不能”として自己破産が認められる可能性がありそうです。

年齢、職業、年収などの条件は特になし

自己破産の場合、年齢・職業・年収などの条件は特にありません。
専業主婦や無職など無収入の方、年金受給者などでも利用できます。

自己破産は、生活保護受給中でも可能

基本的に、生活保護は借金があると受給できない制度ですが、何らかの事情や、ケースワーカーの判断などにより、借金がある状態で一時的に生活保護を受けている…といった場合もあるかもしれません。
そうした生活保護受給中の借金解決の方法としても、自己破産は用いることができます。

泉総合法律事務所の解説をご紹介します。

「生活保護を受給していると自己破産ができない」
「自己破産をすると生活保護が受給できない」
と思っている方もいらっしゃいますが、自己破産と生活保護は全く関係のない制度です。
したがって、生活保護受給中であっても自己破産はできますし、自己破産後に生活保護を受給することも可能です。むしろ、生活保護受給中の方の借金問題の解決方法の原則は、自己破産と言えます。

出典:生活保護でも自己破産できるか-泉総合法律事務所

自己破産後に生活保護を受けることもできる
むしろ、生活保護受給中の借金解決の原則は自己破産

といったことが、弁護士により解説されています。

財産がない場合は「同時廃止」、財産がある場合は「管財事件」

さて、原則として“支払不能”というのが自己破産の条件ではありますが、財産の有無によって、自己破産の手続きは種類が変わってきます。

財産がある場合は、「管財事件」

たとえば、住宅ローンの返済に困っているが、持ち家という資産はある…といった場合が当てはまります。こうした場合、自己破産を行うと「管財事件」という種類になります。一定以上の財産が“破産財団”に組み込まれ、破産管財人によって管理・処分されますが、すべての返済が免除される手続きです。

《内部リンク予定:自己破産の管財事件の概要と手続きの流れ》

財産がない場合は、「同時廃止」

一定以下の財産しかない場合は、自己破産でも「同時廃止」という種類になります。これは簡単に言えば、“財産の清算が行われず、債務の免責(返済の帳消し)だけが行われる”手続きです。

《内部リンク予定:自己破産の同時廃止の概要と手続きの流れ》

自己破産できない借金とは?非免責債権と免責不許可事由

さて、借金の中には「自己破産できないものがある」という話を、ご存知の方も多いかと思います。

大きく区別すると、

「非免責債権」(破産法第253条)にあたるもの
「免責不許可事由」(破産法第252条)にあたるもの

この2種類が、“返済免除できない”となるのが原則です。ただし「免責不許可事由」の場合、実際には返済免除が認められる事も多々あります。この話は少し複雑なので後ほど触れていきます。

まずはもう少しわかりやすい、「非免責債権」について見ていきましょう。

非免責債権=例外なく“免除されない返済や支払”

非免責債権も、詳しく見ていくと複雑な制度ではあります。ただし結果としては、「例外なく、免除されない返済や支払」と理解して、おおきな支障は生じないでしょう。
破産法第253条に定められており、具体的には、次のようなものが当てはまります。

税金・保険料など(公租公課)や罰金
年金の掛け金や、国民健康保険料なども含まれます。

一部の損害賠償
悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、故意または重大過失による不法行為に基づく損害賠償請求権です。

夫婦間の扶養、婚姻生活、扶養義務に関する債務
民法に定められた、養育費や夫婦生活・家族生活に必要な支払です。

事業主などの場合、従業員への給与や賃金
事業主や経営者の場合、雇用関係にある従業員への給与・賃金の支払いは、自己破産しても免除されません。

破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
自己破産は、原則として全ての債権者を平等に扱う義務があります。特定の債権者にだけ優先的に返済したり(偏頗返済)、その存在を隠したりすると、免責が認められない事になります。

ギャンブル・浪費・投資の場合どうなる?免責不許可事由と裁量免責

  • パチンコ、パチスロ、競馬、競輪、競艇などのギャンブル
  • 株やFXなどの投資
  • スマホゲームのガチャやアプリ課金
  • その他の浪費

こうしたものが原因だと、自己破産が認められない…という話について、「本当はどうなの?」と気になって、この記事をご覧になっている方も多いでしょう。

結論から言えば、「原則としては破産が認められないが、実際には破産が認められ、返済が免除される事が多い」となります。

自己破産の免責不許可事由

ギャンブルや投資、浪費の借金が“破産できない”とされるのは、これらが「免責不許可事由」として、法律で規定されているためです。(破産法第252条)

四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。

出典:破産法

この条文を元に、自己破産を扱う各地の地方裁判所で、より具体的な基準が定められています。

実際には“裁量免責”で返済免除になることが多い

ところが実際には、ギャンブルや投資、浪費などが原因の借金でも、返済が免除される事が多数となっています。

債務整理に詳しい松谷健一郎司法書士によれば、「免責不許可決定の割合は、0.1%程度」とのことです。(大阪地裁、平成21~平成23年)

つまり、実際に自己破産した人のうち、「ギャンブルや浪費・投資が原因で、免責不許可事由だから」という理由で返済免除されなかったのは、1000人に1人という事ですね。

それでは、残りの999人は、なぜ法律で“免除されない”と決められているギャンブルや投資、浪費の借金でも、免除されたのでしょうか?

その理由が、「裁判官の裁量免責」という仕組みです(破産法第252条2項)

二 前項の規定にかかわらず,同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても,裁判所は,破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは,免責許可の決定をすることができる。

出典:破産法

つまり、たとえギャンブルや浪費、投資など“免責不許可事由”に当てはまる借金でも、「返せなくなった事情」を裁判官が考慮して、返済の免除(免責)を認めることができる…と、これも同じく法律で決まっているわけです。

★もう二度と借金で苦労しないように、裁判所がトレーニングを行ってくれることも

裁量免責により返済の免除を認める場合、“もう二度と借金で苦労しないように”と、指導を行う方針の裁判所もあるようです。
たとえば大阪地方裁判所の運用では、

家計簿の付け方をトレーニングする
反省文の提出を行わせる
破産管財人が家計状況を指導監督する(免責観察型の管財手続き)

といった取り組みが行われています。
借金を全額免除してもらえるだけでなく、お金の管理について、専門家にしっかりと教えてもらえるのですから、まさに“至れり尽くせり”といった所でしょう。

二度と借金に苦しまなくて良くなるように、そして借金をせずとも暮らせるように、弁護士・司法書士や裁判官が“人生のやり直し”を本当に支えてくれる事がわかります。

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破産法の免責不許可事由の詳細

ここからはもう少し踏み込んで、「自己破産できない債務」とされる「免責不許可事由」と「非免責債権」について見ていきましょう。

まずは「免責不許可事由」について定めた、破産法第252条1項の条文をご紹介します。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。

一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。

出典:破産法

全部で11もの「免責不許可事由」が挙げられています。
有名な「ギャンブルや投資、浪費などの借金」に当たるのは、このうち第4号となりますが、この他にもたくさんの免責不許可事由があることがわかります。

とはいえ、1号~3号、および5号~9号と、ほとんどの内容は、何らかの不正を理由としたものです。

  • 財産隠しや、意図的に財産を損壊するなどの行為
  • 破産手続き(財産の処分)を妨害する行為
  • 特定の債権者に対してのみ、不当に返済などをすること(偏頗返済)
  • 破産しそうなのに、ウソをついて財産を手に入れる
  • 破産手続の必要書類にウソを書く
  • 裁判所に対してウソをついたり、隠しごとをする
  • 裁判所や破産管財人の仕事を不正に妨害する

…などの行為を行っても、免責不許可事由となります。

逆に言えば、しっかりとした弁護士や司法書士に依頼し、誠実に自己破産の手続きを行えば、免責不許可事由は心配しなくて良いとも言えるでしょう。

破産法の非免責債権の詳細

続いて、もう一つの「自己破産できない債務」である、「非免責債権」についてもチェックしましょう。
これについて定めた、破産法第253条1項の条文を見てみます。

(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権

出典:破産法

具体的には、先ほどこの記事の「非免責債権=例外なく“免除されない返済や支払”」の項目でご紹介した通りとなります。ただ、民法の各条文を参照する第四項もあるため、より詳しく内容を知る場合は、弁護士や司法書士に相談したほうが良いでしょう。

個人再生の「非減免債権」との違い

自己破産の「非免責債権」と似たものに、個人再生の「非減免債権」があります。内容的には似ている部分もありますが、この二つは論拠となる法理が異なります。

さらに言えば、個人再生の場合「対象にできない債務」という捉え方をすれば、非減免債権のほかに共益債権(民事再生法第119条)、一般優先債権(民事再生法第122条1項)もあります。

また、たとえば公租公課に関しては、自己破産では非免責債権として免責が認められませんが、個人再生では非減免債権ではなく、一般優先債権として減免が認められない仕組みになっています。

このように、債務整理には手続きごとに違ったルールがあり、その根拠となる法律にも違いがあります。結論として「債務整理できるかどうか」という部分に大きな違いが無いように見えても、実際には大きく異なるわけです。

こうした複雑さがあるため、表面的な理解だけでは、債務整理の実務を担うことは困難でしょう。債務整理に関する豊富な実績と経験を持った、優秀な弁護士・司法書士でなければ、手続きを適切に行うのは困難だと考えられます。

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